カカの天下535「夏祭りだよ、トメテン夫婦+K」
こんにちは、司会です。そろそろ名前をもらえませんか? ダメですかそうですか。
ささ、愚痴ってないでお仕事お仕事。
『先の二組と違い、今度は大人なグループの登場です! 大人な漫才を見せてくれるのか、それとも!? エントリーナンバー三番、“トメテン夫婦+K”の登場です、どうぞ!!』
カカカッ! カカカッ! カカカカカカカッ!! とだんだん作為的に感じてきた音と共に、二人の男女が登場しました!
「どうも、トメです!」
「テンカだ。よろしくな」
「さて、夫婦漫才ということだけど――」
「トメさんの妻はわたしよっ!!」
ステージ脇からあがる声、ピタリと動きを止める皆さん。
「あの、サユカちゃん? 今は漫才でフリをするだけだから、別に気にしないでくれるかな」
「と、トメさんがそう言うなら……」
なにやらハプニングがあったようです。さてはあの男モテモテか。
「さて、それでは夫婦――」
「トメさんと結婚するのは私です!」「今度はサラさんかい!?」
観客席からも一人、妻候補があがりました。やらせなのか本気なのか、後者だったらどうしてくれようと観客の皆さんが殺気だってきました。
「だからこれ設定、演技! ね?」
「はい、わかりました……すいません、ついノッてしまって」
「まったくもう……皿は乗るもんじゃなくて乗せるもんなんだよ?」
「うまいこと言ったと思ってるだろ」「うっさいテン」
こほん、と一つ咳払い。
「さて、気を取り直して。僕らは今から夫婦です!」
「それはおめでとうございます、クララ祝福します!!」「漫才やらせてよ!!」
「はい?」
「クララちゃん、これ漫才。ね?」
「はい」
「結婚したって設定なだけで、実は結婚してないんだよ」
「結婚詐欺ですか!?」「話を聞け!!」
「逮捕します!」「いいから黙っててよ進まないから!」
「死刑!」「厳しすぎる!!」
はぁ、とトメ君は疲れたようなため息……これ、全部ハプニングなのでしょうか。
「今度こそやるぞ」
「なぁトメ」
「なに」
「おまえ誰と漫才するんだ?」「言うな」
なんと言いますか……人気者ですねぇ。
「とにかく夫婦漫才! テンと!」
「仕方ねぇな、やってやるよ」
「おまえ偉そうだな」
「あん? だってオレが亭主だろ」
「いや待てよ」
「なによ」
「おまえ女なんだから妻やれよ。僕が夫だろ普通は」
「いや、それは古い。二次元の世界ではな、自分のことをオレっていう女よりもボクって呼ぶ女のほうが多いんだぜ」
「知らないよそんなの。どっから聞いたんだよ」
「知り合いの引きこもり。パソコンばっかやってるらしいぜ」
っくしゅ! と観客席からくしゃみの音が。いるんでしょうか、その引きこもりさんが。
「ともかく、僕が夫、おまえは妻な」
「わかったよ、ったく」
「オレっていうのも止めな。テン、おまえ猫かぶるのうまいだろ。私って言え。あと女らしい言葉使いに変えろよ。妻っぽく」
「わ、わかったわよ。私、ちょっと恥ずかしいんだけど、これでいいのかしら?」
ぼそぼそぼそぼそ。
「今『きめぇ』とか言ったやつちょっとこい」「こらこら」
「いや、許さん。こんなこともあろうかと、これを持ってきた」
「なんだそれ、人形?」
「ああ、オレたちの前に出てた箱人間が使ってた」「箱人間って言うなっ!」
ステージ脇から何か聞こえますが……
「や、だってまだ箱に」
「入ってるし」
「ちょっとカカすけサエすけ! いい加減出しなさいよっ!」
「えー、でも鍵どっか行っちゃったしー」
「先生! トメ兄! どうすればいいと思う?」
「おまえらも人の漫才中に勝手に入ってくんなよな……テン、なんとかしてやれよ」
「カカ!」
「あい?」
「蹴り砕け」「あい」「ぎにゃああああああああああああっ!?」
「さて、さっきから邪魔ばっかり入るが続けるぜ。この人形なんだけどよ」
「それをどうするんだ」
「ふっふっふ、これにはな、さっきオレのことを『きめぇ』と言ったうちの一人の、毛が入ってるんだよ!」
「やべ」「てめぇも言ったのかよ!?」
「いやいや、冗談。妻をそんな風に言うはずないじゃないか」
「ほんとか?」「ほんとほんと」
「ならいいけど。それでな、この人形の腕を捻れば、その毛を持ってた本人が痛がるって寸法さ」
「呪いの藁人形か」
「似たようなもんだってサエが言ってたからな。それ、ねじねじねーじ」
……数秒経過。
「何も起こらないぞ?」
「あ、トメの毛だった」「いだだだだだだっ!!」
「間違えちった」
「痛! 痛いから! さっさと腕を捻るの止めてくれ!」
「首ちぎっちゃえ」「うぉい!?」
「捨てちゃえ」「僕の首!!」
「早く演技しろよ」「どうしろってんだよ!?」
「首取れよ」「できるか!!」
ああ、そうこう言ってるうちに投げられた人形の首が観客席の方へ……
「誰かそれ拾ってくれ!」
トメさんが呼びかけると、すぐに観客席から反応が!
