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カカの天下  作者: ルシカ
542/917

カカの天下542「大勢で飲むときは瓶で」

 よう、姉ことカツコだ。元気してっか?


 ちょっと用事を済ました帰り道。ふと気づくと、いつの間にか桜のお嬢ちゃんが隣を歩いていました。


「ん、どしたの」


「いいんですか、あのお人形」


 お、気になって見てたのかな。用事というのはそれ、夏祭りで暴走してくれた人形を父に預けてきたとこだったのだ。もちろん封印をお願いして。


「あのお人形、今じゃすっかり良い人になっちゃったんですよね」


「人じゃないけどね。まぁ幸運を呼び込む力があるよ。あれを連れてただけで……行った店は空いてるし、買おうとしたものはバーゲンセール、スーパー行けば特売の嵐だし」


「所帯じみてます」


「ほっとけ。で……あのままいけば大金が転がりこんで、理想の旦那さまも一瞬で見つかってただろうね」


「そ、そんな人形を封印してよかったんですか!?」


「いいんだよ、だって――」


「人形の力でも借りないと、あなたのような怪獣に旦那さまなんて見つかりませんよ!?」


「……いー度胸してんなー嬢ちゃん」


 別に怒んないけどね。ええ、自覚はしてるし。でも怪獣て……もちっと言い方あるでしょうに――そこのバケモノとか思ったやつ表出ろ。もしかしたら何か上から降ってくるかもしれんよ?


「あのお人形、近くにあるだけでも周りの人に幸運をもたらすものだと思うのですが……」


「いいのいいの、あんなの無いほうが。いいことはありすぎないほうがいい。悪いことがあるからいいことの喜びを知って、もっとがんばることができるんだから」


 嫌なことがあったり怒られたり、挫折したり。


 それがないと人間は成長できない。そういう風にできている。


「まずいものを食べた後にうまいものを食べたらすごく美味しいのと同じ理屈ですね!」


「んー……うん、多分。ちなみにお嬢ちゃん的にはそれって例えばどんなの?」


「コーヒーのあとにチョコを食べると美味しいです!」


 ふむふむ、桜の精はコーヒーが苦手、と。


「コーヒーチョコ食べてみる?」


 たまたま持ってた。


「なんですかそれは!? い、いただいてもいいですか!?」


「どぞ」


 ぱくり。


「うまずいです!!」


「うまいのまずいの、どっち」


 そんなやりとりをしつつ、辿りついたのはおなじみの居酒屋『病院』だ。思えばお嬢ちゃんと一緒になったのは運がよかったね。


「一緒にいこ」


「え、でもクララお酒飲めません! お酒を飲むのは200歳を超えてからと誰かが言ってました!」


 ……樹木年齢?


「そこまで待てん。ほれ入れ」


「ああああ、クララは不良木ですー!!」


 発育悪い木にしか聞こえんね。ともかく『病院』ののれんをくぐる。ちなみにこののれん、『体内行き』と書いてある。あまりくぐりたくないが、これがここのセンスだから仕方がない。


「やっほ!! お待たせ」


「姉! 遅いぞ」


「あ、クララちゃんだー! お姉が連れてきたの?」


 そこには見慣れたメンバーが揃っていた。根暗な人形館の三人と、トメテン夫婦+K、そして……


「あ、カツコさん! あの後大変だったんですからね!! どこ行ってたんですか!?」


 あたしの相方になるはずだったサラさん。実はあれ以来会っていなかったりする。


「や、サラちゃんに幸福はまだ早いかと思って」


「何わけのわからないことを――」


「はいはいサラさん。その話はあとで。ほら姉、グラス。クララちゃんもはい、ジュース」


「あ、ありがとうです」


 みなさん、もうおかわり――じゃなくて、もうおわかりでしょうか?


 そうです、これは夏祭りの漫才大会の打ち上げなのです!!


