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カカの天下  作者: ルシカ
472/917

カカの天下472「おもしろいって言ったら負け」

 ごろごろごろごろ。


 あ、別に猫が喉を鳴らしてるわけじゃないですよ? 居間で寝転がって雑誌を読んでるトメです。まぁ喉を鳴らしたいくらいにまったりはしてるわけですが。


「……トメにー」


「あいあい?」


 テーブルを挟んで反対側から声がかかる。僕と同じくゴロゴロしながら漫画を読んでいるカカだ。


「〜って言ったら負けゲームしよ」


「なんだそれ」


「んとね、例えば最初に出題者が“『りんご』って言ったら負け”って言ったとするでしょ。そしたら続いて出題者は相手に『りんご』って言わせるような質問をするの。質問の形はどんなのでもいいけど、相手は正直に答えなきゃダメ」


「ふむふむ」


「それを交互にやってくの。負けが多いほうが負け」


 へぇ、意外とおもしろそうなゲームだ。


「そんなゲーム、どっから持ってきたんだ?」


「サエちゃんに教えてもらった。で、やるの? やらないの?」


「まぁ暇だし。付き合うよ」


「よし、じゃあ私からいくね。えと……『とんかつ』って言ったら負けね。質問、今日の夕飯はなんだった?」


 む、そうきたか。今日の夕飯はとんかつだった。嘘をついてはいけないのなら、ここはとんかつとしか答えようがないのだろうけど……


 あ、そうか。


「ご飯」


 まぁ、嘘ではない。


「むむむ、うまいことかわしたね」


「じゃ次は僕な」


 うん、大体このゲームの趣旨がわかった。


 出題者は、問答無用に答えが一つしかない問題を考える。そして相手は、その裏をつく答えを考える。うまいこと思いついた方が勝てるってわけだ。そう、例えばこんな風に。


「いくぞ。『まる』って言ったら負けな。質問じゃなくて○×ゲーム、×は×である?」


「えええ……ううぅ……えっと……」


「○×ゲームだから○か×しか答えはないぞ」


「あー、うー」


「ちなみに正直に答えないとダメなんだよな」


「……まる」


 まずは一勝。


「トメ兄、コツ掴むのはやすぎ」


「伊達におまえより長く生きてないよ。ほれ、次はカカの番」


「むー……じゃあ。『いない』って言ったら負け。質問、二択です。幽霊はいる? それともいない?」


「いる」


「……いないもん」


「おまえはそう思ってても、僕はそう思ってないんだ。だから嘘じゃない」


「いないもん」


「や、だからさ」


「いないもんいないもんいないもん!」


「僕はそう思ってないわけで」


「トメ兄のバカ!!」


「あーもー、じゃーいないってことでいいよっ」


 こういう勝ち方もありなのかよ、くそぅ。


 じゃあ反撃だ!


「いくぞ、こっちも『いない』って言ったら負けな。質問、二択です。妖怪はいる? それともいない?」


 似たような質問だが、幽霊嫌いなカカのことだ。これも『いない』と言わざるを――


「ああ、それはいる」


 あれぇー?


「えと、カカ。妖怪はいいのか」


「うん、だっているもん」


 ……基準がわからん。姉のことを言ってるのか?


「次は私ね。『トメ兄』って言ったら負け! あなたのお名前は?」


「……トメ」


「やった、私の勝ち――じゃない!?」


「おまえアホだろ」


 慣れた呼称が仇になったな。『兄』は余計だ。


「反撃いくぞ。『カツコ』って言ったら負けな。姉の名前は?」


「忘れてた」


「そんな答えアリかよ!?」


「だってお姉ってしか呼ばないもん」


 こいつマジで忘れてたのか。じゃあルール違反じゃないし……くぅ、姉、可哀想に。


「私の番ね。とっておきの問題いくよ。『大好き』って言ったら負け。トメ兄は私のこと好き? それとも嫌い?」


「すごく好き」


「しまった、『大』は余計だった!」


「もしもしカカさん。言ってて恥ずかしくありませんか?」


「黙らっしゃい」


 雑誌に落としてた視線をちらりとカカに向けると、少し頬が赤かった。ほっほっほ、可愛いのう。


「次は僕の番な。『好き』って言ったら負け」


「……む」


「カカは僕のこと好きか?」


 かなり恥ずかしい質問だが、たまには妹に好かれていると確認したいというお兄ちゃん心をわかってほしい。


「嫌い」


「嘘つけ」


「別に嘘じゃないし」


 意地を張るカカがおもしろい。僕は雑誌を置いてカカ側にごろごろ転がって――うまいことカカの目の前に到着。手元の漫画に向けている顔を覗き込む。


「またまたー、いつもじゃれついてくるくせに」


「家にトメ兄しかいないから、仕方なくだもん」


 漫画から顔も上げず、素っ気無く言う困った妹。仕方ない……そこまで言われては攻撃するしかないな。


「そっか、んじゃ嫌われてるやつのためにご飯作りたくないし、もう作るのやめよっかな」


「なっ!?」


「嫌われてるやつと遊ぶのもやめよう、うん」


「あああ」


「で、質問の答えは?」


「うううう」


 カカは悔しそうな顔でこっちを見ている。ふっ、勝ったな。


「もう一度聞くぞ。『好き』って言ったら負け。カカは僕のこと、好きか?」


「……うん」


 よし――あらっ、負けた!? 


「くそぉ、そのような抜け道があるとは」


「……ね、トメ兄」


「なにさ」


「言ってて恥ずかしくない?」


「……オゥ、イェス」  


 言われてみれば何やってんだ僕らは。


 ゴロゴロ転がりながらさっきの定位置に戻った。


「で、カカ。次は?」


「恥ずかしいの、もうやめようね」


「おまえから言い出したことだろうに……ったく」


 ――こんな感じで今日を過ごした。


 サブタイトルから続きます。質問、今回は面白かったですか?

 ……どうだったでしょうか。私が勝ったか負けたかは読者さんによって違うと思いますが、勝てばいいなーなんて夢見ながら今日はシメさせていただきます笑


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