カカの天下518「カカと漫才 レベル2」
「てく、てく、てく」
「それ何の音だ?」
「歩く音」
「そか」
「てく、てく、むきゅぅ」
「ナニ踏んだ?」
こんにちは、トメです。
今日は海の日でお休みです、が……だからと言って海にいくような予定はなく、こうしてカカとアテのない散歩なんかしています。
「すう、はあ、すう、はあ」
「それは何の音だ?」
「トメ兄の呼吸の音」
「あそ……なんで僕?」
まーとくに目的もないもんで。隣を歩くカカもこうして暇つぶしによくわからないことしてます。
「すー、はー、すー、はー」
「何やってんだか」
「ひっひっふー、ひっひっふー」
「子供なんか産まんぞ」
「ハァハァ、ハァハァ」
「ヘンタイくさいからやめれ」
「こけこっこー!」
「ニワトリか!!」
「ふー……ふー……」
「なんか疲れてる?」
「…………」
「あれ、僕の呼吸は?」
「ご臨終です」
「死んだのかよ!?」
「ぽく、ぽく、ぽく」
「ご丁寧に木魚まで……」
「でんでろでろでろ」
「おお、幽霊になって復活だ」
「…………」
「何うずくまってんだカカ」
……え? 幽霊って聞いて怖くなった? じゃあやるなよ。暇つぶしたいのはわかるけど。
「突然ですが、私は森の妖精です!!」
ほんと突然だな。
「さぁ愚かな人間よ、この森の妖精様になんなりと質問してみるがいい」
こんな偉そうな森の妖精イヤだな。もっと穏やかでいてほしい……こいつが支配する森はきっと毒キノコや茨やゾンビでいっぱいだな。や、ゾンビはいないか。こいつ苦手だし。
「ほら、質問して質問して」
「えっと……好きな森は?」
「森永」
「それ森じゃねーよ」
「え? じゃあ森永の牛乳」
「もっと違う」
森永は会社だよ。
「まま、それは置いといて。他に質問はないの?」
「……森の妖精のお仕事は?」
「大もりのご飯を食べる」
「森ちげーよ。仕事しろよ」
「食べるのが仕事なんだよ!」
「それニートって言うんだよ!」
「私は森だよ? 根無し草って言ってよ!」
「意味同じだよ。っていうか森じゃなくて草じゃん!」
「仕方ないな。じゃあ私は花の妖精!」
話変わるの早いな。
「質問して質問して」
「じゃ……花の妖精って何するの」
「花だから、癒しのオーラを出してるんだよ」
「どうやって?」
「くちゅん!」
「うお、はな水飛ばすなよ!」
「これ癒しのはな水」
「いらねーよ! ほらティッシュ! ふけ!」
ごしごしごし。
「あ、トメ兄。ティッシュについたはな水が、まるで花みたいに広がって」
「見せんでいい!! もういいよ鼻の妖精は!」
やれやれ……あ、いいとこにゴミ箱発見。ここに捨てよう。
ポイ。
「ゴミ箱のHPが2000回復した」
「はな水すごいな」
「なにせ癒しだから」
何やってんだろ僕ら。
「じゃーそろそろ私は木の妖精ね」
「はいはい……ん? さっき森だったのにまた木か」
「うん。ほら『森』って漢字は『木』が合体した漢字でしょ。私は変形合体する前の形態」
こういうダラダラを楽しむときは変にツッコまないのがコツです。
「ちなみにイエローでカレー好き」
ツッコみません。
「質問して質問して」
「じゃ……好きな木は?」
「あ、わかった。スキー!」
「なぞなぞじゃなくてね」
「じゃあ……好、き?」
「可愛く言うな」
なんかときめくだろうが。
「妖精は可愛いもんなんだよ?」
……お。唐突だけど散歩コース上にいい店見っけ。
「よし、じゃあ僕も妖精やるぞ」
「妖精は可愛いもんなんだよ?」
「そこ繰り返すな。どうせ可愛くねーよ。えー、こほん。僕は夕飯の妖精さ! 今日の夕飯は何がいい?」
ついでに買い物していこう。
「じゃー妖精のから揚げが食べたい」
「こえーよ! 鶏のから揚げな?」
「鶏ってようせいだったんだ」
「ああ、養成された鶏だ」
漢字と一緒に教えると、カカは興味深そうにうなずいた。うむ、正しい学生の姿だ。いいこと教えたわい……たとえそれがダジャレっぽいもんであっても。
「へい、らっしゃい!」
「おっちゃん!! 鶏をよこせ!!」
「それは要請な」
「はようせい!」
「早くしろって意味か。強引だ」
「そんなツッコミよせ!!」
「ああ、『よせ』か。ええかげんにしなさい」
「お客さん……あんたら変だよ?」
「「そのツッコミはよせ!」」
何か悲しいから!
ま、お後がよろしいようで。
そのつもりじゃなかったんですけどね。なんかこの二人をダラダラ喋らせてたら勝手に漫才っぽくなりました。
しかしまぁ、まだレベル2です。
まだまだ。まだまだ。
もっと漫才勉強しないとね。カカたちも。私も。