「それじゃ、漫才大会だけじゃなく打ち上げにまで遅刻してきた姉を恨んで!」


『乾杯!!』


 景気よくグラスが鳴り、各々のテーブルに散っていく。おお、なんか漫才チームそのままみたいなテーブル分け……かと思いきや。


 トメ&サユカの席。


 弟君にビールを注ぎながら幸せそうに頬を緩めるサユカちゃん……顔に『これやってると奥さんみたいで幸せ』って書いてある。トメも結構楽しそうだし。仲良いねぇ。


 カカちゃん&サエっちの席。


「うう……サユカちゃんがかまってくれない」


「まま、飲んで飲んでー」


「注いでくれ! 涙の数だけ!」


 なんだかんだ言いつつサエっちに注いでもらえて嬉しそうじゃんカカちゃん。それにしてもこの居酒屋は用意いいなぁ。こういうとこで瓶のコーラはいいよね。


 キリヤン。


 働いてる。


 テンちゃん&サラちゃんの席。


「ああ……トメさんにサユカちゃん……私の大好物が二人も……混ざらないと……でも、でも、もうちょっとこの可愛い光景を見て堪能してから……」


「うんうん、あっちも微笑ましいがカカたちのノリもおもしれーぞ」


 うちの弟と子供らの様子を酒の肴にしてすっかり傍観モードだね、この二人は。んー、混ざるならこっちかなぁ。


「クララどこいきましょうか」


「あ、そか。君いたね。じゃ一緒に飲むか!」


「はい! 酒もってこーい!」


「ダメっしょ。お、ノンアルコールカクテルあるじゃん。すいませーん、『桜』一つ!」


「共食いならぬ共飲みです!」


「おお、共に飲もう」


 クララちゃんと改めてかんぱーい、なんてやってると、


「あ、そうだ! 姉、あんたが来る前に決まったことがあるんだけどさ」


「なんだい弟」


「漫才大会で見られなかった姉とサラさんの漫才を、今ここで見せてもらえないかなーって」


 パチパチパチ! と拍手するカカちゃんたちと周りの客。予め話がいっていたのか、相変わらずアットホームな店だなぁ。


「じゃ、やる? サラちゃん」


「……はい。断りきれなかったので」


 というわけで、店の真ん中あたりで二人で並ぶ。


 えっと……


「サラさん一人で漫才やります」


「なんでやねん」


「なんでやねん(そういう話だったでしょ)」


「なんでやねん(聞いてないですよ)」


「なんでやねん(まぁいいや。やれ)」


「なんでやねん(カツコさんやってくださいよ)」


「なんでやねん(めんどくさい)」


「なんでやねん(そういうの得意でしょ)」


「なんでやねん(そのような事実は一切ございません)」


「なんでやねん(存在そのものがボケじゃないですか)」


「なんでやねん(いくらあたしでも怒るよ?)」


「なんでやねん(間違ったこと言ってませんよ私)」


「いいかげんにしなさい(いいかげんにやりなさい)」


「いいかげんにしなさい(そっちこそ)」


「どないやねん(ぶっちゃけどんなネタやるんだっけ?)」


「どないやねん(ぶっちゃけ酔って忘れました)」


「(あたしたちって)どないやねん」


 あれ、クララちゃんが突っ込んできた。物理的に。けしてツッコミにきたわけではなく――


「なんでやねんです!!(意味わかってない)」


 混ざりたかっただけのようです。


 ――少し離れたテーブルでは。


「ね、トメ兄。あれツッコまなくていいの?」


「これ以上『なんでやねん』を増やしてどうすんだ」


「それもそだね。ま、ウケてるからいっか」 


 うちの弟どもがこんなことを言っていたが……実際、このツッコミ合戦がそこそこウケてるから不思議だった。まぁ相手は酔っ払いだしね。


 ともかく。


「いいからやれ!」


「そっちこそやれ!」


「やれ!」


「やれ!」


 酒のせいかケンカごしのサラちゃんを相手にしながら、


「やれやれ……」


「トメ兄、それおもしろくない」


「や、そんなつもりは別に」


 そんな弟妹と一緒に、騒がしく打ち上げを過ごしたのでした!




 人形の処置は軽く書きましたが、あの人形。後々また出てくる予定です。なんであの部屋の押入れなんかに入っていたか……とかその辺を書こうかと。まー先だと思いますが^^;


 ともかく打ち上げでした。みんなお疲れ様!

 そしてお疲れ様、私! 乾杯――は今できないから仕事終わったら飲も笑

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