カカの天下501「夏の音」
「あーづーいー」
「言うな、もっと暑くなる」
ども……妹をたしなめつつもグッタリしてるトメです。
ようやく梅雨も終わったかなーと思った矢先、猛暑ががっつり襲い掛かってきました。あまりの暑さに汗がダラダラ身体はグダグダ。カカと二人して居間で寝そべっています。
「扇風機じゃ足りない……クーラーほしいよトメ兄」
「ダメだ……今までだってそれ無しでやってきたんだ。だから今年も……」
そう、うちにはクーラーがない。それというのも僕らの両親の「夏は暑いもの、冬は寒いもの」という教育方針(?)のせいだ。あの人たちはなぜかエアコンを嫌うのである。身体によくないとか言って……コタツや扇風機はいいらしいけど、その基準がよくわからん。
「もう限界だよー。地球は日々暑くなってるんだよ? そろそろ買ってもいいじゃん」
「それはもっともだけどな……」
金はあるくせに高い買い物をなかなか許さないうちの両親がどう言うか……なんにせよ今すぐ決められる問題じゃない。
「クーラーほぢー」
カカには悪いが諦めてもらおう。
「なぁ、カカ。クーラーから出る風あるじゃん?」
「うん、いいよねあれ。涼しくて。夏には神風だよ。『神様がくれた風』を略して神風だよー」
「あの風は全部おならだ」
あ、カカが凍りついた。いいなー涼しそうで。
「……あの、神風が?」
「ああ、神様のおならだ」
「……クーラー……いいや」
説得完了。ごめんな神様。
「よしよし、その扇風機で我慢しろ」
「おー、あいらぶ、せんぷーきー」
暑さで溶けかかっているような声を出しながら扇風機に抱きつくカカ。おいこら僕のほうに風こないだろ、それだと。
「せんぷーきー、せんぷーきー……ね、トメ兄。せんぷー機ってさ、千回プープー風をくれる機械だからせんぷー機なのかな」
「違うと思うが……どうでもいいけどプープーってそれもおならみたいだな」
「……せんぷーき、いいや」
ぽい、と抱きついていた扇風機を投げ捨てるカカ。
よし、これで千のプーは僕のものだ。はー……涼し。
「あぢー……」
しまった。そんなことしてたらカカが干物になってしまう。なんとかしないと……
「……トメ兄、涼しくなる質問をします」
「おお、言ってみろ」
「世界三大美女とは誰のことを指すでしょー?」
「えーと確かクレオバトラーと」
「どこのバトル野郎ですか」
クレオパトラだっけ? いかん、暑さで脳がやられてる。
「世界三大美女、正解はー、私とサエちゃんとサユカンでした」
「それは寒いギャグだ」
「でも暑いね」
「ああ、暑いな」
意味ねー。
「じゃー姉とテンカ先生とサカイさんが本当の世界三大美女」
「もっと寒いな。むしろ三大珍女だ」
「三大珍味みたいだね」
「言い得て妙だ」
「でも暑いね」
「ああ、暑いな」
ダメだこりゃー。
「よし。カカ、外に出よう」
こういうときは家の中よりも外のほうが涼しかったりするもんだ。
「あぢぃぃぃ」
するもんだけど暑いのは変わらない。
「トメ兄……アイスほしい」
「僕もほしくなってきた……しかし」
まだ夏も始まったばかり。いきなりそのような贅沢をして教育的にはいかがなものか?
ここで僕がアイスを買ってやるとする。
→するとカカが贅沢を覚える。
→そして後々にカカは家の金を盗み出し、全て使ってアイスを買ってしまう。
→アイスに塗れて僕らは氷付けになり、冷凍保存され……溶けるころには未来の世界へ。
→そこには人間はおらず、ケロリンしかいない。
→ケロリン化。両生類。鳴き声はケロリラリン。
「いかん!!」
なんとしてもアイスを買わせないようにしなければ!!(注、暑さで頭がやられています)
「カカ、アイスが何の略か知ってるか?」
「知らないー。どうでもいいからアイス食べよう、かじろう、なめよう」
「アイ、その英語を訳すと『目』だ。つまりアイスはな、目玉で作った酢の塊なんだよ」
「……つまり?」
「あれは全部ナニカの目玉だ」
「アイス……いいや」
さすがにぎょろっとした目玉をかじったり舐めたりするのを想像するのは気色悪かったのだろう。カカは顔色を悪くして遠慮した。
……って、あれ。顔色が悪いのはもしかして暑すぎるせいか。そういえば反論がないのも暑さで弱っているからか? なんでもかんでも禁止して倒れたら元も子もないな。ここは何かジュースでも買って――お?
いいものめっけ。
ちりーん。
「涼しくなった気がする」
「やっぱ夏は風鈴だよな」
灼熱だったはずの我が家は、涼しげな音を響かせるだけで全然違う世界になっていた。
「ケロリンの可愛い風鈴があってよかったね」
「おまえケロリン好きだよな」
「忘れたの? デンジャーケロリンって、元はサエちゃんが考えた街の名物なんだよ」
「そういやそうだっけ。カカがお気に入りにするわけだ」
ちりりん、と綺麗な音を出す、まぬけなカエルを眺めながら。
今年の暑い夏も、涼しく楽しく乗り切れたらいいなー、なんて思うのだった。
「ね、トメ兄。ケロリン風鈴の鈴って、ケロリンの身体の下についてるんだよね」
「ん、ああ。そうだな」
「じゃあもしかして、この音ってケロリンのおな――」
「待て! そろそろその考えから離れないと、おまえ何もできなくなるぞ!」
……ほんと。暑さにやられないように、気をつけながら乗り切ろう。
「あ つ い」
これ、今回のサブタイトルのボツ案です。
だって今日暑かったんだもん!!! あまりにあんまりなんでボツにしましたが笑
どうでもいいですがうちにはクーラーがあります。でもつけません。我慢できるうちは意地でもつけません。根性でどうにもならないときのみ使用します。
なのでトメ家にもクーラーはつけてやりません(私怨
……え? 記念すべき501話目がこんなんでいいのかって?
特別っぽいのは散々やったし、いーんです。これがカカ天です笑 ゆるーく涼しくいきましょう^^
……暑いけど笑