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カカの天下  作者: ルシカ
499/917

カカの天下499「みんなの詰め合わせ、そのに」

 ――今日のイチョウとインドとアヤ。


 どうもごきげんよう、イチョウです。


 今日はアヤさんとインドさんの三人で、初めて外で待ち合わせしています。少々早く来すぎてしまったようなのですが……あ。お二方とも、ちょうどよくいらっしゃいましたね。


「やっほー! 待った?」


「……そ、それほど、でも」


「インドちゃんに聞いたわけじゃないんだけど」


「……ぽ」


「言ってみたかったんですよね、インドさん」


 こくこく、と頷くインドさん。最近一緒にいることが多くなってきたおかげでしょうか、だんだんと仰りたいことが理解できるようになってきました。友人として、とても嬉しく思います。


「変なこと言いたがるのね。まぁいいわ、どこ行こっか?」


「その前に、その、これ」


「あら、なんでしょうか」


 インドちゃんがおずおずと差し出されたのは……お菓子ですね。生チョコのような形です。


「わたくしたちにですか?」


「作ったの……食べて」


「あれま! あのカレー漬けのインドちゃんがお菓子とな。めずらしー!」


「でもあれだけ美味しいカレーをお作りになられるのですから、きっと美味しいのでしょうね!」


「「いっただきまーす」」


 わたくしとアヤさんは二人そろってその可愛らしいチョコを口に入れました。


 チョコの味ではありませんでした。


 カレーの味でもありませんでした。


 チョコとカレーを合わせようとして失敗した何かの味がしました。


「……おいしくない?」


 わたくしもアヤさんも必死に弁解しようとします。しかし舌がぴりぴりして思うように喋ることができず、その様子だけでインドさんは察したようでした。


「おいしくないんだ……」


「ヴぁ、ヴ……けほんけほん! あーあー、テス、テス……こほん。えっと、で、でも喉がいい感じかも! 歌がうまくなったみたい!」


 ああ、見事な切り返しですアヤさん! 味を褒めるのは不可能と悟り、別の方面で褒めるつもりなのですね!


「歌ってみるわよ、いくわよ!」


 ほげぇぇぇぇぇぇぇぇ!!


「……どヘタ」


「しみじみ言わないでぇ!! ヘタになったのよ! あ」


 うりゅ、と涙ぐむインドさん!


「あなたのせいじゃないですよ! だから、ね? 泣かないで」


「でも、でも……アヤが使いものにならなくなった」


「どーゆー意味よ!?」


「歌しか能がないのに……それが……」


「ムキー!!」


「ふ、二人とも落ち着いてくださいまし!」


 このままずっと大騒ぎでした……


 でも雨が降り始めて、たまたま傘を持っていたのがインドさんだけで。


 三人でぎゅうぎゅうと押し合いながら傘に入っていると、なんだかんだで仲良くなれた気がしました。


 そんな一日。




 ――今日のタケダとニシカワとテンカ。


 どうも、ニシカワです。


 今日の授業はもう終わったはずなのに、なぜか学校にいます。それというのもタケダに捕まってしまったからでして。


「なんで僕が……」


「そう言うなよニシカワ! 相談に乗ってくれる人間は多いほうがいいのだ」


 どうやらタケダはテンカ先生に相談があるようで、先生の手が空くのを待っているらしい。それに僕にも付き合えと言ってきたのだ。


「俺たち、友達だろう?」


「そんな妙なモンになった覚えないけど」


「……それだ。なぜ皆、俺にそうやってキツイことばかり言うのだ!?」


 あぁ、なるほど。最近クラスで広まってる噂について相談したいのか。


 曰く『タケダは罵られると喜ぶ。イライラしてる人は解消にぜひどうぞ』というもので、タケダはことあるごとに「タケダ、邪魔」とか「タケダ、臭い」とか「タケダ君の仕事ぶりって異様だよね。このバケモノ」とか言われてる。流行に乗って僕も冷たくしてみたんだけど。


