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カカの天下  作者: ルシカ
51/917

カカの天下51「赤ずきんトメ……や、狼か」

「ねえ、トメ兄」


「……なんだ、カカ」


「どうしてトメ兄はそんなに布団かぶって寝てるの」


「寒いから」


「どうしてトメ兄はこんな時間まで寝てるの」


「具合悪いから」


「どうしてトメ兄はトメ兄なの」


「……ダメなの?」


 なんとなく童話の赤ずきんっぽい会話をしてから、僕はちょっと苦しくなって二、三度セキをしました。


 トメです。なんだか今日は身体の調子が悪かったので、会社を休んだのです。


「むぅ。赤ずきんの狼みたいに襲い掛かってきてほしかったな。ひどいこと言えばそうくるかと思ったのに」


「そんな元気ないもん……」


「まさか普通に落ち込むとは」


「落ち込んでなんかないやい」


 ……そして、学校から帰ってきたカカに絡まれているというわけだ。落ち込んでないよ? ほんとだよ? しくしく。


「撃退用の木刀もちゃんと用意したのに」


「病人に無茶さすな……それ、血みたいのついてるの気のせいか」


「姉から受け継いだやつだから」


「受け継ぐな……そんな物騒なもん」


「これね、『蒼い蠍特攻隊長、死剣上等!』って殴り書きしてあるんだよ、すてき」


「あー、すてきね。ところで死闘とかじゃないのな。しけん、ってなに?」


「高校試験に向けて勉強を頑張ってる時期に使ってたらしいよ」


 マジメなのか不良なのかわからんやつだ。それにしてもだるい。


「とにかく……僕はまだしばらく動けないから、ご飯は適当に済ませてくれ」


「えー……いま家になんもないよ?」


「んじゃサカイさんとこにたかりにいけ」


 あー、だるい。だるくてぶっちゃけたことしか言えない。


「わかった」


 そうして部屋を出て行ったカカを僕は止めなかった。


 ようやく静かになった……と布団を被って。





「ほら、こんな状態なの」


「あらー、それは大変ですねー」


「うん、だからなんか恵んで」


「では、ビタミンをとってもらうためにレモンをあげましょー」





「ほら、こんな状態」


「あっはっは、なさけねーな我が弟!」


「だからなんかちょうだい」


「んじゃ食べかけのビニ弁やるよ」





「ほらこんな以下略」


「わ、お兄さん大変。死んじゃうの?」


「うん」


「大変……じゃ、これあげる」


「……なんでこんなの持ってきてるの?」





 ふと、目を覚ますと。


 ベッドの枕元に、レモン丸々一個と食べかけの弁当と、焚かれたお線香が置いてあった。


 えと……なんのイヤガラセですかこれは……


 お、なんか置手紙っぽいのがある。


 なになに……


『このたびは誠にご愁傷様でした』


 死んでねぇよ。




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