「とった! 首をとったぞ!!」
「そこの武将さん早く返して!」
ぽーんと投げられた首を見事にキャッチして、あっさりと人形にはめ込むテンカさん。
「さて漫才始めるか」「アドリブなげーよ!」
え、今までの全部アドリブ!? た、たしかに全部その場だからできるネタでしたけど……
「まったく……あんだけ練習したのに初っ端からメチャクチャじゃないか」
「まーまー、今からちゃんとやればいいじゃねぇか」
「よし、やるぞ。テン、自分のことは私で、女言葉でよろしくな」
「いま心の中で『きめぇ』って言ったやつ!」「それはもういいから」
「全員、人形と同じように首が飛ぶからな」「こえーよ!」
「そしてクララがキャッチしてからまた戻ってくる」「怖すぎるわ!! 何が怖いってクララちゃんが一番怖いわ!! それ思った人、全員の生首がクララちゃんの手元に一旦集まるんだろ? 山ほどの生首が!」
「満腹だな」「食うなよ!」
「ごちそうさまでした!」「もう食ったんかい!!」
えっと……いつになったら始まるんでしょうか? というか色んな人が喋りすぎ……
「ったく……始めるぞ! はいはい始まり!」
「おう。こほん、ねぇあなた?」
「お、おう」
「なに照れてんだよ」「うるせーよ!!」
というか二人とも照れてるっぽいです。
「あのね、私ね、結婚したらやってみたかったことがあったの」
「へぇ、なんだい?」
「離婚」「いきなりそれかよ!!」
「やってみたいと思わない?」
「思わないよ! なに、僕なんかした?」
「したよ」
「なにそれ、なにそれ。覚えがないんだけど」
「したした、とんでもないことした」
「なにしたの?」
「オレと結婚した」「ダメなのかよ!?」
「うそうそ、冗談。私、あなたのことが好きなんです!」
「ほんとか?」
「だってあなた、いいところいっぱいあるんだよ」
「そうかなぁ」
「顔は格好いいし」
「え、いや」
「りりしい瞳」
「いやそんな」
「優しい雰囲気」
「照れるなぁ」
「柔らかいこじわ」
「うんうん――こじわ!? しわ!? しわなんかあったっけ僕の顔」
「そんなあなたが好きなんです」
「い、いや僕は」
「なんてステキなんでしょう。福沢諭吉」「金目当てかい!?」
福沢諭吉。一般的に一万円札に写っている、おそらく日本一の人気者のおっちゃんである。
「ええ。コンビニで会計するときのあなたのサイフの中身を見たときから私は……」
「うあ認めたよこの人」
「いえいえ、あなたのステキなところもいっぱいあるんだよ?」
「へぇ。例えば?」
「財力と預金残高と遺産」「全部お金かよ!!」
「同情するなら金をくれ♪」「僕に同情してくれよ!!」
「女運がなかったな……」「おまえが言うな!!」
「同情してあげたんじゃん」
「同情の原因が言うなっての。しかも何だよ遺産って……殺す気か!?」
「うん」
「満々? 殺す気満々なの!?」
「ふふ、万万♪」「叩くな僕の懐を! 僕のサイフを叩くな!」
「そこに万札があると思うと、つい」
「怖いなぁ……大体なんでいきなりそんなこと言うんだよ」
「結婚詐欺です!」「クララちゃん黙ってて!」
「す、すいません! なんだかずっと見てたら混ざりたくなってしまって!」
気持ちはわかります。しかし邪魔をするのは……と思いつつ、彼らはその邪魔すら漫才の一部にしてしまっている気もします。
「それで? なんでそんなこと言うんだよ」
「浮気したでしょう! 知ってるんだから!」
「……え」
「わたしのことっ!?」「私のことですね」「私かー」「おまえら黙れっての!!」
「……人気者だな、トメ」
「テン、素に戻ってる」「おっと」
「はぁ……サユカちゃんやサラさんはともかく、サエちゃんまで混じってくるとは……このままだとカカもくるな。その前になんとかしないと」
「おい、続き」
「あ、ああそうだった」
「浮気したでしょう! 知ってるんだから」
「してないよそんなこと」
「この前、一緒に歩いてるの見たんだから」
「違うって」
「そんなあの人が、今この会場にきてくださっていまーす」
「なにそのどっかの番組みたいな展開」
「さぁ、どうぞー」
あらかじめ仕込んでおいたのか、どこかで聞いたような感動の場面っぽい音楽を響かせて登場したのは……+Kの人?
