カカの天下494「嵐の後の日常」
「ただいまー……」
ダルダルーっと家に帰りました、トメです。
なぜそんなに身体がダルいかといいますと、おそらくお見合いの場に乗り込むなんて慣れないことをした気疲れか、もしくはテンとの打ち上げで飲みすぎたかですね。ええ、後者です多分。
「おかえりトメ兄。あそぼ」
それに比べ、なにゆえこの小娘はこんなにも元気なのか。昨日はあんだけ大騒ぎしてたくせに。
「疲れてんだよー、夕飯まで寝かせてくれよー」
「そっか、昨日は大変だったもんね。はい、ポーズとって」
「は?」
腕やら脚やらをカカに掴まれた。そして適当に動かし、『俺、参上!!』っぽいポーズをさせられる。
そして轟くカカの声。
「愛のために戦う男、トメ!!」
「やかましい」
恥ずかしいことをぬかすカカを放っておき、居間へと入る……あー、面倒だから着替えずにこのままゆっくりしよう。ごろりと畳の上に寝転がる。クッションクッション……あった、デンジャーケロリンクッション。これを枕にして、っと。
「ケロたんと一緒に寝る男、トメ!!」
「改めて言うな、恥ずかしい」
何がしたいんだか……や、遊びたいんだろうけど。いいや、寝よ。
……む。
すく。
「何度でも立ち上がる男、トメ!!」
「うっさいな。トイレいくだけだよ」
「トイレ男、トメ!!」
「人を妖怪みたいに呼ぶな」
「便所男、トメ!」
「言い直すな!!」
「便トメ!」
「略すな!」
「便!」
「ベンって誰だ!」
構ってやりつつトイレへ移動。
「入ってくるなよ」
「どこにでも入る女、カカ!」
「やめい!」
トイレのドアを閉め、しっかりと鍵をかける。ホントに入って来かねないからな。
さて、用をば。
…………
……諦めたかな?
「いつもトイレに現れる男、トメ!!」
「間違ってはいないがハエとか変質者みたいに聞こえるからやめてくれるか!?」
「お尻からいっぱい出す男、トメ!!」
「今は別に出してない! あと下品なことを大声で叫ぶな!」
「パンツは白い男、トメ!」
「今日は黒だ!」
「今日は黒、トメ!」
「あーもー」
「いつも黒、それはサエ!」
「はいはい、そーデスね」
トイレから出た後も、そのカカの遊びはしばらく続いた。
寝るときには。
「寝るときはお腹に手をのせる男、トメ!」
「……悪いか」
起きたときには。
「寝言が可愛い男、トメ!」
「僕は何言ったんですか。ねぇ、ねぇ!?」
くしゃみしたときには。
「はくしょん!!」
「くしゃみがうるさい男、トメ!」
「ごめんなさい」
料理中には。
「トメ兄ってその可愛いエプロン似合うよね」
「……そか?」
「実は女の子、トメ子!!」
「誰がじゃ」
標的は僕だけじゃない。テレビを見ている最中には。
「日本政府にケンカを売るアナウンサ――」
「名前は出すな」
「大して可愛くないアイドル――」
「名前は出すなよ」
「おもしろくない芸人、いっぱい――」
「言わないでやれ、頼むから」
これだけ続けるとさすがに飽きてきたらしい。お風呂上がりあたりでカカはもう妙な口上を言わなくなった。
ちょっと寂しい。
「ふわぁ……とめにー、もうねるねー」
パジャマ姿のカカが目をしょぼしょぼこすりながら手を振ってきて……なんとなく、
「眠れない女、カカ!」
なんて言ってみた。
「あははーむりむり。めっさねみーもん」
しかしカカは変な言い方をしながらフニャフニャと自分の部屋へと去ってしまった。むぅ、もうちょっと遊んでやればよかったか。
そんなことを思いつつ自分の部屋へ戻り、ベッドでゴロゴロしながら誕生日に誰かさんがくれた本を読んでると……
「……とめにー」
「あれ、どしたカカ。寝たんじゃないのか」
「ほんとに寝れない」
あれま。
「なんかお話してー……」
ぽやーっとした口調で寄ってくるカカ。なんか幼児化してるな。
「そら小さいころはいろいろ話してやったけど……どんな話がいいのさ」
「とめにーのお見合いの話。テンちゃんの彼氏役をやってどう思いましたか?」
ちっ、ふやけた顔して痛いとこ突いてきやがる。
「黙り込む男、トメ!」
「バカなこと言ってないで早く」
「言わせろよー。ちょっと言いたかったんだから」
そんな感じでちょっと夜更かしな今日でしたとさ。
テンカ先生編で随分とはっちゃけたので、今日はひたすら普通の話をお送りしました。
ふつーすぎる? カカ天は基本こんなもんです笑 のんびりフニャフニャいきましょー^^
でも一休みしたし、500話に向けていろんな人を出していきますかね!