カカの天下530「夏祭りだよ、全員集合」
遠くから花火の音が聞こえます。
トメです。本日いよいよ夏祭りです!! 昨日は前夜祭があったみたいですが、イベントステージが本祭の今日にあるので行きませんでした。しかし話に聞くとその日もかなりの盛り上がりを見せたようで……きっと今日も大盛り上がりでしょう。楽しみです!
「お待たせ!!」
「おお、用意できたか」
カカサエサユカの三人が仲良くうちの玄関から出てきた。そして――その仲のよすぎる格好に驚いた。
「どうよ、トメ兄」
「ど、どうですかトメさんっ」
「どうメダルですかートメお兄さん」
最後のはいまいちわからんけど、いやぁ。
「うん、似合ってる。三人とも色違いのケロリン浴衣って……よく見つけたな」
カカは赤、サエちゃんは黒、サユカちゃんはピンクで、それぞれの生地の色にあったケロリン模様が所々で飛び跳ねていた。
「サエちゃんが持ってきたんだよー」
「買ったのか?」
「いえいえー、なぜか昨日、宅配便で送られてきたんですよー。せっかくだから着てみなさいっておばさ――お養母さんが」
……サカイさんだな、絶対。なんだ、意外とやることやってるんじゃん。
「いいよね、トリオって感じで! このまま漫才に出るんだよ」
「ああ、おまえらも出るんだよな」
こいつらも漫才なんだよなぁ。変なかぶり方したもんだ。うちのおもしろ一家の血をひいてるだけはある。
「トメさん……今日は、今日だけは勝負ですっ! どっちが満点を取れるかっ」
「点数……つくのか?」
「え、こういうのってつくんじゃないんですかっ」
や、漫才大会じゃなくてお祭りだしこれ。
「ま、いっか。じゃあどっちが多く笑いをとれるか勝負な」
「は、はい!! 絶対みんなを笑い死にさせてやりますっ」
大量殺人じゃん。
「そして地球でただ二人残ってしまったわたしとトメさんは……!!」
なんかドラマだ。
「生活しきれず死んでゆく……!」
なんか現実的だ。
「そして二人は仲良く天国へっ!」
えっと、まぁ、お手柔らかにね。
……ん? いつのまにか赤いのと黒いのが離れたところに。
「聞きましたかサエさんや。あのラブラブっぷり」
「おーおー、なにやら二人で盛り上がって……カップルはお祭りの風物詩ですなー」
「もうあんたら二人で漫才やれば? って感じですなぁ」
「そこをあえてテンカ先生とやらせることによって、サユカちゃんをいじるのが楽しくなるんじゃないですかぁ」
「おお、そういえばトメ兄とテンカ先生は夫婦漫才をやるとか? これは見ものですなぁ」
「サユカちゃん悔しがるよー、くっくっくー」
「泣くかもねー、今のうちに幸せを……けっけっけ」
「ちょ、ちょっとそこの二人ぃぃぃっ!!」
よかったな、サユカちゃん。早速笑いとれてるぞ。邪な笑いだけど。
さてさて……そろそろ夕焼けも引っ込んできたし。そろそろ行きますかね。
祭り会場は隣町だ。なのでバスで移動するんだけど、さすがに混んでいた。臨時でたくさんバスが出てるからすぐ乗れたけど。
そして到着するころにはすっかり真っ暗。しかしそれに負けない無数の提灯の明かりが夜空と人々を照らしていた。
「んー! 祭りって感じだねー」
「よし! 早速食べよう!」
「着いた早々に何を食べるのよっ」
「たこ焼き屋さんとお好み焼き屋さんとわた飴屋さんと焼きそば屋さん!!」
「屋さん――って人を食べてどうするのっ!?」
「あのわた飴屋さん、おいしそー」
「腹壊すわよっ、あんなハゲた人食べたらっ!」
「ああ、あのわたあめをハゲた頭にかぶせて『イカしてるぜそのアフロ!』って言ってあげたい!」
「ほんとにやる気!? ちょ、待ちなさいよカカすけ! こらっ、サエすけも一緒に止めて!」
「白いアフロもいいもんだー」
「君も同意見かっ!? たしかにあのおっさんの頭は可哀想だけどっ」
おー……見事に舞い上がってるな、この三人。まぁ一年ぶりの夏祭りだし、子供はこれくらいはしゃいでくれたほうが楽しいもんだ。うんうん。
「好々爺な視線で満足そうに頷いて……もう歳ですか、おじいちゃん?」
「オレも子供は好きだが、今のトメみてぇな生暖かい視線は無理だなぁ。若いから」
「……おまえらのほうが年上だろうが、キリヤ、テン」
唐突に背後から現れた二人に片手をあげて挨拶する。あらかじめ携帯で連絡をとって待ち合わせしていたのだ。どうせこのあとイベントステージで一緒になるんだからな。
「いやはや、このような大人数でお祭りに来るなんて何年ぶりでしょうか。私、なんだかうきうきして踊りだしそうです」
「踊ればいいじゃないか。一人でな」
「ではフォークダンスを。ささ、トメ君」
「一人で踊れっつってんだろが! しかもなんで僕なんだよ。テンを誘えよ、一応女なんだから」
「私はあの方が女とは思えません。トメ君のほうがよほど」
うわ、なんて正直なことを!
