カカの天下461「ダイエット・ラン!」
「ねね、手芸クラブで何作る?」
「それってわたしたちで決めていいものなのかなっ」
「そういえばまだ一回も活動してないんだよねー」
「クラブ員の調整とかで時間かかってたらしいわよ。わたしたちみたいにすぐ解決方法を見つけられなかった人たちがいたみたい」
そうなんだー。あ、ども。カカです。
ただいま昼休み。給食も終わり、いつもの三人で雑談していたのですが……
「――カカ」
「もし好きに作っていいんだったら、私は折れかけた木っぽいアクセサリーを作りたいなー。クララちゃんにあげるの」
「――カカ」
「また微妙なもの作るね」
「――カカ!」
「きっと喜んでくれると思うんだー」
「カカカカカカカカカカカカ!!」
「なにアヤちゃん。それ新種の笑い方?」
「そういう魔女っぽい怪しい笑い方はサエすけのほうが似合うわよ?」
「かっかっか、サユカちゃんったらー」
「うっさい! あんたが私に気づかないからでしょ!」
おやおや、自称我が校のアイドル様はなにやらご立腹の様子。はてさて。
「どしたの。私に用事?」
「カカに、というか、サエとかサユカにもだけど……聞きたい、ことが、あって」
妙に歯切れ悪く言うアヤちゃん。さっきまで怒っていたかと思えば急におとなしくなったな。や、恥ずかしがってるのかな?
「あの、さ。あんたたちって……どうやって痩せてるの?」
は? と私たち三人の声が重なる。
「私さ。最近ちょっと体重がやばいのよ」
「とてもそうは見えないけど」
「普通から見たらそうかもしれないけど! アイドルたるもの痩せてるもんなの! 世の中のアイドルのプロポーションを見てみなさい。ズルしてるんじゃないかってくらい良いんだから!」
たしかにアイドルってそういうもんかもしれないけど……
「なんで私らに聞くのん」
「だって……その……あんたら、スタイルいいじゃない」
小学生にスタイルも何もないと思うけど。
「とにかくみんな痩せてるってこと! カカ、あんた何にもしてないのにそんな痩せてるの? 不公平よ!」
特に意識はしてないけど……
「しいて言うなら寝る前に死ぬほどトレーニングを」
「な、なんでそんなことしてるのよ!」
「習慣かな」
小さいころお姉に叩き込まれたんだよね。
「サエは!? あんた運動できないわりに細いじゃないの!」
「私は食べるときは食べるけどー、基本的には少食だからー」
サエちゃんは結構食べるイメージあったけど……言われてみれば給食で余ったのを食べてるわけでもないし、うちでご飯を食べるときにもおかわりしたりしない。きっと家での朝食や夕食も少ないんだろう。お菓子を食べても太らないわけだ。
それに比べて私やサユカンはおかわりして食べたいだけ食べて、さらにおやつも食べるタイプだ。
「サユカは!?」
「わたしは運動もしてないし結構食べるけど」
「ならなんで!?」
「恋すると痩せるのよ」
そりゃあんだけ全力で恋してればね。
「えと……あんたたちのを参考にするとなると、私はどうすればいいのかしら?」
ご飯を少なくするのは家でやってもらうとして、今できることと言ったら運動と恋かな。
「あんまり疲れるのは嫌なんだけど」
む、贅沢な。それなら……あれをああして……よし。
「サエちゃん、サユカン」
私が簡単に手順を説明すると、二人は快く頷いて早速作業にかかってくれた。
「へ? サエどこにいくのよ。サユカなにやってるのよ」
教室を出て行くサエちゃんと、ノートとシャーペンを取り出してサラサラと何かを書き始めるサユカン。それを見て困惑するアヤちゃんに、私はにっこりと微笑みかけた。
「しばらくお待ちください」
「……はぁ」
やがてサユカンが書き終わったノートのページを破り、四つ折りにして私に渡してきた。
「できたわよっ」
「ご苦労様。えっと……あ、そこの君」
続いて私はちょうどよく通りかかったクラスメイトに声をかける。
「なに?」
