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カカの天下  作者: ルシカ
511/917

カカの天下511「あそこの花屋」

 こんにちは、カカです。


 今日も今日とていい天気! 特に目的もなく、一人で商店街を散策なんかしています。


 さぁ、何かステキな発見でもないかな!


 おお、あそこに見えるはお花屋さん。綺麗なお花に囲まれて、なんだか見たことある人が――


「……?」


「あれ、カカちゃんじゃん。やっほー」


「…………?」


「どしたの。変な顔して」


「……………………?」


「おーい。お姉さんの顔忘れちゃったの?」


 お花屋さんに。


 お姉?


「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!」


「どういう意味だ!?」


 逃げろ! 逃げろぉぉ!!


「殺されるうううううううう!!!」


「なんでだー!! おーい、戻ってこーい!!」


 私は泣きながら逃げ出した。




 ――そして、急いでトメ兄を連れてきてみた。


「あら、カカちゃん。よくわかんないけど落ち着いた?」


「……?」


「そしてどったの弟君。さっきのカカちゃんと同じ顔して」


「…………?」


「もしもし? 暑さにやられちゃったのかな……ジョーロの水でよければ飲む?」


「……………………?」


 トメ兄は大きく息を吸って――さん、はい!


「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!」


「あんたもか!?」


「こ、殺される、殺されるぞカカ!!」


「だよね!?」


 思いっきり頷きあう私たち!


「だからなんでさ!?」


「見てはいけないものを見てしまった!!」


「まったくその通り!」


「あんたらは姉をなんだと思ってるんだ!?」


 私とトメ兄はもう一度頷きあい、同時に言った。


「「少なくともお花とは合わないモノ」」


「なんて失礼な!! あたしとお花のどこが合わないってのさ!」


 どうやらお姉は身の程をまったくわかっていないらしい。ここは思い知らせてやる必要があるみたいだ。


 私とトメ兄はアイコンタクトを交わし、三度頷いた。


「答えろカカ! 花といえば再生の象徴! 姉は!?」


「破壊の象徴、大怪獣」


「花を女の子に例えるなら、姉は!?」


「ムキムキまっちょのスキンヘッド」


「花を見ると笑みがこぼれる! 姉を見ると!?」


「泣き叫ぶ」


「花は癒される! 姉は!?」


「疲れる」


「花は可愛い! 姉は!?」


「つえぇ」


「花は素晴らしい! 姉は!?」


「ヤベェ」


 パン! と片手を打ち合い、ビシッと同時にお姉を指差す!


「「どうだ、まいったか!?」」


「あっはっはー、素晴らしくムカつくコンビネーションだなあんたらコノヤロ」


 だって……ねぇ? わかるでしょみんな。


「あんたらがなんと言おうと、あたしがここで働いてる事実は変わんないよ」


「くそう……世界の終わりか」


「言いすぎだよあんたら……」


 妥当なことしか言ってないと思うけど?


「あら、トメさんにカカちゃんじゃないですか」


 ――と、騒いでるうちに花屋さんの中からサラさんが?


「サラさん! 姉が、姉が花屋です!! どうしましょう!?」


「トメさん。気持ちはわかります。私もショックでした。でもいくら残酷でも真実は真実なんです。受け入れましょう」


「「サラさん……!」」


 そうだよね! サラさん良いこと言う! 私とトメ兄は泣きながら頷いた。


「むぅ……あたしが花屋さんだとそんなに変かなぁ」


 あ、言いすぎたかな。落ち込んだ?


「ま、いいや。サラちゃん、仕事しよー」


 余計な心配だったみたいだ。さすがはお姉。恐竜に踏まれてもビクともしない頑丈さだ。身体も心も。


「はーい。何しましょうか?」


「そこの花材切っといて。フローリストナイフそこに置いてあるから」


「わかりました」 


「あたしはさっき出た分のリボン、作り置きしとくね」


 おお……なんか普通に仕事してる。


「姉とサラさん、か。よくよく見るとベストコンビだな」


「そう? 凸凹にも程があると思うんだけど」


「いいか、カカ。サラさんはいろんな職を転々としてきた。それは多分、生来のドジと運の悪さ、不器用さによるものだろう。でも――よく見てろカカ」


 見る? サラさんを見てればいいのかな。


 ナイフで、えっと、切り花してるのかな? でも手つきがなんだかあやし――あ。サラさんの手が滑っ――


「ぱし、っとな」


「ふぇ、カツコさん?」


「気をつけなー」


「あ、ありがとうございます」


 滑った手を、お姉の手が受け止めた? で、でもお姉――


「よし、できた! これを」


 あ、サラさんが転ぶ――


「がし、っとな」


「おとと」


「気をつけなー。水撒きした後だから滑るよ」


「はーい」


 転びそうになったサラさんを、お姉が腕を掴んで支えた。でも、でもお姉――


「見たか? あの通りサラさんはドジだ。ナイフが滑ったときは手を切るとこだったし、転んだときはあのまま傍に置いてあるでかい鉢に激突しただろう。見た感じ、あの鉢を倒せばドミノ倒しのように店中の花が倒れる」


「それを、お姉が防いだ?」


「そう。サラさんはドジだ。しかし姉の運動能力はそれを遥かに凌駕している」


「……お姉。さっきから離れた位置で仕事してるのに、いざという時は一瞬でサラさんの隣に移動してるよ?」


「ああ。あんなフォローは姉にしかできん。だから言っただろ? ベストコンビだって。これなら致命的な失敗はまずしないだろうな」


 おお……職を転々としていた生活もついに最後になるのかな!?


「それにしても……つくづくお姉ってバケモノだね」


「毎度思うことだがな」


「なのに、なんでトメ兄は普通なの?」


「姉がああなる原因になった訓練を、僕が受けてないだけ」


「なんで受けなかったの」


「そこは僕の意思とは関係ない話だよ。今度母さんにでも聞いてみな」


「ふーん」


 そういえば私も普通だよね。お姉に色々教えてはもらってるけど、あんなにバケモノじゃないし。


 アレはああいうもんだと思って気にしなかったけど。


 お姉はどうして、ああなったんだろう?


 今度、聞いてみよう。




 前回の続き、ですかね。端から見た二人の花屋さんはどんな感じか……ぎゃー! って感じです笑

 でもコンビ的にはご覧の通り、最適な組み合わせだったりします。サラさんはドジを。姉はその修正にかまけて暴走を抑えることができます。


 でも、まぁ。

 カカたちにバレた以上、この花屋さんでも何かやるらしいですけどね、姉は。

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