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カカの天下  作者: ルシカ
524/917

カカの天下524「なんかでっかい変な人」

「平伏せー!!」


「ははー!!」


 あ、あなたは平伏さなくていいですよー? サエですー。


 今日は夏休みにも関わらず学校にお邪魔していますー。家庭科室から夏祭り用に色々と拝借するついでに中庭に来たのですが……そこに彼がいました。そう、いつかカカちゃんたちに話した、私に会うなりいきなり土下座する用務員さんです。


「頭が高いぞー!」


「ははー!」


 トメお兄さんと同じくらいの歳かな? 星座は多分、土下座です。どこの空にあるんだろうって言ったらカカちゃんは「日本人の心の空」って言ってました。渋い。


「ほら、もっと頭を下げろー!!」


「ははー!!」


 んー……


「なんで頭上げないの?」


「種を植えてるんで」


 花壇のお仕事かー。道理で中庭で会ったときから土下座してると思った。


「今までの会話はー?」


「ノリで」


 いい人だ。


「それに可愛い子に土下座するのは楽しいからな!」


 でも変な人だ。


「そういや夏休み中だよな? サ――嬢ちゃんはなんでこんなとこに来たんだ?」


「あなたに会いにきたのー」


「なんたる光栄! ははー!!」


 土下座しつつ器用に花壇に種を植える用務員さん。日光が照りつける中、タオルをハチマキにして働いて……大変だ。


「それ何の種?」


「枝豆だ。来年のおつまみ用に」


「うわー職権乱用だ。黒いー」


「よく知ってるな、黒豆だぞこれ。ビールと合うんだこれが」


「ビール飲むんだねー。道理で立派なお腹してると思った」


 その用務員さんは身体が大きい。ものすごくおおきい。今私が言ったようにお腹が出てるんだけど、中年のおじさんとは違う。なんて言うんだろう……身体が全体的に太いんだ。


「ふふふ、いいところに目をつけたな」


「すごすぎて最初に目がいくんだもん」


「巨乳はつらいぜ」


「いや胸でなくてー」


 たしかに巨乳だけどさ。


「ああ、腹か? ふふふ、このお腹にはな、夢と希望が詰まってるんだよ!!」


「へー、どこかの青いタヌキみたい! ねね、ちょっと夢と希望を取り出してみてよー」


「ふ、そいつぁムリな注文だ。どっかの青いタヌキとは違ってこの夢と希望は俺の一部になっている……詰め込むことはできても取り出すことはできねぇのさ」


「詰め込むことしかできないならー、もっと詰め込めば用務員さんは幸せになれるの?」


「肥満を超越して早死にするな」


 不幸じゃん。


「夢と希望を詰め込みすぎた人間はうまくいかないのだよ。ぶっちゃけ健康診断的にそろそろヤバイ。130キロ超えるのはさすがに……メタボリックもびっくりだ」


「メタボリック? なにそれ。格好いいね」


「なに!? 格好いいだと!! じゃー俺メタボでいいや」


「うん。なんか変身しそー。ビームだしそー」


「メタボリックキャノンとか出すぜ!」


 うんうん……本当にいいのかな? 格好いいの、名前だけなんだけどー。ま、いっか。


「ねーねー、さっきから思ってたんだけど……そのお腹叩いても平気?」


「おう。さぁ、この腹太鼓で演奏してみるがいい!」


 わーい。ああいう大きなお腹みると叩いてみたくなるよねー。


「えい――硬い!」 


 でも意外な感触だった。ぽよぽよかと思ったらカチカチ!


「ふ、昔はレスリングやって鍛えてたからな。この腹には夢と希望だけじゃなく、筋肉も詰まってるのだ。もっと叩いてみ」


「えい! えい!」


「もっと! もっと!」


「えいえいえーい!!」


「あぁ、もっとやってぇ!!」


「楽しそうだねー用務員さん」


「おう。こういうの好きだからな。そして罵られるのも大好きだ!」


「変わってるねー」


「おう。小さいころから『どうしようもないヘンタイ(笑)』と評判でな」


「それ、悪い評判じゃー」


「いやいや、(笑)がポイントだ。周りが『バカだこいつ』と笑える程度の趣味なのだよ。というわけで、さぁ! 思う存分罵るがいい!!」


「どうして生まれてきたのー?」


「……そういう重いのはちょっと」


 あらら。身体大きいのに打たれ弱いとこあるのねー。


「用務員さんも重いのに」


「ふ……言葉の重みに勝るものはないんだぜ」 


 なるほど。勉強になるなー。


「ところで用務員さん、お名前はー?」


「む? 沖村雄太と申す」


「あはははー」


「……親がつけてくれた名前を笑われるのはちょっと」


 ほんと意外と打たれ弱いなー。(笑)がつく程度の趣味だから仕方ないのか。


「じゃあ雄太さんだね」


「いやいや、ぜひゆーた、と侮蔑をこめて呼び捨てにしていただきたい。俺はあなたをサエ様と呼ぶので」


「なんでそこまで卑屈なの?」


「それがいいのだよ!!」


「ふーん。たしかにどうしようもないヘンタイだね、ゆーた」


「(笑)をつけてくれ!! そうストレートに言われるのはちょっと!」


 おもしろいなーこの人。


「ところでサエ様。俺は今から休憩だが、用務員室で茶でも飲んでくか?」


「あ、ごめん。これを友達に届けないといけないからー」


「そうか、残念だ」


「でもまたくるよー。ゆーたおもしろいもん」


「それは嬉しいな。今度来たときはぜひ踏んでくれ」


「どこを?」


「腰を。重い身体を支えているせいか、最近痛くてな」


 またねーまたなーと手を振って別れ、カカちゃんちに向かって歩き出す。


 変な人だったなー。自分でヘンタイとか言ってるし。でも身の危険とかは感じなかったな。聞くところによると生徒から人気あるみたいだし。気のいいおっちゃんって感じ。若いけど。


 それに、なんだろう……喋ってて妙に安心できたような……


 顔が優しくてお父さんみたいだったからかなー? まー全然似てないんだけどね。


 また話しに来ようっと。そして私のファンクラブに兵器として加えれば……我が軍は無敵だー! 物理的な意味で! カカちゃんのお姉さんは除外的な意味で! 放てメタボリックキャノン!! サエ様とか言ってくれるからすぐに私の軍門に下――


 ……あれ?


 そういえば私、名前言ったっけ?




 新しい変な人登場。


 名前、沖村雄太。

 職業、貴桜小学校の謎の用務員さん

 特徴、でかい。ヘンタイくさいことを言っているが、それが本気なのか周りを楽しませる冗談のつもりなのかは不明。

 基本的には優しいオーラを放っていて、女子供にはめっぽう弱い。ただし男を相手にしたときの戦闘力は鬼。その巨体を突進させ、すべてのモノをなぎ倒す。

 

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