カカの天下513「サユカの任務、浮気編!?」
こんにちは、サユカです!!
「ふー、ふー……なに?」
「あ、いいえ、なんでもっ!」
熱いお茶をふーふーしてるトメさんかぁいい……あ、状況説明もせずにすみませんっ。えっとですね、今トメさんとお茶してます! いつもの甘味処でデートなのですっ! 七夕に書いた願いごと、早速叶ってよかったぁっ!
「――しっかしお祭りねぇ。テンもよくやるな……うちの妹どもは一体なにすることやら」
「ふふ、テンカ先生はトメさんも誘うつもりみたいですよっ」
「マジかい。僕だけそんなことするのヤダなぁ。キリヤでも誘うかね」
「うわぁ。一体どんなお祭りになるのか、すごく楽しみになってきました!」
「サユカちゃんは何するんだろうね」
「……急に楽しみじゃなくなってきました。わたし、あの二人に遊ばれること確定だと思いますし」
「それが楽しいんだろ?」
「うぅぅぅぅん……そう、ですけどぉぉ」
そんなことより、トメさんとこうして雑談してるのが何よりも楽しいですっ!
そう言えたらどんなにいいかなぁ。でもわたし、今のまんまで充分幸せです。なので神様、どうか邪魔とかしないでくださいねっ。
「オイこらにーちゃん!! 俺のサユカに何してんだ!?」
神様コノヤロウ。
「んっと、君は?」
「サユカの婚約者だ!!」
……はぁっ? な、何言ってるの、この突然現れた男の子は!?
「またか」
「またとか言わないでくださいよトメさんっ! そりゃ最近テンカ先生のがありましたけどっ」
「あ、ああ。ごめん」
「とにかくっ! わたしはあなたなんか知りませんっ。わたしはトメさんと結婚するんだから!」
「オイ。まだ決まってませんよ?」
ハッキリと断言してその男の子を睨みつける。多分同い年くらい、茶色の短髪で帽子をかぶっていて、色黒な顔立ちは整っているし格好いいと言えなくもない……けど、こんな子見たことない!
「そんな……俺に結婚しようって言ってくれたじゃないか!」
「いつよっ?」
「この前の安全日だよ!」
「ぶっ!!」
「と、トメさん? どうしたんですか突然お茶を吹き出して……ところで安全日ってなんですか?」
「い、いや。サユカちゃんはまだ知らなくていいこと」
はてな? 安全な日? 逆に危険な日って何かしら。よくわからないわ。
「そこの君? 言い方間違ってないか。大安の日とか」
「ん、そうかも。えっと……とにかくこの間、廊下で教頭がくしゃみした日だよ」
「いつだよ!?」
「あの日ねっ」
「わかるんかい!?」
だって珍しかったんだもんっ。
「でも、あの日にそんなことなかったわよっ。教頭が近くにいたタケダ君になぜか『バカモン』って怒鳴っただけでっ」
「タケダ、完全に八つ当たりされてる……照れてたのか教頭?」
「トメさんっ! そんなとこまでツッコまなくていいんですっ! 大事なのは、わたしがこんな子を知らないってことですっ」
「や、わかってるよ。普通はさ、こういう同じくらいの歳の男の子と仲良くなるもんだし」
信じてくれてないし!! わたしが本当に好きなのはトメさんだけなのにっ! それなのに、この男の子……くびり殺してやろうかしら。
「な、なんだよその殺意に満ちた目は。これはサユカのために言ってるんだからな! こんなサユカの気持ちもわかってないような男に!」
「なによっ! トメさんならわたしことを隅から隅までわかってるわよ!」
「さ、サユカちゃん。その言い方はまずいからやめて!」
「ほら、自信なさげじゃん! 他にもあるぞ。例えばこの間の誕生日! この男はサユカに何をあげた?」
「ぬ、ぬいぐるみよ」
「そう、ぬいぐるみ! すでにサユカの家はぬいぐるみだらけ。部屋に収まりきれなくなったぬいぐるみは、お風呂場やトイレにも住み始めてもう大変。それなのにぬいぐるみを追加するなんて、あんた鬼か!!」
なんで君がそんなこと知ってるのよっ! その、確かにそうだけど!
