カカの天下528「夏の詰め合わせ、うえ」
とある夏休みの風景、そのいち。
私、サエですー。
今日はカカちゃんとサユカちゃんで、学校のプールへ遊びにきています。夏休みは監視の先生がいる時間なら出入り自由なのです。四方八方スクール水着。マニアにはたまらんねー。
「っぷはぁ!!」
「おー、サユカちゃんも泳げるようになってきたねー」
「私たちのおかげだね。感謝するがよいサユカン」
「泳げるようにって……プールサイドから二人してわたしをぶん投げただけじゃないのっ!!」
「すごい跳ねたね。水切りみたいに」
「なんかカカちゃんのお姉さんになった気分だよー」
「こっちはシューさんにでもなった気分よっ!!」
言い合いながらプールサイドからざっぱんとプールに降りて、不貞腐れるサユカちゃんに近づいていく。そういえばシューさん、最近見てないなー。
「仕方ないじゃん。サユカン全然泳げるようにならないもん」
「なんだか面倒になってさじを投げたくなるのもわかってよー」
「さじじゃなくてわたしを投げたでしょうがっ!!」
「槍投げみたいで格好よかったからいいじゃん」
「投げやりに言うなっ!!」
お、うまい。サユカちゃんもツッコミできるようになってきたねー。
「よし、んじゃサユカンのためにもちゃんと特訓しますか」
「そうだねー。じゃあ息を止める練習と、水中で目を開ける練習やろうかー」
「どうやるのよっ」
私はこういうときにもっとも適した訓練法を知っている。それは――
「水中でにらめっこするのー」
これなら特訓にもなるし遊びにもなる。一石二鳥だ。
「いいねそれ。サユカンもそれくらいならできるようになってきたし」
「いいわよ、受けて立つわっ」
私たちは「せーの」と声を合わせて、いっせいに潜った。
そして三人で顔を見合わせる。息を止めることに必死なサユカちゃん。カカちゃんはベタに鼻の先を指で押上げて豚の鼻を作っている。
しかし甘い。
必殺顔。
『ブリリアントストームのっぺらぼう!!』
二人とも水中で大爆笑。大量の空気を吐き出して水上に顔を出した。遅れて私も顔を出す。
「――ぷは。私の勝ちー」
「けほっ……さ、サエちゃんやるね。次は私の必殺技を見せてあげるよ!」
「げほげほっ……え、まだやるのっ!?」
再び「せーの」と潜る私たち。
私の必殺顔『焼き鳥フェニックス』とカカちゃんの『六連風神悪鬼』が衝突する!
勝負は互角。同時に吹き出して水上へと上がる!
「ぷはっ!! はぁ、はぁ……やるね!」
「そっちこそー!」
「げほっ……ぇ、また?」
サユカちゃんは死にそうだけどもいっちょ「せーの!!」
『トワイライトテンペスト!!』
『硝子の幻想卿!!』
互角!! サユカちゃんはすごく死にそうだけどまだまだー!
数多の必殺顔が荒れ狂う。
『天よ、地よ、この世にありし全てのものよ』
『天ぷら』
『そして誰もいなくなるか?』
『マシンガンババァ!!』
『でかい鼻!!』
『シュー君の死』
『カカちゃん』
『サエちゃん』
『今日はお弁当?』
『うん。一緒に食べよう』
『もうちょっと遊んでからねー』
『ほーい』
――そんな、水の気持ちのいい晴れた午後でした。
あ、サユカちゃん死んだ。
とある夏休みの風景、そのに。
私、アヤなんだけど……
「ネタが浮かばない!!」
これである。今日も夏祭りの五人で喫茶店に集まって考えてるんだけど……一向に漫才の方針が決まらないの!!
「何かないの、ニッシー!!」
「相撲でさ。ひが〜し〜、誰か〜。に〜し〜、かわ〜、って略すなよ! みたいなのは?」
「おもしろくない。タケダは?」
「もうすぐ算数終わるぞ」
「普通に宿題してんじゃないわよ!! ……あとで見せなさい。インドちゃんは?」
「……え、えっと……なんでやねん」
「誰もボケてない!! あ、ツッコミの練習か。あ、うん、いいよいいよ。続けて……イチョウさんは?」
「はい?」
「普通に本読んでるんじゃないわよ!!」
これである。かろうじてニッシーが考えようとしているけど西ネタばっかでつまんないし。
「はぁ……棄権したほうがいいのかしら……イチョウさんは何読んでるの?」
「わたくしが考えてきた漫才のネタ帖です」
「早く言いなさいよそれを!!」
――そんな無駄な時間を過ごしてしまった午後でした。
これで大丈夫……かな?
とある夏休みの風景、そのさん。
僕、トメです。
「休みじゃねーよ!!」
――そんなことを誰へともなく呟いてしまった午後でした。
短いし。
とある夏休みの風景、そのよん。
オレ、テンカだけどよ。
「なぁ教頭さんや」
「なにかね」
「オレが何やってると思う?」
「プールの監視だな」
「あんたは何してる」
「背泳ぎだ」
「……なんでオレだけ仕事してんだ」
「下っ端とはそういうものだ」
――そんな、理不尽な午後でした。
てめぇも働けよ。
とある夏休みの風景、そのご。
ぷるるる、と携帯が鳴って取りました、サカイです。
『もしもし、サカイさん? 今日はいったいどうしたの。会社に来てないし連絡もつかないし……何かあったの? 休みの届けも出てないわよね?』
『夏休みですー』
『ねーよ!!』
――そんな、ダメな午後でした。
あら、もう午後? 寝すぎたわー。
とある夏休みの風景、そのろく。
動物語訳。
「暑いにゃー……ラスカル」
「だるいわぅん……総理」
「焼き豚になってしまうぶぅ……」
「「ごくり」」
「ぶー!?」
――そんな動物たちの美味しそうな午後でした。
いつぞやの豚です。覚えてますか? ぶぅ。
前回好評だった詰め合わせです。詰めた基準は適当です笑
さてさて、夏祭りまであと2日。
どうしまっしょかね(ぉぃ




