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カカの天下  作者: ルシカ
514/917

カカの天下514「ぷち飲み会 いっかいめ」

 こんにちは、カカです。


 最近ますます暑いですね。こんなときにはやっぱりこれです。


「乾杯!」


「かんぱーい」


 んぐんぐ、くはーっ!


「たまりませんな、サエさんや」


「しみますなー、カカさんや」


「まま、飲んで飲んで」


「おっとっとー」


 瓶を傾けてサエちゃんのコップに注いであげる。うーん、今まで見てるだけだったけど、なかなか楽しいねーこれ。


 状況を説明しますと――時刻は夕方。トメ兄は残業で遅くなるというので、うちの居間でサエちゃんと二人で飲んでるわけです。 


 オレンジジュースを。


「それではおつまみの登場です! 出でよポテチ!」


「いえーい」


 ぱりぽりつまみながら、オレンジジュースをクッと……さっきも言ったけど、たまりまへんなー。


「カカちゃんも飲んで飲んでー」


「あ、どもども。おとと。ところで最近どうですかサエさんや」


「最近ですかー、そうですねー。学校の用務員さんと仲いいですねー」


「ほほう! それは初めて聞きましたぞ。面白い人なのですか?」


 なぜか敬語なのは気にしないでね。きっと酔ってるんだよ。雰囲気に。


「うん、面白いよー。なんだか知らないけど、私と会うたびに土下座するのー」


 サエちゃんたら、こあーい。


「そっか。きっとその人、星座が土下座なんだね」


「うまい! 座布団一枚……は近くにないからハイ、ポテチを一枚あげよー」


「かたじけない」


「ハイあーん」


「ぱく」


 あむあむ……うーん、サエちゃんに食べさせてもらったポテチは格別に塩味が効いてるね! ……汗ついたわけじゃないよね。


「ところでサユカちゃんはー?」


「ん、サユカンはね……ちょっとトメ兄の誤解を解きたいとか言って、今ごろトメ兄の会社近くで待ち伏せを」


「犯罪ちっくー。でも誤解って何したのかなー?」


「……えっと」


「その顔から見るにー、カカちゃんがちょっかい出したねー?」


「ぐ」


「ふむふむ、トメお兄さんとサユカちゃんが仲良くなってくのが寂しかったとー?」


「私から言えることは一つだけだ」


「なんぞやもしー?」


「注げ!」


「はいはい、飲んで飲んでー」


 差し出したコップにこぽこぽ注がれる液体。それを一気飲み! っぷはー!!


「飲むといろいろ忘れられていいね!」


「うんうん」


「よし、ここらでシュークリーム、いくか?」


「いこーいこー、シューさんクリーム」


「途端にまずそうに見えるからそれは言うな! ではさらに、新たに用意したコーラをば」


「おお、違うジュースに変えるんだねー。なんて贅沢!」


「私たちって大人だよね! ささ」


「あ。どーもー」


 新しく持ってきたコップに注いであげる。


「おおー、黒くて、しゅわしゅわで」


「まるでサエちゃんのようだ」


「私、しゅわしゅわー?」


「うん。なんとなく。いろいろ溶かす感じがそれっぽい」


「よーし、じゃー改めて乾杯だー!」


「サエちゃん汁で乾杯だ!」


「汁とか言うなー!」


 言いつつもカチン、とコップを合わせる。


「たしかに汁だと汚いイメージだよね。じゃあ、サエ液? 略してサ液?」


「サエキって誰ー?」


「さー?」


 内容の薄い会話をしながらシュークリームをつまむ。


「んー、夕飯を考えずにお菓子食べてジュース飲んで……ほんと贅沢だ! そして大人はほんとズルい! 私たち子供はこんなことして大人に見つかったら文句を言われるというのに、大人にはそれがない! 不公平だ!」


「でもトメさんはそんなことしないよねー」


「甘い! このシュークリームのように甘い。トメ兄だって人様に見せられないことしてるんだよ」


「たとえばー?」


「朝、起きたときに目覚ましを止めようとぱしぱし叩くんだけど、目覚まし時計じゃなくて枕を叩いてたり」


「……おー」


「ちょーウケる! とか言いながら床をバンバン叩いてうずくまってる風にしか見えなかったよ。しかも気づいた後、枕にごめんなさいとか謝ってるし。ちょーウケる!」


「えっとー……」


「あとね、起きたかと思ったら上半身を起こしたまま寝ちゃって、そのまま倒れて壁とか床にゴンって頭にぶつけたり」


「ええっとー……」


「ほんと、信じられないよねー。ん、どしたのサエちゃん」


「飲ませろー!」


「おう、なんだか知らないけどいくらでも注ぐよ! 飲め飲め!」


「世の中ふざけんなーってことでいっぱいだー! んぐんぐー」


「いい飲みっぷりだね! あとね、寝ぐせがすごいときのトメ兄はすごいよ。ボーンって跳ねてて、境目がハゲみたいなの!」


「おー! ハゲ万歳!」


「よくわかんないけど酔ってるねサエちゃん! いえーい。もっと飲め!」


「いえーい。ハゲも飲めー! ハゲはどこだー!」


「多分老人ホームあたりにいっぱいいるよ!」 


「じゃあ今からいっちゃおっかー?」


「場所知らないよ!」


「なんてことだ! 乾杯だ!!」


「おお乾杯だ! とにかく今日は飲むのだ!」




「ただいまー……なんだおまえら」


「おお、お帰りハゲ兄」


「お帰りなさい、ハゲお兄さん」


「おんしも飲むか? いや飲め! 私のコーラが飲めんのか!?」


「飲めんのかコラー!! 老人ホームかおまえはー!」


「いろいろとあるがもう一度言わせてくれ。なんだおまえら」


 酔っ払い気分って楽しいね。


 またやろう。




 カカとサエちゃんがだらだらとジュースを飲みながら喋るだけの話です。

 これが意外と心地いい。


 ……またやります。ええ。

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