カカの天下496「呼ばれたのでついてってみた」
こんにちは、カカです。
突然ですが聞いてください。今ですね、日曜日で学校もお休みなのでお昼からファミレス東治にいるのですが……すごいメンバーでお食事なのです。
その驚きのメンバーは……まず私。
次にクララちゃん。
さらに、秘密だけど実はそのお母さんの校長先生!
そして……なんとデストロイヤー教頭!
なんてフシギな四人組でしょうか。や、元々はクララちゃんと校長先生の親子二人で食事するところだったんだけど。
「本当によかったのですか? 私などがご一緒して」
「そうそう、二人でデートだったんじゃないの?」
道端で偶然出会って誘われた教頭と私は、そろってたずねてみる。すると二人はにこやかに笑った。
「おほほ、全然構いませんよ。食事は多いほうが楽しいですし」
「クララもお母――じゃなくて校長と同じでそう思います。それに、せっかく会ったのに誘わなかったら体裁が悪いのです」
く、クララちゃん。相変わらず変なとこ大人だね。
「失礼いたします、こちらご注文のビーフシチューでございます」
「あ、私だ」
キリヤン登場だ。手を上げてこっちに料理を持ってきてもらう。
「はいどうぞ、シチューでございます」
「私の可能性は無限大。まるで?」
「宇宙でございます」
「イェイ!」
「アイウォンチューでございます」
「恋人同士でするのは?」
「ブチューでございます」
「二人はそれに」
「夢中でございます」
グッ、と親指を立てあう私たち。キリヤンは満足げに去っていった。
「な、なんだねカカ君。いまのは」
「挨拶みたいなもんです」
「そんな挨拶をしなければならないのですか!? む、難しいです」
「おほほ、楽しい子たちだこと」
お、また料理がきた。
「失礼いたします。こちらのお子様ランチは」
「クララちゃんだよ」
「かしこまりました。はいどうぞ」
えっと、えっと……と頑張って挨拶しようとしていたクララちゃんは結局、
「イェイ!」
「イェイでございます」
グッ、と親指を立てあう二人。
「クララできましたか?」
「うんうん、できたできた」
微笑ましく笑いながら拍手なんかする私たち。うーん、まったりー。
その後も校長と教頭の料理が届いたけど、二人ともこの挨拶はしてくれなかった。年長者にはレベルが高かったかー。
――と。食事している最中に近くを通ったキリヤンを、突然クララちゃんが捕まえた。
「はい、なんでしょうかクララちゃん」
「クララ、キリヤのこと好きです」
いきなり何を!?
「はっはっは、仕方ありませんね。少々お待ちください、サービスしてあげましょう」
おお。
「こう言うとお菓子くれるです」
「クララ君、その歳でもう魔性の女か!」
末恐ろしい……さすが実年齢も魔性なだけはある。見習おう。
「はい、どうぞクララちゃん。プリンをパクってきました」
パクったってあんた。
「マダム、あなたにも」
「あらあらおほほ、わたくしも貴方が好きになってしまうわ」
「光栄です、もっとサービスしましょう」
ザッと身を翻し、厨房へと戻っていくキリヤン。仕事しなくていいのかな。
「わたくしでもイケるみたいですわね、おほほ」
「キリヤは女ならなんでもいいのです」
「では私では無理か。残念だ」
試すつもりだったの!? 見たかったのに……
や、見たい。
「いきましょうよ教頭」
「む、いやしかし」
「いけますよ教頭。全然いけます」
絶対おもしろいです。私が。
「そうか……では試しに」
名場面ゲッツ。楽しみ楽しみ。
「お待たせしました。店長の目を盗んで作ってきたクリームソーダです」
「これ、店員」
「は、なんでしょうか」
「私は君が好きだ」
ど直球きましたー!!
さぁ、どうする色男キリヤン!
どきどき、わくわく。
キリヤンはゆっくりと目を細め――
「はっはっは。あなたのようなダンディなお方にそう言っていただけるとは、私も捨てたものではありませんね。小豆や白玉はお好きで?」
「喉から手が出るほどに」
「かしこまりました、白玉パフェをサービスいたしましょう」
とことん爽やかに去っていくキリヤン……
「なんか、誰でもいいみたいだね」
「キリヤは節操ないです」
「いや、しかし素晴らしい青年だぞ彼は」
「おほほ、教頭先生。その心は?」
「甘いものをくれるからだ」
あなた子供ですか。
――意外な組み合わせだった四人と店員さんは、これまた意外に意気投合。話は軽快に続いていく。
「そうそう。最近話題になっている、小学生の携帯電話の所持を許可するか否かの話ですが」
「おほほ、わたくしとしては不適切なサイトへのアクセスが規制されるなら所持しても構わないと思うのですが。クララちゃんはどう思います?」
「携帯電話を携帯しなくなるのですか?」
「私はそちらのほうがいいと思うのだが」
「それでは携帯電話じゃなくなってしまいます! ただの電話です! タダですか! 無料ですか! 家計は大助かりですがそれはともかく教頭は携帯電話をこの世から消すつもりなのですか!?」
「な、なにもそこまでは」
「ひどいです教頭! あんなに便利なものを消すなんて! 鬼、悪魔、破壊神!!」
「おほほ、クララちゃん。それ全部褒め言葉ですよ」
「知りませんでしたクララしょっくです!」
「褒めておらん微塵も褒めておらん!」
「キリヤもしょっくです!」
「混ざるな!」
「俺様もしょっくです!」
「誰だ貴様は!?」
「あ、すいません。通りすがりの客です。つい」
賑やかに流れていくお昼の時間。
楽しかった。
とても、楽しかった。
でも。
帰り際。
「……あれ、サエちゃん。こんな店の片隅で何してんの」
「うー、カカちゃーん。さっきから居たんだけどー」
「声かけてくれればよかったのに」
「だってー……クララちゃんとお母さんの水入らずの時間にお邪魔するのもなーと思ってー」
「……や、私と教頭は邪魔してたんだけど」
「そうだけどー……私は誘われたわけじゃないしー……ふーんだ」
そんな感じで寂しがるおねーちゃんがいました。
そして、家に帰ると。
「カカ、ご飯は」
「あ、ごめん。食べてきた」
「いらないなら言えよぅ。僕、おまえがくるまで食べずに待ってたんだぞ?」
「……ごめん。連絡すればよかった」
こんな感じで寂しがるおにーちゃんもいました。
世の中、うまくいかないねぇ。
あまり見ない組み合わせ。
なのに意外にまったりハマって作者もびっくりです笑
でも一方ではさびしがる人たちが。人気者はつらいですね、はっはっは!(キリヤン風