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カカの天下  作者: ルシカ
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カカの天下48「ナニして遊ぶのその二つ」

「どっち買おう……」


 こんにちわ、トメです。


 隣で腕を組んでうんうん唸っているのはおなじみ妹のカカ。


 ただいま夕飯の買い物中です。いつもは僕一人でくるのですが、たまには……とカカを連れ出し、「好きなもの一つなら買ってもいいぞ」と言ったのが五分前。


 それからずーっと唸ってます。同じ場所をうろうろしているのでいい加減お客さんの邪魔になってます。


「邪魔ねぇこの子」


 ほら、通りすがりの買い物おばさんもこう言って……待て、横幅ありまくりのあんたのほうが明らかに邪魔だぞ。声でけぇし。


「おばはん邪魔」


 あ、言っちゃった。 


「腹が」


 あ、詳しく言っちゃった。


「腹肉が」


 詳しすぎる。


「ごめん脂肪だった」


 謝っちゃったよ。


「うぎゃわあああああああん!!」


 ああ、泣きながら逃げてっちゃった。意外ともろいのねおばちゃん。それにしても可愛くない泣き声だ。


「でさ、何を買うのにそんな悩んでるんだ?」


 実はうろうろしているのを五分も見てたわりに、カカが何に迷っているのか僕にはわからなかった。これがお菓子売り場なら、いつも食べてるおやつから想像つくんだけど……


 カカはうんうん唸りながら立ち止まり、眉根をひそめた顔をくるりと僕に向けて、その五分も迷っている『買ってほしいもの』を言いました。


「バナナとトマト」


「……はぁ」


「どっちにしようかな……」


 なんなんでしょう、このお子様は。


 口をあんぐり開けてる僕の表情には気づかず、再びうろうろ歩き始めるカカ。いい加減それやめろって。


「なぁ、なんでそんなもんほしいんだ」


「食べたいから」


 そりゃそうか。


「なんでそんな微妙なもん二つで迷ってんだ?」


「微妙かな?」


「だってバナナとトマトって接点ないだろう」


「えー、あるよ」


「どんな」


「バナナはおやつに入らないよね?」


「ああ」


 遠足にお決まりの文句だ。


「トマトもおやつに入らないでしょ」


「まぁ、そうだけど」


「じゃあ同じだよ」


「……それもそうか」


 なんか新理論によって納得させられてしまった僕は、もうしばらくカカのうろうろ劇場を眺めていた。


 ……や、でもいい加減にしないと。


「なあ、理由はもうこの際気にしないことにしておくから早く決めろよ」


「んー……バナナ舐めまわしとトマトの中心ほじくるの、どっちが楽しいかな……」


 なんちゅー楽しみ方しようとしてんだこのお子様。


「あー……もうあれだ。そこまで迷うなら中をとって別のもんにしろよ」


「中をとるって?」


「迷ってる二つの真ん中っぽいの選ぶってことだよ」


「……じゃあきゅうりかな」


「なんでやねん」


「舐めまわせるし、ほじくりがいもある」


 ……あー、なんか変な話に聞こえるなこの会話。よい子は深く考えちゃいけないぞっ。


「じゃ、それ買ってもういくぞ」


「うん……あ」


「なんだよ」


「なすびもいいよね」


「なんでそう話的にまずいもんばっか出すかねこの子は」


「……? なすびまずいの?」


「いや、食べればおいしいし、ネタとしてもある意味おいしいが、いろんな意味でまずい」


「難しいね」


「ほんとにね」


 そんな何でもない会話をしながら、僕たちはレジを済ませた。




 その後、カカがきゅうりをどうしたのかというと……


「なあ、カカ。きゅうりどした」


「遊んだ」


 ……だ、そうです。


 そういやこいつきゅうり嫌いだった。本当に遊んだだけで食べてないんだろうなぁ。




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