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カカの天下  作者: ルシカ
486/917

カカの天下486「シューVS姉娘」

 こんにちは、シューです!


 おまえ誰だって? そんなこと言っちゃいやん! え、キモい? すいません普通に喋りますから見捨てないでください!


 ……ええと。とにかくシューです。お姉さまの下僕であり、タマ様の家臣です。


 なんでもないお休みの今日、僕はいつもどおりタマ様の遊び相手をしていました。今は絵本を読んであげてます。


「おしまい」


「いやまだ続きますよ!?」


 滅多にない僕の出番をこんなに早く終わりにされたらたまらない! 


 いや、タマ様は悪意があって言ったわけじゃない。わかっている、ただタマ様のマイブームが『おしまい』発言なだけだ。


「さ、読みますよタマ様。昔々、あるところでおじいさんとおばあさんが」


「おしまい」


「そう、誰にも看取られることなくお終いに――ってだから早いですよ終わるの!!」


 僕は今までタマ様のことを長い間見守ってきた。なんかおもしろくないからってカットされてたっぽいけど実はそう! なのでタマ様との付き合いは長く――その中で生まれたものがある。


「昔々、あるところでおじいさんとおばあさんが」


「ししまい」


「そう、年甲斐もなく獅子舞に精を出してたら」


「おしまい」


「無理がたたってお終いに――ってまたかい!!」


 ビシッ、と我ながら見事な裏手チョップ。


 そう。ずーっとタマ様に付き合っているうちに、僕はなんとノリツッコミをマスターしてしまったのだ!


「タマ様、僕はもう」


「おしまい」


「ええ、お元気で。さようなら――って死にませんよまだ!!」


 どうですか、この見事なツッコミ!


 この勢いでいずれ……そう、輝けるツッコミの星、トメさんを超えてみせます!!


「タマ様、僕はもうただの下僕じゃありません。時折ふと思い出したかのように登場しては悲惨な目にあい、笑われながら去っていく――そんな自分とはおさらばです!!」


「しゅー」


「あ、はいはい。ジュースこぼしたんですね、今すぐ拭きますよー」


 はっ。なんだこの卑屈な自分は。全然おさらばしていないじゃないか。


 ……でも、待てよ?


 今日のタマ様は何かと「おしまい」と言ってくる。これを利用して、僕の今の地位を挽回することができるのでは!?


「えっと、タマ様? 僕がタマ様のお願いごとを聞くのは」


「これから」


「そう、これから、まだまだこれから――ってマジで!? なんでこんなときに限ってこれからなの!? 僕の未来は」


「おしまい」


「だからなんでそう絶妙なタイミングで言ってくれるのでしょうか!」


 きゃっきゃっと無邪気に笑うお子様……むむむ、これは根っからのコメディ体質な笠原一家の血をひいてるとしか思えない。実際は知らないけど!


「やっほー! おっじゃましまっすー」


 おお、この声は愛しきお姉様!


「よ、シュータマ! あ」


 かちゃん、と僕がジュースをいれたばかりのコップを再び倒すお姉様。


「ごめん、よろしくシュー」


「はーい」


 何の疑問も持たず勝手に動く身体。鼻唄混じりにしゃがみ込み、すいすいーっと零れたジュースを拭いて……ふとタマ様と目が合った。


「おにあい」


「僕のこの立場がですか!?」


「おきまり」


「決まってる立場だからこれ以上変わりようがないと!?」


 ああ、なんてことだ。僕はそれほどまでにダメな人間だったのか。あとなんて子供だ。急所突きが的確すぎて今にも僕ちん死にそうです。心が誰かにへるぷみー。


「何やってんだか……ねね、タマちゃんっ」


「おぅ、おねー!」


「シューはどうだった?」


「おちなし」


「オチがないのかぁ。そりゃまいったね」


 無邪気に喜ぶ小さなあくま。あぁ、どうせ僕にオチなんてないさ。楽しく今日あったできごとでも語るがいいさー、ふんだ。


「それで、他には何かあった?」


「しゅーがねっ!」


「うんうん」


 なんでも好きに言ってください。


 僕は知りませんよ。口を出しません。


「だれかわすれた」


「それだけは聞き捨てなりませんよ!?」


 ここまで頑張ってるのにそりゃないっすよ!


「あ、んとね。つい最近お隣さんが飼い始めた犬の名前がたしかシューだった」


「勝手に犬にしないでくださいお姉様!! た、タマ様? 僕の名前はなんですか」


「おしがい」


「そんな貝は知りません!! それともナイスガイの親戚ですか!? それなら勘弁しないでもないですけど!」


「かんちがい」


「あっはっはーそうですよねー僕なんかナイスな部分なんてどこにもナス! ナスっぽい部分ならあるんですけどーってお姉様までタマちゃんの真似しないでください!!」


 ぜーはーぜーはーと上がりすぎたテンションを鎮める僕を、お姉様はまじまじと見つめてきた。


「シュー……しばらく見ないうちに芸風変わったね」


「ちょっとイメチェンしようと頑張ってみたんですけど……どうですか?」


「んー、タマちゃんはどう思う?」


「しゅーはいぬがいいー」


「前のほうがいいってさ」


 ええそうですかそうですねそうですよ、どうせ僕は犬みたいなもんでしたよ今もそうですよワンワン言いながら尻尾でもつけて振り回してればいいですかそうですか!!


「シュー、なんで嬉しそうなの?」


「気のせいです!!」


 ふんだ。よくよく今日のことを思い出してみれば、ツッコミ覚えても扱いは前と変わってないじゃんね。


「お手」


「わん!!」


「やっぱ嬉しそう」


「ヤケクソなだけです気のせいです!」


 ほんとですからね!!  


「はぁ……僕のこの扱いはいつまで続くんだろう」


「これから」


「これからが本番!?」


 タマ様はどんどん成長されてます。言葉も覚えてます。


 それに比例してどんどん僕は弄られます。


 なぜでしょう?


 謎です。




 一休みにシュー君でしたー。

 やっぱシューはシューでしたね。サブタイトル見て「勝負になるわけないじゃん」と思った人も多いはず。

 

 さ、明日からはまたテンカ先生編に戻ります。

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