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カカの天下  作者: ルシカ
509/917

カカの天下509「カレーの王子様」

「カーレーでー、なぜ泣くのー、からすぎるっからよー♪」


 かーらーすー、な替え歌です、ごめんなさい……私ですか? その、インド、って呼ばれてます。でも日本人です。偽証じゃないです、ごめんなさい。


 なんだか謝ってばかりですね、ごめんなさい。その、慣れてないもので。


 なんで歌っていたかというとですね、友達と待ち合わせしてるからです。その、なんだか楽しくなって歌ってしまいました。


「まだかな……」


 そわそわしながら時計と人ごみを眺めます。待ってる二人が遅れているわけではなく、私が勝手に早く来ているだけなんですけど……えへへ、待ち合わせって楽しいですね、嬉しいですね。


「まだかな……」


 そうだ、この間にまたメールしようかな。恥ずかしながら私、メル友というものを持っていまして……名前もどこに住んでるのかもわからない女の子なんですけど、いつもの私からは信じられないくらい話すことができる相手で、私はメルちゃんって呼んでます。メルちゃん何してるかなぁ……メールだと本心を出しやすいけど、アヤちゃんとイチョウさんへのメールは、まだここまで気軽に書けな――


「きゃっ」


「いってぇぇ!!」


 携帯に目を落としていたせいで近づいてくる人影に気づかず、そのままぶつかってしまいました!


「ご、ごめんなさ――」


「いてぇ! いてぇぞこのやろう!!」


 ひっ! と、とても怖くて強そうな人……! 学ランが開いてセクシーです、頭がボーンってなってます……!


「おいガキ。てめぇがぶつかってきたせいで足が折れたじゃないかよ!」


 ひっ! と、とても強そうなのにすごく身体が弱い人でした!!


「おい、聞いてんのかてめぇ」


 どど、どうしよう。足が折れたんなら119番……!


「コラ、どこにかけようとしてやがる!!」


 あぁぁ、携帯が取り上げられました!


「そ、その、救急車を……」


「嘘つけぇ! 『11』まで押してあるぞ? 110番にかける気だったんだろが!」


 どうしようどうしよう、この人、頭悪いです。救急車の119番も最初が『11』っていうことに気づいてないです……でも怖くてそんなこと言えないです……


「どう落とし前つけてくれるんだ? あぁん?」


「と、とりあえず……私……カレーしか、持って、なくて……!」


「カネ? おお、カネ持ってんじゃねぇか」


「ち、ちち、違います、その、カレー」


「だからカネだろが! 出せよ!」


 どうしようどうしよう、この人、耳まで悪いです……!


「か、カレー」


「だからそのカネ出せよ!」


 うぅ、これでカレー出したら怒りますよねこの人……でも、でも……私、どうしたら――


 誰か、助けて!!


「ちょっと待ったぁ!!」


 え――本当に、助けがくるなんて。


「俺の前でクラスメイトを脅すとはいい度胸だ!」


「誰だ、てめぇは!」


「聞いていなかったのか? クラスメイト、だ」


 こ、この人は……たしか、いっつも私たちのクラスをあやしげに覗いているタケダ君です! 別のクラスだからクラスメイトじゃない、なんてツッコんだらいけないのでしょうか……


「てめぇには関係ねぇだろが!」


「ふ。学級委員長たる者、学友全てを守るのが使命!」


 い、いつもと違って格好いいです!


「俺ぁな、そいつにカネをもらわなきゃなんねぇんだよ。邪魔するなら殴るぞオラ」 


「いいのか? この俺に手を出しても」


「あぁん? てめぇがどれほど偉いってんだよ」


 い、医者の子供さんとは聞いてましたけど。


「ふっ、俺が偉いかどうかが問題ではない。問題は、俺の病気だ!!」


「はぁ?」


「いいか、俺は心臓の病気で、本当ならば今もベッドで寝ていなければならない状態だ!」


「元気じゃねーか」


「気力だけで生きているのだ! 根性なのだ! だから口先だけは達者なのだ!」


「じ、自分でそこまで言うか」


「まぁ聞け。だから俺の身体は外からの衝撃に非常に弱い。突き飛ばされただけで心臓内の弁が破壊され、緊急手術が必要となるのだ。五分以内に救急車が到着しなければ俺は死ぬ。殴られでもしたら即死かもしれんな――さぁ、どうする? 俺を殺すか? その歳で殺人犯になるか!?」


 すごい……すごい! 医者の子供っぽい……!


「さ、殺人……う、嘘だろが! そんな弱い人間、俺は見たことねぇぞ!!」


「おまえは病院に行ったことがあるのか? そこにはどれほどの小さい子供が病気に苦しんでいると思っている? テレビで外国の子供を見たことは? 疫病に侵された彼らを見たことは!? 貴様が知らないだけで世界は病気でいっぱいなのだ! 悔しかったら赤い羽根募金でもしろ!! 恵まれない子供に愛の手を! 募金おねがいしまーす!」


「く、くそ」


「さぁどうする? 俺を殴るか? 俺を殺すか? 殺人犯で捕まるか!? 吐け、おまえがやったんだろう? 親御さんは泣いてるぞ! カツ丼食うか!?」


「お、覚えてやがれ!」


 わぁ……怖いおにーさんが逃げていく。


「ふぅ、あやしげな声に誘われて駆けつけてみれば、このようなことになるとは」


「あ、あの……」


「大丈夫だったか? たしかノゾミ君だったな」


「は、はい……」


 私の本名、知っててくれたんだ……お、お礼、お礼を言わなきゃ……


「おっと、俺はもう少し用事があるのだ。これにて失礼する」


「あ――」


 私のバカ……いくじなし……


 お礼、伝えられなかった……


 でも……


 格好、よかったな。


「いやー、ごめんねインドちゃん! 遅れちゃった」


「バスが遅れてしまいまして……インドちゃん? どうかされましたか?」


「……王子様……見つけちゃった」


「カレーの王子様?」


「そういうカレーありましたよねー」


 明日、会えるかな。


 ……ぽ。




 さて、いきなりですが。ここれ「あれ? 今日の話って流れ的に○○○の話になるはずじゃ……」と思っていた人がいましたら、「さすが! いつも読んでますね!? よく気づきました!」と褒めたたえるところです。


 どういう意味かわからない人は……まぁ別にそのままでもいいのではないでしょうか笑


 そうそう、今回はタケダの技が光りましたね。基本的に強くないタケダがその弱さを活かし、いざというときにカカを助けられるように編み出した話術「タケダ流脅迫術」です。タケダ流、ってとこがミソですね。

 インドちゃんに使えばこの通りですが、カカに使っても効果は薄そうです。そもそもカカなら自力でなんとかしそうですしね^^;

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