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カカの天下  作者: ルシカ
534/917

カカの天下534「夏祭りだよ、根暗な人形館」

 こんにちは、司会です。名前はほしいですけどありません。


 さぁ今回も漫才大会の進行を担当させていただきます。なお、漫才じゃなくてコントでは? という声も上がっているみたいですが、専門家に聞くと『今の世の中そういった枠は取り払われてきている』とのことなので、細かいところはツッコミなしでお願いします。


 さぁ、お仕事しますよ!


『漫才なのに、根暗? 果たしてそれで笑いは取れるのか!? 再び小学生たちの出番です、エントリーナンバー、二番! “根暗な人形館”のお三方、お願いします!!』


 カカカッ! カカカッ! カカカカカカカッ!! 相変わらず意味不明な三三七拍子です。おお、先ほどの子供たちの必死で漫才をする姿がウケたらしく、いっそう大きな拍手が巻き起こります! そして登場したのは……おやおや? 着物姿の女の子、二人だけ?


「どうもこんにちは! カカです」


「サエですー」


 その瞬間、怒号のような歓声が起こりました。


『サエ様サエ様サエ様サエ様サエ様サエ様サエ様サエ様!!』


 な、なんでしょうかこの人気は!? すごい声です。さらに所々でどさくさに紛れて「おねーちゃんステキです!!」とか「かわいー!」とか「踏んでー!」とか「我が娘よー!」とか聞こえます!


「うるさい、黙れ!!」


 おっと、カカちゃんが一喝しました。小学生とは思えない剣幕に、皆さん本当に黙ります。


「私にも言え」


『カカカカカカカカカカカカカ!!』


「様をお付け!!」


『カカ様カカ様カカ様カカ様カカ様カカ様カカ様カカ様!!』


 本当になんなんでしょうか、この二人は……見たところ学校の人気者とご町内の人気者といった感じですが。


「カカちゃん、すっきりしたー?」


「うん。じゃあ始めよっか」


「よし、いくよー。いや、いきなりですけどね、実は私、悩みがあるんですよー」


「はい、お腹ナオール」「いやー、腹痛じゃなくて」


「はい、頭ナオール」「頭が悪いわけでもなく」


「はい、ハゲナオール」「誰がハゲよー」


「はい、ナオルさん」「誰よ!」


「ハゲだよ!」「知らないよ!!」


 おおお、快調にとばしております。


「じゃーこれはどう? すごいよ、どんな悩みでも解決できるよきっと!」


「なになにー?」


「はい、ナオルさんのお金」「これなら確かに何でも解決――ってそれ泥棒」


「違うよカツアゲだよ」


「同じだよ。ダメだよ泥棒なんかしたらー」


「はーい……あれ」


「なんですかー?」


「ナオルさんのお金、いまサエちゃん自分のポケットに入れなかった?」


「それはいいから話を聞いてよ」


「う、うん」


 おお、サラッと流した……さてはあの子、黒いな。


「私ね、今悩みがあるんだよー」


「どんな悩みなの?」


「あのね……これなのー」


 おお? サエちゃんが移動して……ステージ脇から大きな箱を引きずってきました。ちょうど人が一人、入るくらいの大きさです。箱の下には車輪がついています。


「この人形箱のことなんだけどー」


「ずいぶん大きな人形箱だね」


「うん、それでね――」「痛」


 ステージの中心に持ってくる際に何か踏んだのか、箱がガクンと揺れました。その際に中から声が……


「ねぇ、なんか音しなかった?」


「気のせいだよー」


 気のせいでしょうか。


 いや、声じゃなくて、ステージ上の二人が妙に楽しそうな顔をしているのは……


「ほんとに気のせい?」


「じゃー確かめてみよっかー」


「わかった。えい」


 ゴガン! と豪快に箱を蹴るカカちゃん! サエちゃんがしっかり押さえてるので箱が吹っ飛んだりすることはないですが――


「え、ちょ、何っ!?」「えい」ゴン! 「痛っ!」「なんか聞こえた気がするかもー。えい」ガン! 「きゃっ!!」「おお、いい音するする」ガン、ゴン!! 「やっ、なにこれっ」「えいえい」ガシゲシゴシガシブシバシ!! 「きゃ、い、いやぁぁぁぁぁぁっ!!」


 悲鳴が聞こえる箱をひたすら蹴り続ける二人。そして。


「あ、手が滑ったー」サエちゃんが箱から手を離し「シュート!!」箱下の車輪も手伝って勢いよくステージ脇へと引っ込んでいく箱!


