カカの天下502「騒がしい大人たち」
ちっす! テンカだぜ!
いきなりですまねぇな。せーの!
「「「乾杯!!」」」
三つの声とグラスの音が心地よく重なり、オレら飲み会がスタートだ!!
メンバーはこの三人! オレ、姐さん、サカイさんだ!
「んぐんぐ……っぷはぁー!! あっついときに飲むビールは最高だねぃ!!」
「うんうんー。ささ、料理は何を頼もうかー」
「サカイさんの好きなのでいいぜ。オレはなんでもいいから」
「あたしも! メインはビールだぜぃ!」
「じゃあじゃあ……明太子食べたいな。このメンタイ出し巻き玉子、頼んでいいですかー?」
ピクリ、と姐さんの耳が動く!
「ヘンタイだし巻きとな!?」
「おし、頼め! めっちゃ食ってやるぜー!」
「ち、違いますよー。メンタイコです」
「ヘンタイの子とな!?」
「おしおし頼め! めちゃくちゃにしてやるぜ!!」
「だから違うんですってー!」
初っ端から飛ばしまくるオレたちにサカイさんはたじたじだ。ま、酔いが回ればすぐにテンションが追いついてくるだろうがな!
「さてさて、適当に頼んだところでー……いきなりですが、本題にいきましょうかー」
あん? なんだそのキラキラした目は。
「そうそ、今日の飲み会の肴の目玉はもちろん! テンちゃんの見合い話だよねー」
そうなるだろうとは思ってたがな。
「あんま話すことなんかねぇぞ? 大体のことは姐さん知ってるだろが」
「私もサユカちゃんから色々聞いてますから、一応知ってるんですけどねー」
「あ、サカイさんだろ、カカたちを乱入させたの! 結果的には助かったからいいけどよ」
「えーえー、感謝してください。そしたらまたちょっかいかけてあげますからー」
いや、少しは自重してください。
「それで、それで? どうなのよ」
「何がだよ、姐さん」
「うちの弟、どうよ? イカスでしょ?」
「別にトメと見合いしたわけじゃねーだろ」
「でもでもー、似たようなものだったんじゃないですかー?」
そりゃまぁ、彼氏役やってもらったわけだし、似てなくもねーけどよ。
「あの子、きっとテンちゃんみたいなタイプ好きだよ? なにせあの子の初恋相手ってのがさ、自分のことを『オレ』なんて呼ぶ男勝りな女の子だったっていうんだよ!? ほら、テンちゃんにぴったり」
それアンタのことでしょが、どう考えても。
「ちなみにカツコちゃんの初恋は誰だったんですかー?」
お、それはオレも興味あるぞ。
「あっはっは! これが笑っちゃう話でさー。トメなんだよ」
……は?
「一時期、トメが弟だなんて知らなくてさー、それでもずっと一緒だったからつい好きになっちまってねー。ま、昔の話だがね」
……驚いた。小さい頃は相思相愛だったんだな二人とも。
「ま、あたしの話はいいさね。テンちゃんどうよ、うちの弟をもらうつもりはないかい?」
「テンカちゃんもついに結婚ですかー」
「子供は六人!? いやー子沢山」
「がんばりすぎですねー。というか好きですねーふふふ」
「勝手に話を進めんな!!」
ったく、この人らは酒が入るとどこまでも行くんだから……オレも人のこた言えねぇが。
「オレは今は教職に精一杯でな、んなこと考える余裕はねーよ。それはトメも同じだろ?」
「あー……弟君、カカちゃんに精一杯だからねー」
「親代わりみたいなものですからねー。育児できるのは羨ましいですけど、やっぱり大変なんでしょうねー。カカちゃん可愛いし」
「そうそう、カカちゃんが可愛いのが問題なのよ。おかげでトメは骨抜きさ」
「だろ? ま、オレがトメとどうにかなるとすりゃ、まずカカが心配ないくらい成長しないと無理だな」
「カカちゃんが成長ねぇ。彼氏でも作らすか?」
「いいですねー。誰かそれっぽい子はいないんですかー、先生」
カカに似合う男ねぇ……
「んー……タケダくらいかなぁ、一番可能性ありそうなのは。少したきつけてやるか」
「お、カカちゃんに彼氏が! こりゃめでたい!」
「カカちゃんもついに結婚ですかー」
「子供は上に女の子、下に男の子が一人ずつ!?」
「よくある理想図ですねー」
酒にまかせて暴走する二人の戯言を聞き流しながら、オレはふと考えてみた。
トメと……そういう可能性はあるのかどうか。
んー……
正直、あるかもしれねぇな。
でも、ま。オレはそういうの慣れてないしな。あいつも絶対に慣れてねぇし。
この後どうなるか、時間が経てばわかるだろ。カカが成長して、オレもトメも成長して……話はそれからってことで。とりあえず目先のことで精一杯だからな、オレたちは。
ゆっくり行こう。焦るよりそっちのほうが楽しいさ。
「……っと、ボーっとしちまってた。おい、何して遊んでんだ。オレも混ぜろよ」
気を取り直して姐さんとサカイさんに声をかけると、二人はそろってこう答えた。
「「いまね、テンカちゃんごっこしてるの」」
……オレごっこ?
「おらおら、宿題やれ! あん? 答えあわせ? おれはしねーよ、てめぇでやれ!!」
姐さん……どこで見てたんだその場面。
「おらおらー、泣け! わめけ!」
サカイさんや。あなたの中のオレはどうなってんだ?
「ふははは! ここはおれの天下だ!! 有り金を置いてさっさと帰れ!!」
オレ、いつそんなこと言った?
「文句があるのかね? 貴様はテンカ王の前にいるのだぞ! ひざまづけ! 命ごいをしろ! 小僧から石を取り戻せ!!」
「サカイちゃん、それ違う人の真似になってるから」
「目がぁー、目がぁー!!」
メガ楽しいこの人たち。
「四十秒で飲み干しな!!」
「そーれ一気! 一気!!」
何がどうなろうと、この人らと一緒にいれば楽しいんだオレたちは。絶対。
でも一気飲み連続は勘弁な。
書いてから思いました。
飲み干すのに40秒って……
長いしっ!