「サユカちゃん……あのプレゼント、迷惑だったかな?」
「そ、そんなことありません! わたし、ちゃんと名前もつけて部屋で一緒に寝てますっ!」
……ちょっと、なぜ口を押さえて吹き出すのかしら二人とも?
「可愛……い、いや。とにかく! サユカにはもっといいプレゼントをすればよかったんだ! 名前をつけるのも苦労してるはずだし!」
「勝手なこと言わないでよっ! わたし、名前をつけるのに苦労なんか微塵もしてないわっ!」
「じゃあ聞くけど、この人にもらったぬいぐるみの名前は?」
「……トメ」
「さ、サユカちゃん……ちょっと、恥ずかしいな」
「……38号」
「多っ!! ちょ、僕38人もいんの!?」
「確かに名前に苦労はしてない……」
「い、いや、でもっ! トイレとお風呂に住んでるトメ8号とトメ22号は、いざという時ちゃんと後ろを向かせてますからっ」
「聞いてないしっ! ていうかそこにいるのもショックだし! あとロボットみたいだし!!」
「だ、だって、いつもトメさんと一緒にいたくて……」
「ふん、サユカ。よく聞け。そこまで思ったって結局意味はなくなるんだぞ?」
「ど、どういう意味よっ」
ていうかあんた誰なのよホント。
「いいか? この前に先生のお見合いがあっただろ。それをこの男が阻止した……漫画や小説でそんな展開になって、二人が結ばれなかったことなどない!!」
がーん!!
そ、そういえば……わたしが持ってる少女漫画も恋愛小説も、そんな場面があったら間違いなく二人に愛が芽生えて……そして本当に結婚式をあげて……あぁ、やめて、指輪なんか交換しないで、誓いのキスなんかしないで……ブーケを受けとったそのおっさんは何者……髭がもじゃもじゃ……ああああああ……!
「うわあああああああああああああああんっ!! その指落とすー!! その唇ちぎるー!! 先生なんかウェディングケーキのロウソクとでもキスしてればいいのよぉぉぉぉぉぉぉっ!! 髭をもじゃもじゃ生やしてロウソクの火に引火して燃えればいいのよぉぉぉぉぉっ!!」
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドド!! と砂煙を上げながら去っていくサユカちゃんを見送りながら、僕――トメはため息をついた。呆れたからだ。
「……なぁ、そこの男の子」
「おーおー、久しぶりに見たなーサユカンダッシュ。やっぱこうじゃないと」
「これが見たかったからそんな格好してきたのか?」
「うん。だって最近のサユカンつまんないもん」
「わざわざご苦労なことで……ま、子供は元気なほうがいいのかもしれないけどな」
本当に呆れて、もう一度ため息をつく。
――まぁ、こいつの正体なんぞ始めから気づいていたのだが。ついノッてしまってサユカちゃんには悪いことしたかな。
「あとで謝っておけよ? カカ」
「んやー。おもろかったから、黙っておいてまた男装するのもアリかと」
「髪やら肌の色まで変えて……化粧のうまい友達でもできたか?」
「うん、イチョウさんって言ってね――」
呑気に雑談しながら、一つ改めて思ったことがあった。
サユカちゃんって……激しいよね、いろいろ。
ほのぼの狙いなんだかメチャクチャ狙いなんだかよくわからん話になりました。まーよくあることですが笑
サユカンの暴走が最近少ないなーと思って書きました。今日のもまだまだ少ないです。つまらないです。なので、これからも何かしらで暴走させたいと思います。
そうそう、ホラーの短編を書いてみました。「小説家になろう」の企画、夏ホラーの参加作品です。カカ天とは雰囲気が全っ然、違いますが、まぁホラーなので笑
もし興味ある方いましたらご覧ください^^
タイトルは「箱の中の黒猫」です。