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カカの天下  作者: ルシカ
481/917

カカの天下481「唐突にお聞きしますが」

 こんにちは、トメです。


 今日は何も予定のない休日。カカと居間で二人、ぼけーっとしていたのですが、どうにも暇です。


「ね、トメ兄。何かおもしろいことないかな」


「カカがそう言うとろくなことにならないからな。ないことを祈る」


 そう、暇で結構。たまにはのんびりしないと僕の身がもたないのだ。


 テレビを見る。いまやってるのは午後の恒例サスペンスドラマだ。暇つぶしにはいささか力不足だけど、まぁ他にすることないからこれ見よう。


「よし、これだ」


「ん、なに。いまいいところなんだけど」


 同じくテレビを見ていたはずのカカは、僕に向かって指を突きつけ、


「おまえは誰だ!?」


 そんなことを言い放った。


 意図がわからずきょとんとしたが、すぐにそれがテレビのセリフを真似したものだと気づく。


「トメと申しますが」


「誰だと言っている!」


「だからトメだって」


「出て来い!」


「はい?」


「おまえは死んだはずだ!!」


「……ねぇねぇ、会話しようよぅ」


 闇雲にテレビの真似をされても対応に困るんだが。


「よし、わかった。犯人はあの人ね」


「そうかいそうかい……って、どこいくのん?」


 気が付けば名探偵カカは玄関で靴を履こうとしていて、何をするのかと僕が追いかけるころには外に出ていた。


 そしてカカはたまたまうちの前を通りかかったお兄さんに寄っていく――って、おい。何する気だ、犯人扱いでもする気か!?


「誰だ!?」


 ナニソレ。


 固まる通行人。そりゃそうだ、いきなりこんなこと言われたら誰だって反応にこま――


「武田遠衣だ!!」


 ――らない、らしい。


「ご丁寧にどうも!!」


「いえいえ!」


「私はカカです!」


「こちらこそご丁寧に! じゃ」


「うん、気をつけて」


 にこやかに別れる不思議コンビ。僕が知らない間に世の中はこんなにも冗談が通じるようになっていたらしい。


 とにかく面倒にならなくてよかった。さっさとカカを回収せねば。


「誰だ!?」


 ってまたやってるし。我が妹君はいったい何をしたいのだろうか。


「だれだ!!」


 意外な展開、なぜか同じ言葉で返事をするおっさん。どうでもいいけどなぜ怒鳴る。


「誰だ!?」


「だれだ!!」


 首をかしげながらも再び聞くが、またもや同じ答えを返すおっさん。


「ああもう! だから、誰だ!? って聞いてるのに!」


「だからわしの名前は“ダレ”だと言っておろうが!」


「そいつぁ失礼しました!!」


「以後気をつけよ!!」


 だから。なんでそんなに元気なのん君たち。


 あと“ダレ”ってどう書くのかな。どう見ても日本人だけどあの人。


「誰だ!?」


 はっ、連れ戻すの忘れてた。今度のターゲットは女性の方?


「え、あ、えっと、はい。ダレさんですか? ご丁寧にどうも」 


 狼狽しながらぺこりと頭を下げる気弱そうな中年女性の方。ダレと聞いて名前と思うとは、もしやさっきのダレさんの知り合いか? 


「え、あー、うんと」


 反応が予想外だったらしく、ちょっと焦るカカ。しかしなんとか答えをしぼり出す。


「よろしく!!」


 よろしくできねーだろ急に言われても。


「え、あ、はい。よろしくお願いします。わたしの名前は天鹿淳恵と申します」


 あ、あぁ……よろしくしちゃうんだ。いい人ネ。


「お元気で!」


「ど、どうも。ダレさんもお元気で」


 小学生相手にぺこぺこ頭を下げて去っていく女性……えらくおどおどしてたな。って、あれ。今の人――


「誰だ!?」


 疑問を浮かべる間もなく次のターゲットに襲い掛かる誰だ小僧、じゃなくて誰だ小娘。


「誰で」


 さー今度はどんな意味だどんな反応だこれは? 正解はご想像にお任せする。


 と、なんだかんだでカカを眺めて暇つぶしして――


「誰だ!?」


「だれーだ」


「だれーの?」


「んだ。だれー」


「だれだれ」


 そんな、脳みそだけ季節外れに春っぽい会話を終えたカカ。たぶん“だるい”を砕いて言ってただけだろうけどね。とにかくそんな誰だ小娘は、とうとう最後のターゲットに突撃した。


「誰だ!?」


「え……!」


「誰だ?」


「えぇ……!!」


 そう。


 その、ターゲットとは。


「ひ、ひどい、ひどいですカカちゃん!! いくらしばらく出ていなかった、もとい会わなかったからって、私の名前を忘れちゃったんですか!?」


「だって皿も鍋も大根も持ってないし。あ、服着てるからフクちゃん?」


「私の名前は時価でも出世魚でもありません! 変化したりしないんです! ちゃんと覚えてください、それでも私の義妹ですか!?」


 違います。


 まーとにかく、久々に顔をあわせたサラさんなのでしたが。


「私はサラです!」


「おまえは死んだはずだ!」


 オイ。


「いつの間に!? あぅ……やっとバイト始めて余裕できたからトメさんに会おうと思って来たのに、こんなのあんまりですぅぅぅ」


 うわーん、とコミカルな泣き方しながら去っていくサラさん。あー、僕に気づかなかったのか。すぐ近くの玄関先でボケッと立ってたんだけど。


「ふう」


 お、やっと飽きたな。サラさんで楽しく遊んだカカは満足げに僕の方へ――もとい、我が家へと帰ってきた。


 そして僕は『カカが戻ってきたら絶対に言おう』とずっと思っていたことを口にした。


「なぁ」


「なにトメ兄」


「おまえは誰だ!?」


「なにバカ言ってるの。はやく夕飯」


「……はい」


 殴りたい。力いっぱい殴りたい。


 でも我慢。僕、大人だもん。


 ……大人だもんっ!




 カカの突飛な行動、暇つぶしレベル。

 激しくはないが変。意味不明。


 そんな感じの話をお送りしました。

 テンカ先生の話の続きが気になる人もいらっしゃるでしょうが、まぁまぁ焦らず。

 毎日確実に話は進みますので^^


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