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カカの天下  作者: ルシカ
457/917

カカの天下457「休み時間、そのいち」

 キーン、コーン、カーン、コーン!


 よう、テンカだ。いちおー言っておくが、今の音はオレの登場テーマ音ってわけじゃねぇからな。授業が終わったチャイムの音だ。


 さて……


 どかんと椅子に座り、教卓を上から抱きしめるように上半身を預けて……だらー……オレは死んでる……死んでるっぽい状態……油断すると寝そうだ。意外と気持ちいいのな机の上って。


「あの、テンカ先生?」


「んだよ」


「授業、終わりましたけど……職員室に戻らなくていいんですか?」


「どうせ次の授業もオレがここでやるんじゃねぇか。面倒だからまとめて準備してきたんだよ。だから戻らなくていーの」


「そ、そうですか」


 そそくさと自分の席に戻っていく……えっと……生徒そのいち。


 名前忘れた。


 まーともかくそういうこった。今日はオレもここで休み時間を取る。そしてついでにガキどもが休み時間をどういう風に過ごしているか観察しようという魂胆だ。教師たるもの、生徒の様子には注意しねーといけねぇからな。


 なんでかって? いつヤツらがおもしろいことするかわかんねーからだろが。


 さて、と。教卓に抱きついたまま教室を見渡す。ガキどもは何してる?


 あれは……サエとサユカか。なんか喋ってるな。


「ねーねーサエすけっ、トメさんからもらったぬいぐるみの名前、何がいいと思うっ?」


「どんなのもらったのー?」


「おっきーなオラウータンのぬいぐるみ。こないだわたしが買ったオランダの親らしいわよ。トメさんったら、カカすけにオランダの話を聞いて、わざわざ探してきてくれたんだってっ」


「あー、おらおら言いながら買ったやつね。ぬいぐるみの名前がオランダになったのはたしか……オラんだ! とか言ってたからだよね」


「そうよ。おらおらっ」


「じゃー逆に、オマエんだ! っていうのはどうかなー」


「オマエンダ? なんか言いにくいわね」


「じゃーもう直球で、オラ親だ! でいいんじゃ」


「オラそんなのいやだっ!」


 はー、ぬいぐるみなんか買ってやったのかトメのやつ。買うとき恥ずかしかっただろうなー。今度からかってやろ。ぬいぐるみに名前つける恥ずかしさには負けるだろうが。


 ……ふむ。サユカのやつ、やっぱトメって名前のぬいぐるみも持ってるんだろーか。今度聞いてみよう。


 ん? なんだか廊下が騒がしいような。


 だらんとしたまま首だけを横に向けて、開きっぱなしの教室の扉の向こうを見てみる。


「あははは!」


 ドドドドド!


 ……なんか横切ったな、今。


 身体を起こすのは億劫だったが気になってしまったので、しぶしぶ抱きついていた教卓を手放す。のろのろと歩いて廊下を覗くと、なんかいた。


 オレだけじゃなく廊下にいる生徒、その全員が唖然としてそれを見つめている。そのうちの一人の生徒がみんなの気持ちを代弁してくれた。


「なあ、さっきからカカが見知らぬ子をおんぶしながら爆笑して爆走してるけど、アレなに?」


 わからん。


「あははははははは!!」


 ドドドドドドドドドドド!!


「ここ怖いです怖いです! ブレーキはどこですかこれですか! えい! えい!」


「どこを叩いてる!? そこはアクセルだー! すぴーどあーっぷ!」


「クララしょっくです!」


「あははははははははははは!!」


 ズドドドドドドドドドドドド!!


 よーわからんけど楽しそー。にしてもあの子。たしか教頭から何か聞いてたような……内容は覚えてないが、たしか放っておけみたいな話だったはず。んじゃ放っておこう。


 さて教卓に戻るか、と踵を返そうとしたところで、意外な二人組が廊下の向こうから歩いてくるのが見えた。ああ、そういやさっきの授業が終わるとき、イチョウにプリントを運んでくるように頼んだんだった。しかしそれをアヤが手伝っているとは。


「いいのですか? 手伝っていただいて」


「いいわけないでしょ。アイドルたるもの、プリントなんか私が『ほしい』と手を差し出したら男子がサッと持ってきてくれるくらいがちょうどいいのよ!」


「そ、それは便利ですね! でしたら、えっと、なぜにわたくしを手伝ってくださるのですか?」


「それやってたら評判悪くなったから」


 そらそうだ。


 それにしてもあの二人……同じく合唱部に入ったし、意外とうまくやってんのな。実質アヤと仲いいのってニシカワくらいだったからちょっと心配だったんだよな。よかったよかった。


 お? そのニシカワは――他のクラスのヤツと喋ってんな。あぁ。相手は財布、じゃなくてタケダか。


「君も懲りずによく来るねぇ」


「愛ゆえに、仕方のないことだ! そう言うニシムラ君だって」


「あ、僕の名前はニシカワね」


「……先週はニシムラだったではないか」


「週替わりなんだよ」


 オマエの名前は定食か。


「と、ともかく! 君だってこの間、土曜日に授業があったとき――そう、お楽しみ会の練習のときだ! アヤ君にお弁当を作ってきていただろう! それこそ愛の証ではないのか?」


「君さ、愛とか言ってて恥ずかしくない?」


「ふっ、そのようなことを気にしていては本物の愛などつかめまい!」


「暑苦し……カカちゃんの嫌いそうなタイプだ」


「何か言ったか?」


「いんや、なんにもー。弁当はね、仕方なくだよ。アヤ坊んちは仕事忙しいから、そういうときのお昼は親からお金もらって『適当に買って済まして』って言われてるんだけど……あいつ、お金あったらすぐCDに使うから。食費が残らないんだよ」


「ほほう、それでニシカワ君が弁当を?」


「両親の分も作ってるから、三人分も四人分も変わらないしねー」


「……君、意外となんでもできるよな。俺は勉強しかできん。料理も運動もうまくできないし、そしてなにより」


「恋愛がうまくできないよね」


「そうそ――黙れ小僧!!」


 小僧がそれ言うな。まぁ男子は男子なりに仲良くやってるようだな。このクラスって女子ばっか目立ってるからわかりにくいが……お?


 キーン、コーン、カーン、コーン!


 さて、授業だ。


 ゆっくり休んだし、頑張るかね。

 

 ――うむ、なかなかに有意義な休み時間だった。

 

 特別オチのない、まったりとした(?)休み時間をお届けしましたー。

 

 しばらくはこんな感じでダラダラいこーかと思いマス。

 誕生日がいろんな意味で激しかったので……ね笑

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