カカの天下459「まだ見ぬ未来」
こんにちは、カカです。
今日ものんびり給食タイムを終えて、サエちゃんとサユカンと雑談をしていたのですが……
「『お残し』するごはいねぇがあああああああああ!!」
どっかで聞いたようなフレーズが向こうの教室から。
「きたわね、ヤツがっ!」
「きたみたいだねー」
「見にいこう」
三人そろって廊下に出てみると、ちょうど粛清し終えたらしいおばちゃんが教室から出てくるところでした。
「おーい、南おばちゃん!」
「あらま! 久しぶりね、未来のセクシーダイナマイツ!」
「その呼び方やめてください」
そういやこういう言い方する人だっけ。
「まーまー、いいじゃないのーセクシーダイナマイツ」
「そうよっ! ミスセクシーダイナマイツ」
「二人ともやめて」
「じゃーセクシーボンッ!!」
何がボンか。
「ならミスいい身体」
おじさんくさいよサユカン。
「むむー、おばちゃん!」
「あいよ」
「この二人もそんな感じで呼んでみて!」
おばちゃんは愉快そうに頷き、まずはサエちゃんをじろりと眺めた。
「あんたは未来の貧乳だね! 細っこい。しっかり食べなよ」
「ひんにゅーってなに?」
「カカすけったらそんなことも知らないのっ? 貧乏な胸のことよ」
そうなのか。それはサエちゃんにとってもショック……かと思いきや。
「あははー、最近はそういうニーズが多いので構いませんよー」
よくわかんないけど平気みたいだった。
じゃあ、サユカンは?
「未来のツンデレさね」
「なんでわたしだけ身体関係ないんですかっ!?」
「じゃ未来のデレデレ」
「「間違いない」」
「なんで即答してんのよそこの二人っ!?」
だって間違いないかと。
「あっはっは! ほら最近さ、ツンデレって言葉が流行ってるんでしょ? あたいにゃよくわかんないけど、ちょっと使ってみたかったのよ! ごめんねぇ」
バンバン! とサユカンの肩を叩く南おばちゃん。痛そうだけど、その気さくさが心地いいのかサユカンは笑ってる。うん、この人はいい人だ。
と、そんなおばちゃんの笑い声を聞きつけてきたのか、見慣れた先生二人が廊下の向こうから歩いてくるのが見えた。
「あらまぁ、テンカちゃんに教頭! 元気で食べてる!?」
「当然だ。食については昔から南さんにうるさく言われているからな」
「へぇ、教頭もなんだ。オレもよ、小さいころからおばちゃんには躾けられてな」
おお、そうなんだ。意外な繋がりが……二人とも身内だったりするのかな。
その疑問を口にしようとしたんだけど、サエちゃんに先を越された。
「ねーねー、おばちゃーん」
「ん、なんだい」
「教頭先生とテンカ先生を、私たちを呼んでる言い方にするとー、どんな風になるんですかー」
あ、それは興味ある。私が「未来のセクシーダイナマイツ」だったりするなら……
「そうだねぇ。教頭は……昔は格好よかった」
「やかましい」
「テンカちゃんは……昔は女の子」
「待てやコラ。たしかにそうだが、それだと今は女じゃねぇみてーじゃねぇか!」
や、その通りだと思うんですけど。
「その通りだよ」
うわハッキリ言ったこの人。
「まったく……小さい頃は可愛く『あたち』とか言ってたくせに、いつからこんな男言葉を覚えるようになったのかね?」
「うるせぇな。オレにもいろいろあったんだよ」
「あっはっは! ま、そりゃそうだろうね。あたいが見れるのは食事くらいなもんだ。心のほうはとんとわからないからねぇ! だからこそ食事に関してだけは本気で見ていくからね、今後も覚悟しときなよ!」
豪快に笑い飛ばし、豪快に断言して、南おばちゃんはのっしのっしと去っていった。
「元気だよなぁ、あのおばちゃん」
「うむ、昔からまったく変わっておらん」
お、ちょうどいい。さっき思ったこと聞いてみよう。
「あのあの、テンカ先生も教頭先生もやけに親しげでしたけど、親戚か何かだったりするんですか?」
「あ、それわたしも気になったわっ! おばちゃん昔のこととかよく知ってましたよねっ!」
「南おばちゃんが親戚ということはー、セイジ食堂やファミレス東治の弟さんたちもみんなの血縁ということにー……なんだかすごい話ですね」
サエちゃんの言うとおりだとしたら、たしかにすごい繋がり方だ。
しかし。
「いんや、ただの近所のおばさんだ」「否、単に近所に住んでいただけの関係だ」
――なんて、二人ともあっさりと首を横に振るのだった。
「えっ!? 近所のおばちゃんってだけで二人とも知ってたんですか!?」
「いや、あの人の近所に住んでいる人間は大抵知ってるぞ。てめぇらも見ただろ? あの性格だ、人んちの食事情にまでズンズン口を出してくんだよ」
「それだけではない。彼女は町内で料理教室を開いていてな、それが栄養バランスまで考えられた完璧なものだと評判でもある。さらには先ほどサエ君の言ったセイジ食堂やファミレス東治にまでテコ入れしているらしいぞ。栄養バランスや料理の出来を確認しにいくそうだ」
「なんだか命かけてますねー」
「あぁ、まさしくその通りだろうな。あの人は誰が見ても文字通り『給食のおばちゃん』なんだ」
「私は彼女と歳も近いから昔から知っていてな。なぜなら有名だったからだ。長女に振り回されまくる二人の弟……源三三兄弟の名前はな。そう、昔からああだよ、彼女は」
ゲンゾウさんきょーだい。ゲンゾウって苗字だったんだ……
「カカちゃんが大きくなったらああなるかもねー」
「うそっ!?」
「あ、ちょっと想像できるかもっ。給食のおばちゃんにはならなくても、今とあんまり変わらなくて騒ぎを起こしてる気がするわっ!」
「まぁ間違いなく有名にはなりそうだな」
「同意だ」
教頭まで!
むー、なにさなにさ。
「有名になるんなら私だけじゃなくてサエちゃんもサユカンもセットだよ、絶対!」
「まぁ、間違いねぇな」
「同感だ」
そら見たことか!
血のつながりなんかなくたって、私たち三人はセットなんだからね!
「ほどほどにしとけよ、未来の問題児ども」
……なんで問題児と断定されるん?
久々におばちゃんの登場です。マジメっぽいサブタイトルのわりには中身はこんなんです笑
ちなみにおばちゃんが「未来の〜」と言っているのはあくまで食事情を見ての予想ですので、必ずそうなるとは限らないのであしからず笑
……あ、サユカちゃんの場合は必ずといってもいいかも笑
まぁ、ともかく。
みなさん、食事はしっかりとりましょうね^^