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カカの天下  作者: ルシカ
460/917

カカの天下460「クララいきます!」

 こんにちは、サエですー。


「クララです!!」


「あれ? クララちゃん。誰に挨拶したのー?」


「よくわかんないですけど、なんとなく言ったほうがいいような気がしたのです」


「そっかー」


 今日はこんなに行儀のいいクララちゃんと街を歩いています。これはクララちゃんからお願いしてきたことで、曰く「街にはフシギがいっぱいです! いろいろ教えてほしいのです!」だそうです。


 一番フシギなのは自分のくせにねー。


「それで、今日は何を教えればいいのかなー?」


「クララ、ずっと疑問に思ってたことがあるのです。あの人たちです」


 クララちゃんの指差す先には、疲れた顔で歩いているサラリーマンの皆様。土曜日だっていうのに大変だねー。お疲れさまですー。


「あの人たちは何者なのですか? 同じような服を着ていらっしゃいますが」


「あれはスーツって言ってねー」


「スーツ!?」


 あれ、何に驚いてるのかな。


「スーツってあれですか!? 着たらパワーアップしたり、変身したり、代わりに戦ったりするあのスーツですか!?」


 えっと……あれかな。よく知らないけどアニメとか戦隊もののヒーローが着たりする『なんとかスーツ』のこと言ってるのかな。どんなのがあるのかわかんないけど、とにかく着たらパワーアップして敵をやっつけるんだよね。


「じゃあじゃあ、あちらの皆さんは毎日戦っておられるのですね!?」


「そうとも言うかなー」


「日本を守るために!」


「うん、間違えてはいないよ」


「クララ感激しました! ちょっと応援してきます」


 言うが早いか、クララちゃんはダッシュで道行くサラリーマンへ突進していき……


「こんにちは、がんばってください!」


「へ? あ、ああ。ありがとう」


「どうも! いつもご苦労様です!」


「わっ、な、なんだよ……まぁ、ありがと」


「お疲れさまです! 今日は誰と戦うんですか?」


「へ、あ、んと、部長かな」


 次々と物怖じせずに声をかけていくクララちゃん。


 なんておもしろいんだろう。


 しばらくそんなことを繰り返して……やがてクララちゃんは晴れやかな顔でこちらに戻ってきた。


「クララ満足です!」


 うんうん、私もおもしろいものが見れて満足だよー。


「他に気になることはあるー?」


「はい! あちらの方々のことを教えてほしいです」


 クララちゃんの指差す先には、肩を組みながら歩いているカップルの皆様が。


「ああいう風にくっついている人がいっぱいいますけど、あれはどんな意味があるのですか?」


「あれはねー、うんとねー、肩を組んだりしてるとねー」


 わかりやすく言うと……


「子供ができるの」


「そんな重大な意味があったのですか!?」


 うん、間違ってはいないよね。将来、生むだろうし。何組かは。


「人の子供ってそんな簡単にできるものだったのですね……」


「うん、簡単にできすぎちゃうから気をつけなさい、って世間じゃ注意されてるんだよ」


 本当のことだよね。


「わかりました。じゃあクララ、祝ってきます!」


 元気良く言うと、クララちゃんは先ほどのように道行くカップルに向かって突進していった。


「こんにちは! おめでとうございます!」


「へ!? あ、うん、どうも。なにかくれるの? 違うのか」


 勝手にがっかりして去っていく人……


「どうも! 元気な子供が生まれるといいですね!」


「えぇ!? いや、僕ら、まだそこまでじゃ……ねぇ?」


「あんたの子供? アハハ、きもーい」


「泣いていいですか?」


 なんだか微妙な関係にトドメをさしたり……


「こんにちは! 男の子ですか? 女の子ですか?」


「あらぁ、あたしたちの、こ、と?」


「うっふぅん、どっちかって言われたらどっちなのかしらんアタシたちって」


「心は女よん」


「アタシもよん」


「でも身体は……いやん」


「いやぁん」


 オカマなカップルをなぜか喜ばせたり……


「日本の未来はあなたたちの子供にかかってます!!」


「そ、そうなのか……!」


「あの……私、前から言おうかと思ってたんだけど」


「待って、僕に言わせて! その……そろそろ子供、作らない?」


「喜んで! じゃあ早速!」


「Go!」


 なんだかカップルを後押ししてしまったり……


 クララちゃんはいー感じで暴走して私を楽しませてくれた。いやー、ツッコミがいないときのクララちゃんって本当に楽しいなー。


「クララ大満足です!」


 私も大満足ですー。


「他には何かある?」


「はい! あ、あの……あちらの、方々」


 クララちゃんの指差す先には、街路樹をパチパチと刈り込んでいる作業員の皆様が。


「あの人たちは何者なのですか!?」


「何者って……えっと、街にある木を管理する人たち、かなー?」


「管理も何もないです! あの人たちは皆の腕を叩き折って回って、最後には斧で胴体をぶった斬るんですよ!?」


 あー……木そのものであるクララちゃんにはそう見えるのかー。


「そして臓物を加工していろんなものを造ったり……おそろしやおそろしやです。人間怖いです斧怖いです。なんまいだぶなんまいだぶです」


 それ人間には効かないよー。どっちかというとクララちゃんらへんに効くよー。


 んー。でも業者さんだって木のためにやってることなんだよねー。あ、でも歩く人の危険がないようにするためでもあるのかー。だとすると、やっぱり人間の勝手な都合でひどいことしてることになるんだ……


「よし、抗議文でも書いてみよーか。木を切ったりするのは止められないと思うけど、資源を大切にして切るのを減らすことはできると思うしー」


「はい! できることがあるなら喜んでやります!」


「うんうん。木、本人からの抗議文だからきっと説得力あるよー」


 その後。


 私とクララちゃんは一通の抗議文を書き上げた。送る先は日本の偉い人。カカちゃんのお父さんにでも頼んでみようかと思う。


 書き上げた内容はというと……


『クララ、切られる木が可哀想です。みんな痛がってます。苦しんでます。腕を切られ、目むしられ耳を千切られ鼻を焼かれ、四肢をばら撒かれて内臓を削られて加工されて……見るも無残です。ひどすぎます。もしあなたが自分の骨を抜き取られ、それを家にされたらどんな気持ちですか? もしあなたが――以下略』 


「クララちゃん……いろんな言葉知ってるね」


「当然です! クララいろいろわからないことだらけですけど、本能に関してだけはすごいのです!」


「それってなんだか桜の精っていうより獣っぽいけど……何の本能?」


「生存本能です!!」


 なるほどー。それに関してはクララちゃんが先輩だー。


 ――と、いうわけで。


 みなさん、資源は大切にしましょー! というお話でしたー。


 いきましたクララちゃん! 

 我らが腹黒サエちゃんに楽しく遊ばれております。

 でも私が最終的に言いたかったのは……


 資源を大切にね! 自然だって生きてるんだから! 


 ということだけです。

 う、嘘じゃないですからね!?


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