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カカの天下  作者: ルシカ
465/917

カカの天下465「トラウマ」

「ほらほら、どんどん食べてくださいよトメ君」


「…………」


「ほらほら、むすっとしてないで。可愛い顔が台無しですよ?」


「二度と僕に向かって可愛いとか言うな!!」


 どうも、ちょっと怒り気味のトメです。


 今日はキリヤの奢りでラーメンを食べにきています。なぜ奢りかというと、先日のメイド騒動のことをどうしても謝りたいとキリヤが言ってきたからです。ええ、向こうから言ってきたからです。けして僕がこうなるまでひたすら無視し続けていたわけではありません。


「ほらほら、大盛りですよ。から揚げセットですよ。どうかこれで許してくださいよー」


「……わかったよ。もう二度とあんなことするなよ? ふざけるにも限度がある」


「わかってます」


 ほんとかね。なんか信用できないような。


「そうだ! さらにお詫びということで、今度メイド喫茶に連れてってあげますよ」


「おまえ全く反省してないだろ」


 この期に及んでまだソレの名前をだすか!?


「反省してないなんて、そんなバナナ! トメ君はメイドになって使われるのがイヤだったのでしょう? ならば今度はメイドを使って新しい快感を――」


「い、か、な、い!!」


「じゃあメイドラーメンにいきましょう」


「おまえ話聞いてないだろ?」


「おや、ご不満ですか。ならば作りますか? メイドラーメン、トメ君ならできるかと。メイド服もありますし」


「そのラーメンがどんな物体かは知らんが! 僕は今後一切メイドと名のつくものは否定する!!」


 あんな思いはもうこりごりだ! 思い出しただけで即泣ける過去なんてそうそう無いぞばかやろー!


「ほほう、その言葉、たしかですね」


「いただきます!!」


 ニヤニヤするキリヤに構わずラーメンに口をつける僕。


 しかし、キリヤの怪しい笑みの意味を理解するのは、もっと後のことだった――




 ラーメンとから揚げを食べ終わり満腹になった僕らは、うちでのんびりとお茶を飲もうという流れになった。お腹をさすりながら我が家を目指す。


「そういえばテンカさんには何かペナルティーはないんですか? それとも女性だから許してしまうとか?」


「そんなわけないだろ。今度、飲み代でも奢らせる。僕はテンを女とは思ってないからな」


「女性でないならば……何だとお思いで?」


「ヤンキー」


 そんなことを道中に話しながら、やがて家にたどり着く。


 玄関の扉を開けると靴が三つ。カカはもう帰っているな。サエちゃんとサユカちゃんも一緒か。


「ただいまー」


 そう声をあげたとき。


「「おかえりなさいませ、ご主人様!」」


「あぁん?」


 耳障りなセリフが聞こえたせいか、思わずガラ悪く聞き返してしまった。


 しかしおそらく僕の顔はもっとガラ悪くなっているだろう。なぜなら居間の方から、ひょい、ひょい、とヘンナモノが現れたのだから。


「おお、素晴らしい!」


「キリヤ……てめぇの差し金か」


 僕の横にいるバカモノが感動しているのは、姿を見せたカカとサエちゃんの格好だった。先ほどのセリフで想像のつく人も多いだろう。そう――二人してメイド服を着ていたのだ。


「何してんの、おまえら」


「どうトメ兄。似合う?」


「実は昨日、家庭科準備室でいろんな衣装を見つけましてー、着てみたくなりましてー」


「ちょうどキリヤンがどうしてもメイドが見たいって言ってたから持ち出してきたの。可愛いでしょ」


 ああ可愛いさ、似合ってるんだろうさ。真っ白なふりふりつきのエプロンもきっと眩しいんだろうさ。でもな――


「というわけで、なんなりとご命令を」


「何でも従いますよー?」


「おお、それはいい。トメ君には悪いですけど早速――」


「キリヤを埋めとけ」


「かしこまりました」「ましたー」


 キリヤが何を言おうとしたかは知らんが言ったもん勝ちだ。僕の命令を素直に聞いたミニメイドの二人は器用に両膝カックンを成功させ、バランスを崩したキリヤを仲良くキャッチ。担ぎ上げて外へとキリヤを持っていく。


「え、あの、どこに埋めるんですかー?」


「庭」


「そいつぁーお手軽ですねーって速っ! カカちゃん穴掘るの速っ!! もしや前世はモグラ!? え、ちょ、マジで埋めるんですか!? あああぁぁぁ」


 ふ、侮ったな。カカはとことん有言実行な女の子なんだぞ。悪い意味で。


「あ、あの……っ」


 ん? あ、そうか。靴は三つあった。当然サユカちゃんもいて――


「お、おかえりなしゃいまひぇ!! ぅぅ……か、かんだ」


 当然、メイド服なんぞ着てるわけである。


 はぁぁぁぁ……


 僕は深く深くため息をついた。


「サユカちゃん。それ、似合わない」


「え……!」


 ショックを受けるサユカちゃん。


「だから脱いでくれ」


「そういうことですかっ!?」


 なんか勘違いしてるみたいだけど、僕の意図は別にある。


「いつもの普段着のほうが可愛いよ」


「あ、そういうことですか――」


 ずいっと顔を近づける。


「だからその僕を汚し穢し貶めた忌まわしき衣装を一刻も早く目の届かないところへ葬って滅却してくださいお願いします後生です土下座でもなんでもしますから」


「ななななるほどそういうことですかっ!!」


 なぜか丁寧に語りかけてしまった僕の迫力に押されてか、サユカちゃんは慌てて頷くのだった。


 ごめんね、似合わないなんて言って。


 ごめんね、何度も「そういうことですか」って勘違いさせて。


 多分、君の格好は可愛い。多分、似合ってる。


 でもね、ダメなんだ。


 僕はその衣装に穢されてしまった。


 僕にとってもう、メイド服は恐怖の対象なんだ――怖いんだ。あの衣装を見ると今にもケタケタ笑いながら僕から人として大事なものを奪っていくような気がしてしまうんだ。誇りとか、尊厳とか、預金残高とか。


 メイド服嫌い。大嫌い。もう目にするのもイヤだ。


 なに?


 病気みたいだって?


 はっはっは。


 こんな僕に、誰がした。




 え、続くの?


 はい、実は続きます笑

 すっかりメイド嫌いになったトメ君。果たしてそのトラウマは克服できるのでしょうか。


 次回、トメがまさかの――


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