「わーい」
「男じゃん!! 僕そんなのと浮気したりしないよ!」
「ぱぱー」「隠し子!? そういう設定!? てか子供にしてはでかっ!! 僕が何歳のころ生んだんだよ!?」
「マイナス二歳?」「年上なのかよ!!」
「ぱぱー」
「なにさ」
「ぼく、会いたくなかった」「じゃあ出てくんなよ!!」
激しくツッコまれながらもきゃっきゃとキモい演技をしながら飛び跳ねる男性……たしかキリヤさんでしたか。
「わかった? あなたが浮気してるってことが」
「ちょっと待てよ。今の話聞いてなかったのか!? マイナス二歳だって!」
「たったマイナス二歳がどうしたのよ!」「は?」
「私の故郷なんかマイナス三十度よ」「知らねーよそんなこと!」
「だからさっさと慰謝料払え!」「おまえ最悪だな!」
「そして死んで遺産もよこせ!」「最悪すぎて涙が出るわ!」
「涙が金になるのか!?」「なんでそんなに病んでるんだ!?」
「ねぇちょっと、早くしてくださいよ」
「な、なんだよ僕の息子(仮)」
「……?」「股間を見るな!! 息子ってそう意味じゃねーよ!」
「でも仮ですよ」
「ああ、僕は認めてないからな」
「仮……カリ?」「下ネタやめろ!! お子様も見てるかもしれないんだぞ?」
「えー、良い子のみんな? 意味がわからなくてもお母さんとかに聞いてはいけませんよ?」
「先生に聞け」「おいそこの本業教師!!」
「きっと困るぜー。けけけ」「テン、元に戻ってる」「おっと」
「とにかくです」
「なんだよ息子」
「慰謝料出せよ!」「なんで息子が催促するんだよ!」
「早くしないと借金が返せないでしょう! ねぇ姉さん」「おまえらグルか!?」
「グルメか!?」「ちげーよ! 脇から変なこと言うなカカ!!」
テラカオス。
「とにかく、おまえらグルだな!?」
「グルグルだな!」「何も回らないよ黙れよカカ!!」
「ええと、続き続き……う、うぐっ! くそ、何ヘタなこと言ってんだキリヤ!」
「本性を現したなテン!」
「こうなったら仕方がねぇぜ!」
「やっぱそっちのほうが似合うぞ」「余計なお世話だ!!」
「まったくもう……大体さ、なんでそんなに借金があるんだよ」
「お金、いっぱい使っちゃったんですよ」
「何に使ったのさ」
「あなたたちの結婚式で」「何から何までダメな結婚だったんだなオイ!」
「このダメ夫」
「うるさいダメ妻」
「結婚、ダメ、絶対」「嫌なこと言うなよ! いいかげんにしろ」
「「「ありがとうございましたー」」」
――はっ!? お、終わったんですね! 拍手、拍手!!
『い、いやぁー、なんだか先ほどのカカちゃんたちにも増して引き込まれてしまった感じですねぇ。点数のほうはいかに!?』
気になる点数は!?
『94点、92点、80点、96点、92点、100点――合計は、554点! これはトップです! 一気にトップに躍り出ました!!」
お三方、前へ!
『どうでしたか、トメさん!』
「邪魔多すぎ」『ごもっとも!』
しかしそれにも負けずこの点数! 素晴らしいです。
『さて、では審査員の……たこ焼き屋さん! 一組目、二組目と80点だったあなたがなぜこの二組には100点をつけたのですか!?』
『あの二人ね』
『ええ』
『うちのたこ焼き、買ってくれたんです』「それだけかよ!」
トメさんからツッコミをいただきました! しかし審査員は審査員。なんとも言えません!
『で、では一番低い点数80点をつけたゲンゾウ三きょーだいの末っ子、トウジさんに伺ってみましょう。どうでしたか?』
『俺は子供のほうが好きだ』「だから漫才の感想言えよ!!」
ここにきてもトメさんのごもっともなツッコミが映えます。しかしこれではあまりにあんまりなので……
『教頭先生! どうでしたか!?』
『うむ……テンカ君』
「な、なんだよ」
『教師たるものが漫才などをするとは!』
「んだよ、ダメなのかよ! あんただってそこで審査員やってるじゃ――」
『ぐっじょぶ!』「いいのかよ!?」
『最初はゆっくりと、しかし徐々にペースを早めていった点。そして幾度となく入った横槍をうまくかわして笑いをとり、最後までやりきった点を高く評価したいと思う』
「おお、やっと普通のコメントもらえましたね」
「でも92点なんだな」
『同僚は甘やかさない主義でな。これでも譲歩したほうだぞ』
『えー、なんだか皆さん私情が入りまくってる審査をしてる気もしますが、とにかくありがとうございました!! さて、寂しいところですが次はラストの方々です! エントリーナンバー四番! “うちの花屋”の登場です! どうぞー!』
……あれ?
そういえばそれに出演するはずのサラさんって方、観客席にいませんでしたっけ?
お待ちかねのトメテン漫才です!
どうですかぁ! どうなんですかぁ!!
書き手にはおもしろいのかわかりませんけど頑張りましたよ私は! 自分的に!笑
ふー。自己満足(ぉぃ
さて、明日は姉ですねー。
多分、ただごとにはなりませんよ笑




