カカの天下532「夏祭りだよ、集合しすぎ」
続きましてこんにちは、トメです。
さてさて、大人数な僕らはそれなりに楽しくお祭りを回ってきたのですが……腕時計を見るとあらびっくり。
「おいテン、キリヤ。そろそろステージ行かないとまずいぞ。集合時間だ」
いよいよ本日のメインイベントが始まろうとしています! なぜかうちらの関係者全員が漫才をやる、というフシギな……というか何してんのおまえら的な展開になってしまいましたが、やると決めたからにはやらねば!
「もうそんな時間か。おいガキども! てめぇらの集合時間はいつだ?」
カカ組、アヤ組の話を聞くと、どうやら僕らの集合時間と大差ないみたいだ。届いたお知らせを読む限り、イベントステージは二時間以上続くようなので、出演者たちは一斉に集合するわけではなく、自分の出演予定時刻の十五分前に各自で待機しなければならない。それで僕らの集合時間が大差ないということは……もしかしたら連続で漫才することになるかもしれない。そうなったらほんと漫才大会みたいに……まぁ僕らは別にいいんだけど。
「それでは皆さん仲良く会場に行きましょう! こっちですよー」
引率の先生よろしく先導していくキリヤ……って。
「道、詳しいんだなおまえ」
「ええ、このお祭りを主催している神社とうちは懇意の仲なので。このお祭りにはよく出席させられてたんですよ」
あぁ。そういえばこいつバイトばっかしてるけど、うちの街にある神社の神主の息子なんだっけ。忘れてた――しかしいいのか、そんな顔知られてるのに漫才なんかして。
「会場は……ここです!」
おー!! と僕らの驚きの声が重なる。境内の奥に設置されたステージはアイドルがライブでもやっていそうなほど豪華で、さらにそれに見劣りしない観客の多さときたら……ほ、本当にこんな大勢の前で漫才なんかやっていいんだろうか。
「ねぇトメ兄」
くい、と服の袖を引っ張ったのは妹カカ。おお、なんて堂々とした瞳だろう。まったく物怖じしていない。さすがだ!
「帰ろう」
物怖じどころか完璧に怖気づいて諦めたんかい!!
「あのな――」
「大丈夫ですよ、カカちゃん」
僕が口を開く前に、おそらくこの祭りに一番詳しいだろうキリヤがでしゃばった。僕の見せ場取る気か。
「毎年見ていますが、このイベント自体はさほど期待されているものではありません。なにしろプロではなく一般人がやるのですから、基本的にレベルが低いのです。お客さんもそれをわかってますから、そんなに気にすることないですよ」
「そなの?」
「そうそう。つまらなくても『ま、こんなもんでしょ』程度にしか思いません。それでも一般人があたふたするのはそれなりに面白いから、ここまで人が集まるのです」
「……そっか。でもなんか、それ……逆に嫌だね」
お、負けず嫌いに火がついたか?