「だいたいだな、道をふさいでいて邪魔だったのはわかる。しかし臭いとは何だ。どこが臭いのか聞いたら足の裏だと? 足の裏が臭くないヤツなどいるのか。足の裏から森の香りがしたら逆に怖いだろうが。まったく……」


 そんな噂を知ってか知らずか、タケダはご立腹だ。うーん、テンカ先生がどういう反応するかは気になるし、どうせ暇だし、家に帰るの面倒だし。もうちょっと付き合うかな。


「おう、待たせたな」


 おっと、ぼそぼそ話してるうちにテンカ先生の登場だ。あらかじめ話は通していたらしい。


「テンカ先生! 話を聞いてもらえますか?」


「ああ、めんどーだが仕方ねぇ。さっさと言ってみな。どーせくだらねぇことなんだろ?」


「あああ! テンカ先生まで俺に冷たい!!」


「タケダ。それ先生の地だから」


「ん、ああ。それもそうか……そ、それでですね。相談というのは他でもなく!」


 タケダは自分がいかに虐げられているか熱く語った。


「――と、いうわけで! 俺はいわれのない中傷を浴び続けているのです! どう思いますか!?」


「確かに足の裏から森の香りがしたらイヤだな」


「そこが論点ではなくて!!」


「は? だっておもしろい部分はそこしか無かったぞ」


「楽しんでほしいわけでもなくて!!」


 タケダは半分泣きそうだ。そんな様子を見て先生がニヤリと笑うのを、僕は見逃さなかった。


「先生……僕、聞いたんですけど」


「あんだよ」


「先生、この間のお見合いのときにこう言ったそうですね? 『生徒をバカにするな。許せない』って」


 お見合い時にあった先生の武勇伝は、伝道師カカによってすでにクラスメイト全員の知るところとなっている。別にタケダをどう言おうと僕は構わないんだけど、なんとなく気になったので聞いてみたのだ。


 するとテンカ先生はあっけらかんと答えた。


「オレはいーんだよ」


 テンカ先生はやっぱりテンカ先生だなぁ、としみじみ思った。


「テンカ先生って……カカ君と似てるよな」


 何か思うところがあるのかそう呟くタケダ。それはともかく、彼はその後もからかわれるばかりで悩み事の解決には全く届かなかったという。


 そんな一日。




 ――今日のキリヤとクララとシュー。 


 どうも、キリヤです。


「そこの男! 速やかに投降しなさい!!」


「はっはっは! 学校はすでに卒業しています!」


「それは登校!!」


「綺麗な人ですよね!」


「それはトウコさん!! って誰だ!?」


 ノリのいい警官ですね。楽しい限りです!


「きゃー! たすけてー! いろいろされるです!! めくるめく世界でいろいろめくられるですー!!」


 小脇に掴んだクララちゃんが叫ぶ。


 もうおわかりですか? そう、私は今、クララちゃんを誘拐しているのです! そして偶然にも犯行現場は交番前! そこにいた警官三人は大慌てで私を追っているのです!


「逃がさんぞ! 俺の管轄で幼女誘拐などさせん!」


「給料が下がりますからね!」


「いろんな人に頭も下がりますからね!」


「はっはっは! 最近の警察ときたら! もうちょっとマジメにやったらどうですか!?」


「「幼女誘拐してるおまえが言うなあああああ!!」」


 心地よい怒声をあびながらだっしゅ、ダッシュ、ダーッシュ!