「てめぇら……仲いいな、オイ。そんなに仲がいいなら一緒にフォークしてろや」
「ちょ、それフォークはフォークでも食器の――」
「いんや、武器だ」
あっさりグッサリとやられた僕とキリヤはその後しばらく、テンの僕となって出店の食べ物を献上することになるのだった……それにしてもどこで調達してきたんだろ、あのフォーク……お祭りってなんでもあるよなぁ。
そんな姿を三人娘に笑われながらも進んでいくと、カカがいきなり「あー!」と大声をあげた。
その視線の先にはカカたちと同じような歳の子らが五人。何人かは見たことがあるな。友達かな?
「出たな、敵め!!」
敵? とカカの言葉に首をかしげたが、すぐ近くにいたテンが「あいつらも漫才に参加するんだよ」と教えてくれた。なるほど、それで敵か。
「カカ君! 俺は君の味方だ!!」
「タケダ……ほんとに?」
「ああ、もちろんだとも!」
「じゃあ漫才勝負、負けてくれるの?」
「うぐっ……!」
タケダに他のメンバー四人の視線が突き刺さる。ここで負けると言ったらすなわち、仲間を裏切るということで……
友情&常識良識をとるか、それとも愛をとるか!?
「ま、負けてやろうじゃないか!!」
愛をとった!!
「情けない男だね」
そして負けた!!
「なっ……は、ははは! 冗談だよ! 俺は正々堂々きみに勝つ!」
「じゃ敵だね」
「ぎゃふん!」
また負けた。結局なにしても勝てないだろうけどな。
お? こっちはサエちゃんと……あの子は誰だっけ。おとなしそうな子だけど。
「インドちゃーん。カレー持ってきてる?」
「う、うん……ある」
「少しちょーだい。あとで焼きそばにかけたいのー」
「あ、あれ美味しいよね!」
なんか仲いいな、この二人は。
さてさて、もう一方では……テンと二人組の子が喋ってますな。
「ニシアヤ、てめぇらのその格好はなんだ?」
「何って、衣装ですよ。漫才の」
「アヤ坊がですね、うまくできないときのことを考えて格好だけはきちんとしようと」
「喋るなニッシー!!」
衣装、ねぇ。なんか子供用のスーツみたいな服着てるけど、会社員の漫才でもするのかな。
「気にくわねぇ」
「え!? なんでですか先生!」
「西じゃないから?」
「そんなの気にするのあんただけよ!」
「オレの持ってるスーツに似てんだよ、てめぇらの服」
「そんなこと気にするんですか先生!?」
「やっぱり西じゃん」
「話聞いてたのあんた!?」
おー……意外と強敵かもしれないな。コメディ資質はそこそこあるっぽい。
「さて、私たちも何か話しますか?」
「キリヤ? 私たちって……あ」
なんとなくはぐれたっぽい女の子が一人、僕らのそばでおろおろしていた。細くて背が高くてメガネしてて……なんとなく委員長っぽい顔をしてる。
「ええと、初めまして! わたくし、みなさんとご学友としてつき合わせていただいておりますものです」
おお、やたらと丁寧な子だ。人見知りするのか顔真っ赤だけど。
「み、皆さんイチョウと呼んでくださるので、お二方もよろしければそのようにお呼びください」
「あ、どうも、これはご丁寧に」
思わずペコリと頭を下げる。
「私のことはお兄様と呼んでくれて結構ですよ!」
「意味不明」
スパンと頭を叩くが、キリヤは構わずに笑う。
「トメ君。君にはわからないかもしれないがね、男たるもの可愛い妹を持ちたいと思うことがあるのだよ!」
「そんなもんかね」
「だからイチョウさん、どうか私を、さぁ! さぁ!」
「は、はい。キリヤお兄様」
ほんとに言ったよこの子。押しに弱いのかね。
「き……き……キリヤ感激!!」
ネタが古い。
「死んでもいい!」
勝手に死ね。
「トメ兄! はやくお祭りいこー!!」
おっと、カカの声で我にかえる。そうだな、せっかくお祭りだ。ここにいつまでも立ち止まってるわけにはいかない。
まだイベントまでは時間があるし……それまで色々と回ってみますかね!!
お祭り始まりました!
まだまだ導入部分。お楽しみの読者さんの参加する話は次の話でございます。誰が出るのか、すでにランダムで選んでありますが……明日までの参加表明が多かったら、もしかしたらまだ増やすかも?
悪あがきの表明、待ってます笑
あ、あと。祭り長そうなんで今のうちにとあんパン更新しちゃいました^^




