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カカの天下  作者: ルシカ
483/917

カカの天下483「臨時活動!」

 ごちそうさまでした、カカです。


 今日も今日とて給食を食べ終わり、まんぷくふにゃふにゃ気分でお昼休みを迎えたのですが……


「カカすけ!! 聞いて!」


「サユカン? いいよ、聞いてあげる。その代わり、いくらくれる?」


「はいっ」


「……給食についてた、イクラ」


「ふざけてないで、とにかく聞きなさいっ!」


 ふざけるなと言いつつ鮭のたまごなんかを指に乗せてくるサユカンに乾杯! なんて呑気なことを思ってたんだけど――それを聞いて、私の心に激震が走った。




「みんな、聞いて!!」


 バン!! と教卓を叩き、各々で昼休みを満喫しているクラスメイトの注目を集める。手が痛い。


「大事な話があるの。聞いて……サエちゃん、サユカン」


 私の指示通り、教室の前後にある廊下への扉を閉める二人。それを見たアヤちゃんが驚いて、


「カカ……ついに私たちを殺す気!?」


 どーゆー目で私を見とるのだチミは。


「そんなことはしないよ。本当に大事な話だから聞いて。さっき職員室で話してたのをサユカンが聞いたらしいんだけど、テンカ先生がね――お見合いをするんだって!」


 それを言った瞬間、静寂に包まれるクラスメイト。


 呼吸音すらしなくなってから、きっかり五秒後。


 爆発した。


「「似合わねえええええええええ!!」」


 寸分違わぬ大合唱。さすが日々を共に生きる仲間たち。団結力はピカ一なのである。


「しかもね、相手は偉い人の息子! お金持ちっぽいよ」


 ドラマや漫画でしか聞いたことの無い展開に、ざわざわと騒ぎ始める生徒たち。


「お見合い……じゃあ結婚? マジで? ちょーウケる」


「しかも相手はお金持ちって……金なんて酒のためにしか無いとか言ってるテンカ先生が?」


「全部酒に変わるぞ、その人の家」


「というかさ、男同士で結婚できるもんなの?」


「失礼なこと言わないでよニッシー! テンカ先生にも女らしいとこはあるのよ!」


「どこよ」


「……お、おっぱい」


「お金持ちの息子とねぇ。猫とハイエナの方がまだお似合いなんじゃ」


「結婚……新妻……裸エプロン希望」


「い、いいい、インドちゃん!?」


「いい?」


「ちち違います! それにしても素晴らしく大胆ですね……わたくし驚きのあまり想像してしまいました、ぽ」


 好き勝手な――っていうか好き勝手すぎる意見を並べるのはいいけど。


「待って、大事なのはそこじゃないの!」


「え!? カカはテンカ先生とお見合いが似合うとでも!?」


「そんなこと思うやつ人類にいるわけないでしょ。それはどうでもいいの。大事なのは、そのまま結婚になったらテンカ先生が先生を辞めるってこと!!」


 ピタリ、と。もう一度静まるクラス一同。


 今度は五秒経っても爆発しなかった。


「……なんで?」


 誰かが言った。きっとそれは全員の疑問だ。だから答える。


「さっきも言ったけどサユカンが聞いたの。たまたま職員室で教頭とテンカ先生が話してるのをね。そのお見合いは無理やりっぽくて、相手の意見になかなか逆らえないんだって。それで向こうが、教師を辞めろって言ってるんだって」


 なにそれ、と。


 それを聞いた誰もが思った。


「……いい? 聞くよ。この中で、テンカ先生に辞めてほしくない人、手を上げて」


 ス、とまずは私が上げる。続いてサエちゃんとサユカン。


 全員が手を上げるまで時間はいらなかった。


「よし、みんなでお見合いなんかぶっ潰そう!」


 きっぱり言い切った私に「おおっ!」と盛り上がりかける一同。でもそれを遮って、声を張り上げた子がいた。


「待ってください!」


「なに、イチョウさん」


「え、偉い人とのお見合いの話なんて、そんな大きなことに……わたくしたち子供が首を突っ込むべきではないと思います」


 さすがは委員長。クラスが悪い方向へ行くと思ったんだろうね。


「気に入らないからといって、その、子供が大人の話の邪魔をしてはいけないと思います。わたくしたちはただの生徒で、大人の方から見れば、そんなものは、ただのワガママでしかないのです」


 うん、そうだね。ごもっとも。  


 でもね。


「子供のうちにワガママ言わないで、いつ言うの」


「…………!」


 そんなことは知ってる。でも言わずにはいられない。だから私たちは子供なんだ。


「イチョウさんだってテンカ先生好きでしょ?」


「それは……もちろんですけど!」


 よし、決まり。


 サエちゃんとサユカンと目を合わせ、頷く。


「この件、私たち手芸部が預かった!!」


 いつかテレビで見たドラマっぽく格好よく言ってみた!


「おおっ! って手芸部かよ!?」


「手芸部で何するのよ!」


「それはこれからのお楽しみ。もちろん皆にも協力してもらうから、よろしくね」


 ――臨時活動、開始なのだ。


  


 その日、うちに帰ってから。


「お? 何してんだカカ」


「んー、クラブ活動」


「はぁ、よくわかんないけど人様の迷惑にはなるなよ」


「それは保障できないけど……ね、トメ兄」


「なにさ」


「テンカ先生の様子、最近変じゃない?」


「そうだな」


「そうだなって……気にならないの? この間飲みに行ったんだよね」


「おう。悩んでるのが丸わかりなヤケ酒っぷりだったな」


「じゃあ、話聞いたの?」


「いんや」


「え、なんで!」


「なんでって、言うときゃあいつから言うだろ」


「そうとは限らないでしょ。言いにくいことだったら、こっちから聞かないと」


「おまえら子供の場合はな、そういう後押しも必要だろうさ。でもな、僕らは大人だ。誰に何を言うべきか、ちゃんと自分で決められる。少なくとも僕らはそういう関係だ」


「むぅ……よくわかんない。友達のことはなんでも知りたいと思うもんじゃないの?」


「だから、子供のときはそれでいいんだよ。大人になると色々と複雑になってくるからな……相談があればもちろん付き合うし、ただ飲みたいときはそれ“だけ”に付き合ってやる。で、助けがほしいと言われれば問答無用で助けてやる」


 トメ兄の言ってることは難しくて、よくわからなかった。


 ただ。


「それが男同士の友情ってもんだ」


 みんな心底、テンカ先生を女性扱いしてないんだなーと思った。




 少しシリアス風味になってきましたが、テンカ先生編が始まってまいりました。

 

 カカたちが動いた=メチャクチャになるのか。

 それとも意外とすんなりいくのか――んなわけないか笑

  

 例によって好き勝手執筆モードになってきましたので、どういう展開になろうと温かい目で見守っていただけたら嬉しいです^^

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