カカの天下464「手芸部の開始」
どうも、カカです! いきなりですが張り切ってます!
それというのも、ついに、ついに、ついに! クラブ活動の開始だからです!
祝、手芸部発動! これは気合いれて頑張るしかないっしょ。
「で、オレがこのクラブの顧問になったからよろしく」
「「「似合わねー」」」
「ぃやかましいわ!!」
抜群のコンビネーションを誇る私たちに怒鳴りつけているのは、お察しの通りテンカ先生である。
「オレだってもともとは別のクラブの顧問だったんだよ!」
「じゃあなんで手芸部なんて破滅的に似合わない部に?」
「カカがいるから面倒みれるのはオレしかいねぇって押し付けられたんだよ」
私って有名人っ!
「てなわけで、だ。妙なことすんなよおまえら。手芸部って意味わかってんだろうな?」
バカにしないでいただきたい。意味もわからずこの部にこだわるわけないじゃないか。
「よし、サエ。答えてみろ、手芸部とは何をするクラブだ?」
「あらゆる『手』を使って他人に『芸』を強制し、それを眺めて笑う『部』でありますー」
「この上なく明朗に無理やりボケるな。カカ、答えてみろ」
「手芸部。しゅげい部。しゅげー部……すげー部?」
「その考え方がすげーよ」
や、そんな褒めないでくださいよ。
「サユカは?」
「すいません、ボケれませんっ」
「ダメだな。この二人を見習え! もしくはボケれないならツッコむべし」
「はい、わかりましたっ!」
ちょいとお待ちくださいな。
「なんだか変な方向に話が進んでますが。先生の方こそわかってるんですか? 手芸部の意味」
「あん? てめぇらが揃ってんだから何だか知らないが漫才でもやるんだろうが」
テキトーすぎです教師様。
「ま、おもしろいことする分には構わねぇがオレが怒られない程度に頼むぜ。んじゃオレは他のクラブのほう行って来るから」
「あれ、他の顧問もしてるんですかー?」
「まぁな。ずっと監視する必要のないクラブは兼用したりしてるんだよ。あー、でも放ったらかしもまずいか。よし……そっちの家庭科準備室の奥にな、前の手芸部の作品が転がってるらしい。それでも眺めて今後の活動内容を決めとけ」
「え、先生が決めるんじゃないんですか? そういうのって」
「んだよ。漫才会場の段取りでもとればいいのか」
「……自分らでやります」
「おう、頼んだぞ」
飄々と去っていくテンカ先生。相変わらず私たち生徒に負けないくらいフリーダムである。
「えっと、どうしよーカカちゃん」
「とりあえず前の手芸部がどんなことしてたのか見てみましょうよっ」
サユカンの意見に賛成。私たちはテンカ先生の置いていった鍵を使って家庭科準備室の奥――倉庫っぽい部屋に足を踏み入れた。
あまり掃除していないのか、少しだけ埃っぽい部屋をぐるっと眺めると、すぐに『手芸部』と張り紙されたダンボールが見つかった。これかな?
「結構でっかいねー」
「カカすけ、任せた」
「任されよ」
よっ! と軽い掛け声と共に、棚の上からダンボールを引きずり出す。そこそこ重いけど、日々鍛えている私の腕にかかれば大した敵ではない。
ダンボールを抱えた私は一旦家庭科室へと戻り、教卓の上にのせた。そしていよいよダンボール、オープン!
「あ、この間展示してあったやつだ」
「へー、服が多いねー」
「面白いのがいっぱいねっ。なんだかステージ衣装みたい」
サユカンの言葉どおり、そのダンボールには煌びやかな衣装がたくさん入っていた。これは後から聞いた話だけど、手芸部は演劇部の衣装を作ったりすることが多かったそうだ。作った衣装は記念に持ち帰る人が多いけど、学校に寄贈という形で置いていく人もいるらしい。このダンボールの中身はいわば手芸部の歴史そのもの。今後の課題を決めるにはもってこいの代物だった。
「服、かぁ……私はビーズをいじれればそれでよかったんだけど」
「でもどうせならビーズも使って服も作ればいいんじゃないかなー」
「うーん、それもまた衣装っぽいことになりそうねっ」
ふむぅ。んじゃとりあえずは演劇部のお手伝いから――って、あれ。
「ね、そういえば演劇部って無くなったんじゃなかったっけ」
「「あ!」」
そうなのだ。演劇部も先日の手芸部と同じ状態だったらしく、希望部員数が少なくて無くなってしまったのだった。
「そっかー。じゃあ無理だねー」
「他に目標を探すしかないわねっ」
む?
「なんでさ。作ろうよ、衣装」
「は? なに言ってるのよカカすけ。演劇部は無いって言ったばっかりじゃないのっ」
「無いなら作ればいいじゃないの」
「カカちゃん、まさかー」
「うん。演劇部もやろう、私たちで」
――その後、私はサエちゃんとサユカンに思いつきを語ってみた。二人は驚きつつも楽しそうな笑みをニヤリと浮かべ、あっさりと頷いてくれた。
そして今日のクラブ活動時間は、今後どういう風に計画――じゃなくて活動を進めていくかを練るだけで終わりとなる。
幸い私たちの顧問はテンカ先生だ。漫才会場の段取りができるのならば、演劇舞台を設けることくらい簡単だろう。
もしも「そんなの手芸部のやることじゃない」なんて苦情がきたときには「これは、私たちの『手』で『芸』をする『部』です。だから何やっても手芸部です」とでも言えばいい。
それに、そう。
普通に手芸部をやるだけなんて、そんなの私らしくないじゃない?
はい、また何か変なこと考えてるらしいですねカカたちは。まぁすぐに行動に移るわけではなさそうですので気長に見守ってやりましょう。
それにしても演劇……お楽しみ会で味をしめたか?