「きゃー、めくられるです、スカートめくられるのです! でもクララ今日スカートじゃないです」


「珍しいですねぇ」


「サエおねーちゃんが買ってくれました。にくやだからって」


「肉屋? ……ああ、にーきゅっぱ、2980円ってことですね」


 呑気に会話していると、後ろの警官たちが何やら大慌て。


「おい、聞いたか? 身代金は2980円らしいぞ!」


「おまえいくら持ってる!?」


「ぐっ……1000円ちょっとしか」


「俺もだ……」


 貧乏ですねここの警官は。まぁどうでもいいです。


「はっはっは! 捕まえてごらんなっさーい」


 しなを作ってピョンピョン跳ねながら逃げていると、


「確保!」


 あっさり捕まっちゃいました。子供一人抱えてるんですから当然ですね。


「いたた、そんなに強く掴まないでくださいよ」


「うるさい! 貴様、自分が何をしたかわかっているのか!?」


「ええ、幼女誘拐ごっこです」


「「……ごっこ?」」


 ぐるりん、と首を回してクララちゃんを見る警官。


「はい、クララ楽しかったです! またやりましょう」


「「もうやるな!!」」


 おお、なんと息のあった警官たちでしょう。これならこの街も安泰ですね。


「人騒がせな! しかし君には一応、事情聴取させてもらうからな!」


 タチの悪い遊びですからね、それは当然でしょう。


 でも面倒なので。


「え、でもこの遊びはシューさんの公認だって聞きましたが」


 ぐるりん、と再び首を回した警官の視線が捕らえたのは……ゼーハーいいながらようやく追いついてきた警官。あれがシューさんですよね、たしか。


「シュー……またおまえ絡みか」


「なんでおまえの知り合いはこう面倒ばかり起こすんだ!? 来い、たっぷりしぼってやる!」


「はぁ……はぁ……へ? あ、あの? なんのことですか、え、ちょ、痛っ、引っ張らないでええええ」


 警官二人に引きずられていくシューさん。おお、カカちゃんの言ったとおりだ。「こうすれば危険な遊びもできるよー」なんて言われて半信半疑だったのですが。


「キリヤ、次は殺人事件ごっこがいいです」


「はっはっは、本当に殺すのは無しですよ?」


 良い子も悪い子もマネしちゃダメですよ。


 そんな一日。




 ――今日のセイジとトウジとミナミ。

 

「せまいぜ、兄貴」


「うるせぇ、仕方ねぇだろ傘が一本しかねーんだから!」


「傘ならもう一本姉貴が持ってるだろ!」


「じゃあトウジ、おまえ言ってこいよ」


「やだ。こえぇ」


「俺だってこえぇ」


「なんか言ったかい? バカ弟ども」


「「いいえ、滅相もない」」


「ふん、やれやれ……ケンカばっかりな二人にはこんくらいがちょうどいいのさ。せいぜい雨の降ってる間くらいは仲良くするんだね」


「兄貴、変なとこ触るな」


「恐ろしいことを言うな」


 仲良く相合傘なおっさんたち。


 そんな一日。




 ――今日の校長と教頭。


「校長、前から気になっていたのですが」


「おほほ、なんですか教頭」


「校長は完璧に仕事をこなされますよね」


「朝飯前ですよ」


「校長はいつ仕事しているのですか?」


「朝飯前ですよ」


「ああ、私と同じですか。ちなみに朝は何時に起きられますか?」


「おほほ、三時です」


「私は四時です。負けました」


「勝ちました。というわけでこの西田屋のシュークリーム、一つ多くいただきますね。おほほ」


「悔しいですな」


 そんな一日。




 ――今日のタマ。


 部屋の中。でんぐりがえってゴロゴロゴロゴロ……壁に激突。


「ぼーりんぐ」


 そんな一日。




 ――今日のトメ父とユイナ。


「わたし……あなたのことを、愛しています」


 我が妻はそう言った。


 俺ではない、別の男に向かって……


「くそぅ、あの男め!!」


 いくらドラマの収録で相手が男優とはいえ、許せん!


「嫌がらせの手紙を書いてやる……男からのラブレターなどいかがなものか」


 せっせと書き溜める。


 そんな一日。




 ――今日の総理大臣とラスカル。


『今日の俺は輝いてるぜ!』


『どこが?』


『鼻が』


 猫は湿ってるからね。


『あたしだって輝いてるわよ!』


 犬も湿ってるからね。


 そんな一日。




 詰め合わせ。いろんな味を楽しんでいただけたでしょうか?


 さてさて、明日はついに500話です。同時に人気投票の〆切りです。

 〆切り時間は例によって16時とします。


 ――ちょこっと小耳に挟みますと。


 ……トップ三人。今のところほとんど差がありません。好きなキャラを一位に導くのはあなたかもしれない!

 ふるってご投票ください^^

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