「「スッキリした」」「君らわたしに恨みでもあるのかっ!!」


 箱の中からツッコミが……おお、誰かがステージ脇から勢いつけて放ったのか、器用にも滑りながら戻ってきました。


「さて、帰ろうか」「帰るなよっ!!」


 箱がツッコんでます。


「戻ってきたでしょ君の悩みがっ! 勢いよくっ」


「悩みなんかこないほうがいいよー」


「マジメにやりなさいよっ!! まったくもう……トメさんありがと」


 トメさん? ああ、ステージ脇から箱を放ってくれた人ですか。


「やりますかー」


「そうだね、仕方ない。それでサエちゃん、悩みってなに?」


「それがねー、この人形箱を開けるとー」


 大きな箱の蓋が開きました。するとそこにはひらひらなお洋服を着た女の子の人形が。


「箱のわりには小さい人形が出てきたね」


「箱の底下に人が入ってー」「そゆこと言わないの」


 なるほど。司会の特別席から背伸びして見てみると……箱の底に手だけ出せる穴が空いてますね。ということは……


「この人形がね、動き出しちゃったのー」


「そうなのっ!!」


 やはり。えっへん、と胸を張る小さい人形……箱の中の黒猫、じゃなくて箱の中のサユカちゃんが人形劇をするみたいです。


「私さー、人形を作るのが趣味なのー」


「うんうん、いっぱい作ってるよね」


「それでさ、ふと作ってみた人形がね、こんな風に気持ち悪く」「気持ち悪いって言うなっ」


「だって普通に考えてさー、人形がいきなり動き出して喋りだしたら驚くよー」


「だってあなた、もっと友達がほしいってわたしに語りかけてたじゃないっ」


「かと言って本当に人形が友達になってもー」「わがままねっ!」


 コミカルに裏手チョップをしまくる人形……可愛いですねぇ。


「サエちゃん……そんなこと言わないで」


「カカちゃん?」


「私がいるよ? 私だけが友達じゃダメなの?」


「カカちゃん……ごめんね、そうだよね。私、カカちゃんがいればそれでいい」


「サエちゃん!」


「カカちゃん!」


「「ひしっ」」「漫才やれよっ!!」


 うーん、抱き合う二人は可愛いですけど人形さんのツッコミごもっとも!


「なによっ、わたしだけ除け者にして……さっきだって二人だけ様付けで呼ばれてさ……」


 おっと、人形さんがいじけ始めました。


「ああ、ごめんね。あなたも立派な漫才仲間だもんね」


「仲間はずれはダメだよねー」


「き、君たち……」


「ごめんね、観客の皆さん! 今から私がこの人形の中の人の名前を言うので、申し訳ないんですけど様付けで呼んでくれますか!?」


 コミカルで可愛いやりとりに好意的だった観客さんたちは喜んでOKを出してくれました。


「ありがとうございます!」


「これでいいよねー?」


「カカすけ、サエすけ……ありがとう」


 おお、ステージとお客さんが一体に!


「さぁ皆さん、私に続いて! 様付けで」


『はい!』


「いきますよ!」


「せーのー」


「便所!」『便所様!!』「どういうことっ!?」


 観客までボケさせましたね今!