「ええ、そうですね。大勢の人たちがあなたを『素人の漫才? はは、ダッセ』などと鼻で笑いながら見ることでしょう。『やっぱつまんね。ま、こんな程度だろ』とか、『俺のほうがうまくできるぜ』とか、ステージに上がろうともしない口先だけの輩が笑うわけですよ。その鼻を明かしてやろうとか思いません?」
「なんか、思ってきた」
「なめられるのはムカつきますねー」
「わたしをなめていいのはトメさんだけよっ」
「さ、サユカ! それ意味違くない!?」
「あはは、アヤ坊ったらすけべー」
「この俺をなめていいのもカ――痛っ!!」
「タケダ君! 時と場合を考えてふざけたこと言ってくださいまし。インドちゃんの前でそういうことはダメです」
「……えっと、何が?」
その会話を子供たちはみんな聞いていたらしい。先ほど驚き、ビビっていた皆は――なんと、見事にやる気になっていた。
恐るべきはキリヤの話術か顔芸か。『素人の漫才? はは、ダッセ』って見てるだけで殴りたくなるくらいムカつく顔だったからなぁ。
「良い役とられたな、トメ」
「おまえもだろ? センセ」
「うっせ。オレは先生っぽくないからいいんだよ。演説なんぞやってられっか」
授業も似たようなもんだと思うけどね。さて――
「じゃ、行くか! 大して期待されてないんだし、思いっきり楽しんでいこう!」
おー!! と周りの人に変な顔で見られながらも片手を突き上げて気合を入れる。や、なかなかテンション上がってきたぞー。
わいわいと喋りながら緊張をほぐしつつステージに移動。受付けの人に名前を言って通してもらい、裏へと回る。
「オレらは次の次の次……結構あるな。ガキどもはどうだ?」
「私たちは次の次だよ。アヤちゃんたちは?」
「……次よ」
あれま。意外とギリギリだったのね。時間早まったのかな? こういうイベントで時間が前後しちゃうのはよくある話だし。
「ま、まぁ! 大して期待されてないって言うし、大丈夫よ!!」
「アヤ坊は聖歌隊とかで人前とか慣れてるもんな!」
「そう、そうよ! 客なんかみんなじゃがいもよ!!」
「い、インドちゃん! そんなにカレーをがつがつと食べたらお腹壊しますよ!」
「はぐはぐはぐ……」
「緊張のあまり、お腹じゃなくて別のところが壊れているな……よし、ノゾミ君!」
「……はぐ?」
「俺にもカレーをくれ」
「あなたも壊れてるじゃないですか!?」
五人はそれなりに頑張って気合を入れてるらしい。ちょっと心配だけど、キリヤの言うとおり、お客さんが温かければ――お?
『ありがとうございました! 武田遠衣君で、人間紙風船でしたー』
今ステージに出てる人が終わったみたいだ。
「あれ、兄貴だ」
む? そういえばタケダって言ってたな。タケダの兄貴かあの人……人間紙風船ってなにやったんだろ。まぁいっか。
いよいよ次だな! 期待されてないとはいえ、頑張ってほしい――
『さぁ!! ここで本日のメインパートに移りたいと思います!』
……?
『かつて、このステージは漫才大会として全国に名を知らしめていました……それはもう数十年も昔の話。現在では廃れ、ただの一般参加のお遊戯イベントになってしまいました』
……オイオイ。
『しかし! それを知っていた強者がいたのです!』
知らないから!!
『ぜひこの晴れのステージで漫才をしたいという猛者が四組も!!』
偶然だからそれ!!
『そんなわけで、私たち実行委員会は急遽、審査員をご用意しました。まずは、かつて少年少女時代にトリオ漫才で大会の優勝を総なめにした――ゲンゾウ三きょーだい!!』
あの?
『そして数々の漫才師を世に送り出してきた貴桜小学校の校長先生! そして教頭先生にもお越しいただいてます』
もしもーし?
『そしてなんとなく誘ってみた、たこ焼き屋のおっさん!』
……あ、ベビーカステラをパクって売ってた人だ。
『この六人の特別審査員をお招きし、各漫才に点数をつけていきたいと思います。そして見事優勝に輝いた組には豪華賞品が!』
な、なんか……めっちゃハードル上がってるんスけど!?
『さぁ! 観客の皆さんも大盛り上がりになってきたところで行きましょう! エントリーナンバー、一番!! “株式会社アヤ”の皆さんです。どうぞ!!』
お、おいおい……大丈夫か?
こんなステージ、姉だってどうなるか……あれ。
姉どこいった。
そんなわけで、ようやくイベントの準備が整いました!
いやー、夏祭りだけで余裕で一週間超えそうですな笑
どうせですし、一番おもしろかった漫才を皆さんに採点でもしてもらいましょうか……
いや待て。私、自分で自分のハードル上げてないか? 笑い取れるか的な意味とか採点の合計出す作業的な意味とか!!
んー……
ま、採点したければどぞ(てきとー