「はやて君ってさ、脚速かったよね」
「まぁ、それなりには」
「じゃさ、この手紙を体育館にいるニシカワ君に急いで届けてくれないかな。すごく大事な用件なの」
「うん、いいよ。どうせ暇だし」
特に疑問を持つこともなく引き受けてくれたはやて君は颯爽と走り去っていった。なかなかいい男だ。
「ねぇ、カカ。今の手紙なによ。ニッシー宛てらしいけど」
「手紙の内容はね……サユカン。なんて書いたの?」
「こほん――ずっと黙っててごめんなさいラブ。私、ずっと前からあなたのことが好きだったのラブ。きゃ、語尾がラブになるくらいあなたにラブだわbyアヤ坊」
お、アヤちゃんが漂白されたみたいに真っ白になった。
「そ、そそそ、それを書いた手紙を……ニッシーに?」
ぎぎぎ、と錆び付いたネジを回すみたいに首を動かして聞いてくるアヤちゃんに、私は晴れやかな笑顔で頷いた。
その瞬間。
アヤちゃん光の速さで猛ダッシュ。はてさて、配達人はやて君に彼女は追いつくことができるのか。今の鬼の形相を見る限り、あんなのが追ってきたらまず間違いなくはやて君は逃げるだろう。かくしてダイエット鬼ごっこの完成というわけだ。
「さすがサユカン。ラブレター書かせたら最強だね。いつもあんなこと考えてるの?」
「言わないでっ」
「ただまー」
「あ、サエちゃんおかえり。ちゃんとニシカワ君を隠しておいてくれた?」
「うん。タケダ君と喋ってるところをまとめてロッカーに押し込んでおいた。つっかえ棒もしといたよ」
これでよし。さすがの私でも本当にニシカワ君にあんな手紙を見せるつもりはない。私は手加減を知る女なのだ。
――数分後。
「ぜーはーぜーはー……か、カカ……ニシカワ、いなかったんだけど」
「あ、ご苦労様。じゃあその手紙は私が預かっておくよ」
「そ、そうか……それはともかくあのアヤさんはなんだったんだ……食い殺されるかと思った」
ひどい言われようだねアイドル。
「まぁ気にしなくていいよ。そのアヤちゃんはどしたの?」
「かなり引き離したけど、もうすぐ来ると思う……おぇ、疲れた。休んでいいか?」
「はいはい、どうぞ」
よほど必死に走っていたんだろうね。自分の席に座ったはやて君は机に突っ伏して、そのまま動かなくなってしまった。
そしてしばらくして。もっとヘロヘロなアヤちゃんがようやく戻ってきた。
「か……カカ……て……て、がみ……」
声を出すのも辛いらしいアヤちゃんは死にそうだ。やれやれ、仕方ないなぁ。私はこれ見よがしにさっき受け取った手紙を取り出して――
「あ、総理大臣だ。ちょうどいいとこに」
学校だということを微塵も気にせずにたまたま通りかかったネコの首輪に、その手紙を挟んでやった。
「――!!」
生存本能が危険を感知した総理大臣は猛ダッシュ。声も出せないアヤちゃんも負けずに爆ダッシュ。
「カカすけ……鬼ね、君。手加減とかしないわけ?」
「するわけないじゃん」
知っててもするとは限らない。
キーンコーンカーンコーン……あ、チャイム鳴っちゃった。
「アヤちゃんどうするのー?」
「えと、まぁ、残念でした」
大丈夫。いずれきっと一回り小さくなって(痩せて)帰ってきてくれるさ。
さ、授業授業……
あれ。
なんか忘れてるような。
ま、いっか。
久々にカカの容赦なさを書いてみました。
んむ、カカはやはりこうでないと。
あと書きたかったのが、サエちゃんは細いということ! ちゃっかりいろいろ食べてますけど、彼女は細くて儚くて髪の長い(?)女の子なんです!
あと、アヤちゃんはアイドル志向で「やせすぎ」を目指していますが、現時点では「やせている」な部類です。普通はそれで充分です。なので皆さんは作中のような無茶なダイエットは控えましょう。
あと……そうそう。感想1000目を踏んだ記念ということで特別に「はやて」様を特別出演させていただきました(超遅)。キャラ設定とか適当ですが笑 キリ番記念とかそんな感じで……
あと……なんか忘れてるような。
はて?