「便所様ってなによっ!」


「や、大事だよ便所。様付けしていいくらいに」


「……もういいわよ便所人形で。それで、便所人形から一つ言いたいことがあるわっ!」


「ヤケっぱちになったねー」


「動き出した人形の定番!」


「ほほう?」


「どんな願い事でも一つだけ叶えてちょうだいっ」


「おおー……おお?」


「願いごとを、叶えてくれるんじゃないのー?」 


 普通は逆ですよね。人形が叶えてくれそうなもんです。


「なに言ってるのよ。頑張って動き出したのよ? ご褒美くれたっていいじゃないっ」


「なんか、そう言われればそんな気がしてきたー」


「でしょっ」


「それで願い事ってなに?」


「わたしね、人間になりたいっ!」


「じゃーこの問題に答えられれば人間になれまーす」「簡単だなおいっ!!」


「不満なのー?」


「で、でもまぁ、人間になれるのよねっ」


「うん、私がー」「君ナニモノよっ!?」


「サエちゃんが人間に?」


「うん」


「それは見てみたい」「どんな設定なのよ君らはっ!?」


「まぁまぁそう言わず。人間になりたいんでしょー?」


「そ、そうよっ」


「エロい身体がほしいんでしょー?」


「べ、別に」


「胸はもっと大きく」


「うん……うんじゃなくてっ」


「エロエロな衣装を着てー」


「なんでそんな格好しなきゃならないのよっ」


「トメお兄さーん」「名前を呼ぶなっ!!」


「トメっていうのはね、この子の好きな子で」「説明するなっ!」


 いやー、もう完全に見物モードです私。フシギな世界に巻き込まれた感じで説明することありません。


「ごめんね、人形さん」


「……もうしない? 二人とも」


「「うん」」


「反省した?」


「「うん」」


「ほんとに?」


「「うん」」


「じゃあ許すっ」


「「許さん」」


「うん……えぇ!?」


「今うんって言ったね」


「ねー。許されないねー」


「うう……こいつらムカつくっ」 


「というわけで、人間になれました!」「正解だったの今のっ!? どこ、どこに正解があったの! ていうかそもそも問題はっ!?」


「いいじゃんそんなこと」


「そっか、そうよねっ! やった! やった……あれ、わたし、ちょ、この箱、出られない」


「何してるの?」


「だって人間になったんでしょ」


「うん、私たちが」「わたしはっ!?」


「そのままー」


「なんで……というか君ら、変わってないじゃんっ! なにが変わったのよ!」


「え、こんなに立派な人間になったのに」


「元から人間だったんでしょっ」


「いやいや、違うよ」


「全然違うよねー」


「何が違ってたのよっ」


「舌が二枚あったんだよ」「多分それ変わってない!! 今も絶対二枚あるわよっ!」


「「いいかげんにしろ」」「君らがだよ!! ほんといいかげんにしろ」


「「「ありがとうございました」」」


 三人の妙な雰囲気に呑まれていた私たちですが……気がつけば拍手を送っていました!


『えー、ぜんっぜん根暗じゃなかったのが気になりますが……点数のほう、どうぞ!!』


 一斉に表示された点数は!


『90点、92点、92点、94点、92点、80点! これはいい点数です、合計は――540点です! 株式会社アヤを大きく上回りました!』


 ささ、どうぞーと促すと、照れながらお二人と大きな箱が前に出てきてくれました。


『いやー、どうでしたかカカちゃん』


「たこ焼き屋さんが前と変わらず80点なのが気になります」


『おっと審査員にダメ出しがきましたよ! しかしたこ焼き屋さんはノーコメントのご様子なので他……ゲンゾウ兄弟のお二人、いかがでした?』


『いやぁ、相変わらずの嬢ちゃんたちの世界に巻き込まれた感じだったぜ。テンポもよかったしな。なぁ兄貴』


『おう。しかし最後のオチ、多分たくさん無駄に喋るってことを言いたくて二枚舌を使ったんだと思うが、微妙に意味が違うぜ』


『おっとこちらにもダメ出しが入りました。えーサエちゃん? 二枚舌の意味はわかりますか?』


「ほら、サエちゃん。二枚あるんだから」


「移植できますねー」「しないわよ気持ち悪いっ」


『おおっと、またもや箱の中からツッコミが入りましたが……まだ漫才は続いてるんでしょうか?』


「続いてないですよ?」


「続いてないですよー」


「じゃあここから出してよっ」


「「じゃあ続いてます」」「おいっ!!」


『いやはや、放っておくといつまでも続きそうな勢いですねぇ……しかしそろそろ時間です。最後に一つ、いいですか?』


「なんでしょ」


『トリオ名が“根暗な人形館”だったんですが……どの辺が根暗で、どの辺が館なんですか?』


「根暗なのは、この子がいつまでも箱に引きこもってるからです」「ちょっ、出られないの予定通りだったのっ!?」


「館はこの箱です」「ちっさいわよっ! いいかげんにしろ」


「「ありがとうございましたー」」


『やっぱりまだ続いてましたね、ええ。そんなわけで、とっても摩訶不思議なお三方でしたー……次です、お腹いっぱいになった気もしますがエントリーナンバー三番“トメテン夫婦+K”の登場です、どうぞー!』


 まだまだ続きますよ!




 危なかったです……や、投稿時間が。もう少しで明日になるとこでした笑

 予想外な仕事入ったんで書き終わるのがギリギリでした。なんか長くなったし^^;あんま行き当たりばったりもアレですねぇ……まぁ書きたい感じで書けた気がするのでよしとします。よしとしてください(お願い


 さてさて、次回は本命(っぽい?)トメテンです。どうなるでしょーか。

 そしてお笑い芸人気分で書いてるコレは果たして楽しんでもらえているのでしょーか笑

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