カカの天下498「みんなの詰め合わせ、そのいち」
――今日のトメとサユカ。
どうも、トメです。
今日のお仕事も終わり家に帰ってきてみると、待っていたのはいつもの妹――ではなく、なぜかサユカちゃんでした。
「カカすけとサエすけがデートしに行ったので、仕方なくお留守番ですっ!」
「……はぁ」
久々に変な気を利かせたのか、単に自分がサエちゃんと二人きりになりたかっただけなのか……どっちにせよ、まったくうちの妹は……
「夕飯の支度までゆっくりしようと思ってるけど、どうする?」
「遊びましょうっ」
「何して」
「にらめっこがいいです!」
また懐かしい遊びを持ち出してくるもんだ。でも暇だし、いっか。
「にーらめっこしましょ」
「あっぱっぱーっ」
あっぱっぱー? なんかバカっぽいな。
まぁいいや、とにかく笑わせないと。どんな顔しよっかなー……ん?
「トメさんと見つめ合ってる……幸せ……にゃはーん♪」
「はい僕の勝ち」
「にゃああああっ!?」
即行で笑ってたし。というかニヤけてたし。
「もう一回、もう一回ですっ」
「はいはい……にーらめっこしましょ」
「あっぽっぽー」
あっぽぅ。りんご食いたいな。
「……にゃーん♪」
「勝った」
「にゃあああああっ」
またニヤけてるし。何がそんなにおもしろいのやら……って僕の顔か? まさか。
「もう一度ぉっ」
「い、いいけど」
数秒後。
「わぉうん♪」
今度は犬になった。
「もう一度ですっ!」
この子、楽しそー。
あとさっきも思ったけど。
僕ら、バカっぽいなー。
でも。
「じー」
「きゃわわんっ」
「じー」
「がぉーんっ」
「じいいいい」
「ぱおーんっ」
楽しい、どこまで進化していくのだろう。もうちょっとこの面白い子で遊ぼ。
「しゅわるつねっがああああっ!!」
「いや待てどんな進化したんだよ!? しかし久々に聞いたなソレ!」
そんな一日。
――今日のカカとサエ。
どうも、カカです。
「今ごろサユカちゃん、うまくやってるかなー」
「大丈夫でしょ。最近あの二人、普通に仲いい感じだし」
「普通すぎてつまんないかもー」
「お、じゃあまた何か考えよっか」
サエちゃんと楽しくデート中。商店街を楽しくブラブラして、そろそろ家に戻ろうかと思ったとき。
「あ。雨が降ってきた」
「傘を持ってきてよかったねー」
雲行きが怪しかったので、私もサエちゃんも自分の傘を持ち歩いていたんだけど……
「傘ささないとー」
自分の傘を見つめる。取っ手がお洒落な、お気に入りのデンジャーケロリンの傘……
ごめんね、ケロリン。
「ふん!」
ボキ!!
ケロリンの断末魔の叫び声が聞こえた。
なぜかコケコッコーだった。
……なぜ?
「どうしたのーカカちゃん」
「傘が雨で壊れちゃった」
「……槍でも降ってきたのー? それに今、カカちゃん『ふん』って言わなかった?」
「それはくしゃみだよ」
む、鼻がむずむず。ほんとにくしゃみでそう……
「はくしゅっ……ふん!!」
「あきらかに不自然だよー」
「いいの! とにかく傘が壊れたからそっち入れて!」
「うん、いいよー」
よし、相合傘げっと!!
濡れないようにぴったりくっついて。
「あーいあい♪」
「あーいあい?」
なぜかお猿さんの歌を口ずさみながら、家まで至福の時間を過ごすのでした。
そう、ぴったりくっついて……
ぴったり……
ぐい。
ぐいぐい。
「カカちゃん、そんなにくっつかなくてもー」
ぐいぐいぐいぐい。
「……もしかして道端の川に落とそうとか思ってるー?」
バレたか。
「や、ほら。水も滴るいい女になるよ?」
ぐいぐいぐいーってあれ、今度は私が押されてる?
「じゃーカカちゃんは血も滴るいい女になるねー。赤だしぴったり」
「車道!? 車道に落とそうと思ってますかサエちゃん!?」
ぐい……ぐい……!
大いなる至福の時間は、なぜか押しくらまんじゅうっぽい時間になってしまった。略して大福VSまんじゅう。
傘を中心として互いにぐいぐい押し合う二人。変なの。
でも、これはこれで楽しい。
そんな一日。
――今日のカツコとサラ。
どうも、サラです!
「新人です、よろしくお願いします!!」
ついに新たなお仕事を見つけ、意気込みながら先輩に挨拶した私です! でも……でも……
「あれ、サラさんじゃん?」
「な、なぜあなたが、ここに?」
そこには驚くべき人の姿がありました。なんと……トメさんとカカちゃんのお姉さんが!!
「なんでって、あたしもここで働いてるからだけど」
「でも……でも……あの」
お姉さんとの交流はそんなに多くはないけど、少しはありました。この人がどんな人か、大体わかってるつもりです。
でも――いいえ、だからこそ! この人がこんなところで働いてるなんて想像もつきませんでした!
「なにさ、言いたいことがあったらハッキリ言いなよ」
「だって、ここ……花屋さんですよ?」
「そだね」
「なんであなたがいるんですか!?」
「あんた失礼だな」
だって、だって! すごく普通の仕事じゃないですか!?
似合いません!
「てっきり私、怪獣とかしてらっしゃるのかと」
「それ仕事違う。まーあたしだって似合わないのはわかってるさ。でもこの仕事だと重宝されるのよ。花の種類とかで」
「え、もしかしてお花の種類、全部覚えてるんですか?」
「んーん。でもわかるの」
「……ど、どういうことですか?」
「や、ほら。あたしって動物とか植物の声わかるから」
「なぜ!?」
「さー? あ、いらっしゃいませ」
巨大なハテナマークを頭上に浮かべる私に構わず、接客を始めるお姉さん。そしてお客さんがほしいと言ったのは、聞いたことのない花の名前。カタカナが並んでさっぱりです。
そんな難解な花の名前を聞いたお姉さんは、ザッと店内を見渡しました。
……あれ?
あれれ?
見間違いでしょうか。
今、一つの花がピクリと葉をあげたような?
「これですね」
……挙手? もしかして『それわたしでーす』って挙手したんですか!? う、嘘ですよね、偶然ですよね? たまたま風が吹いただけで……ってここ店内ですし!?
「ありがとうございましたー。ん、どしたのハナちゃん」
「サラです!!」
「え、花屋さんやるからてっきり」
ま、まぁいいです。ちゃんと仕事もできる先輩っぽいですし、仲良くしていきましょう!
それにしても……世の中、フシギがいっぱいです。
そんな一日。
ちょっとした一日。みんなは何をしてるんだろー的な話です。
今日はいつもの主要メンバー+姉とか。明日は他のメンバーいきます。なるべく皆を出してあげたいですが、まーあぶれた人がいたらごめんなさい笑
もうすぐ500。
ちょっと感慨に耽りながら、特別なような、なんでもないような、そんなみんなの一日を書こうと思います。