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カカの天下  作者: ルシカ
50/917

カカの天下50「はむはむかみかみ」

「チョコが食べたい」


「あっそ」


 夕食後、ふと思いついたように我が妹カカは言いました。そして僕、トメはめんどくさげに相槌をうちましたとさ。


「食べたいの」


「あーそう」


 繰り返し言ったカカに、またしてもだるそーに相槌をうつ。


「た、べ、た、い、な」


「あ、ら、そ、う」


 なんかゆっくり言ってきたからゆっくり言い返した。


「たーべたいな、たべたいなー♪」


「あーそうですか、そうですかー♪」


 なんか歌ってきたから歌い返してみた。


「食べてーんだってばよ」


「そうかいってばよ」


 なんかてやんでぃだからてやんでぃ返してみた。


 なんだこのやりとり。


「で、なんだ突然」


「だから食べたくなったんだってば、チョコが」


「夕食おわったばっかだろ」


「デザートという文化がありますね」


「あーそうですね、そういうお金持ちの文化がありますが、それがなにか?」


「気分だけでもお金持ちになろうよ」


「そのお金持ち気分のせいで貧乏になったら本末転倒だ」


「それでも使ってしまうのが人の常だよ」


「む……まぁ、そう、だが」


 小学生に言う言葉じゃない。またタケダ君の入れ知恵か。


 嫌い嫌いと言ってるわりには言葉は聞いてるんだな……まぁ珍しい言葉がおもしろいからだろうけど。


「で、今からチョコを買いにいけと?」


「うん。ごー!」


「お小遣いあるだろ? 自分でいけよ」


「子供に夜道歩かせる気?」


「こんなときだけ子供ぶるんか」


「私子供だもん。税金払ってないもん。胸ないもん。生えてないもん」


「生えてないとか言うな」


「じゃボーボー」


「そうじゃなくてね」


 ……いい性格してるよ、あの姉みたいに。


「てかさ……太るぞ? こんな時間に食べると」


「子供がそんなこと気にするもんじゃないよ」


 普通なら大人が子供に言うようなことを、なんでこのお子様はいつも自分で言うんだろう?


「あのね、普通の板チョコでいいの。私これから勉強するからさ、その前に頭はっきりさせておきたくて」


 む……甘いものを食べて脳の疲労をとってから勉強する、というのは僕もやっていたことだ。勉強という言葉を聞かされては教育上協力すべきではあるまいか。いや、しかし。


「食べないとできないのか?」


「できないわけじゃないけどやる気でない→頭に入らない→テスト点悪くなる→いらいらする→トメ兄かじる→ヒャッフー!」


 なんてわがままな連想ゲームだ。


「なんでかじるの」


「チョコかじりたいから代わりに」


「おまえはケモノか。あとヒャッフーってなに」


「変になるの」


 おまえはいつだって変だよ。誰かなんとかしてくれ。チョコやるから。


「じゃあ、チョコだけに甘がみならいい? はむはむと」


 想像してみた。


 甘がみって……耳とか?


 危険にもほどがある!!!


「……あー、わかったよ買ってくるよ」


「なんで顔赤いの?」


「赤くない!!」


「タコみたいだよ」


「ならタコでも食べてろっ」


「タコみたいなトメ兄を食べるの?」


「だから僕を食べるな!」


「じゃ舐める」


「兄妹でそんなことしちゃいけません!!」


 ……はっ。いかんいかん。なんか前後不覚に。


 まぁ、なんにせよ結局折れました。


 なんだかんだで妹が可愛い、いいお兄ちゃんな僕でしたとさ。




 で、買って帰ってくると。


「寝てやがる」


 可愛さ余って憎さ百倍でしたとさ。


「……結局勉強しないんかい」


 確かに九時寝るのは子供っぽいけどさ。


 とりあえず僕は無駄な行動が虚しくて、なんとなく買ってきたチョコをかじりましたとさ。


 ……甘がみで。




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