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カカの天下  作者: ルシカ
449/917

カカの天下449「将軍様、失言でござる」

「んぐんぐ……そういやそろそろ、おまえさんとサユカの誕生日らしいな」


「んぐ、そうだけど」


 お酒飲みながらこんばんは、トメです。


 今日も今日とて行きつけの居酒屋『病院』で、のんびりテンと飲んでます。


「なんだよ。なんかくれるのか?」


「はっ、誕生日をわざわざ祝うような歳でもないだろ」


「それもそっか。しかし歳をとるにつれてそういうイベントがなくなるのも悲しいもんだよな」


「おい、てめぇ。さもオレが年寄りみたいな言い方すんじゃねぇよ。トメと大して変わんねぇだろ」


 たしかに。テンは僕より一つ上なだけだしな。


「で、サユカに何をやるんだ? そういうの細かいトメのことだから、誕生日プレゼントとか買ったんだろ」


「ああ、一応な」


「よしよし、なるほど。で、どんなおもしろいもんをやるんだ?」


 この女はなぜ僕らの生活のことごとくをコメディにしようとするんだろう。


「別におもしろくないよ。普通に喜びそうなものを買った」


「じゃー買いなおせよ」


「無茶言うな」


「トメ。おまえな、いくらツッコミだからってボケなくていいわけじゃないんだぞ?」


 や、だからさ。なんでうちらをお笑い芸人扱いしてんのさ。


「こういうもんは誠意が大事だろ」


「へーへー、さすが誠意大将軍は違いますね」


 さすが酔っ払いは言うことが違いますね。んなこと言ってたら征夷大将軍のバチが当たるぞ。


「でよ、そんな誠意大将軍に聞くが」


「大将軍はやめろ」


「サユカが何をくれても誠意を持って受け取るんだな?」


「当然だ」


「何を、くれても?」


 う……


 サユカちゃん一人なら心配はしていない。あの子は暴走さえしなければ至極まともな子なのだから。


 そう、暴走さえしなければ。問題はあの子を簡単に暴走させてしまうお子様が二人、いつも一緒にいることだ。


「なんでも、というわけには、いかない、かな」


「んだとぅ。おい将軍様、自分のプレゼントは押し付けといて、あっちからのは受け取らねぇつもりか。なんつう勝手、さすが軍の将だ」


「何の軍だよ」


「軍手?」


 それ軍じゃねーよ。


「とにかく、物によるって言ってるんだよ。僕はサユカちゃんに似合いそうなピッタリなものをあげるけど、あっちがそうとは限らないじゃないか」


「なるほど。トメに似合ってればいいんだな」


「……なんだよその目は。この生ビールが似合う女め」


「そんなにほめるなよ、台所が似合う男」


「やかましいわ」


「台所大将軍」


「変な風に言い直すな」


 酔うとホント変な言葉が出てくるよな。僕も人のことは言えないけど。


「でよ、軍手野郎」


「将軍はどこいった」


「細かいこと気にすんな。あのよ、もしサユカがメイド服なんかくれたりしたら――誠意台所将軍はどうするのかね」


 は? メイド服?


「そんなもんくれるわけないだろ」


「わかんねぇぞ。似合うし」


「似合わねーよ」


「いいか、トメ。似合うか似合わないかは自分が決めることじゃない。周りの目が決めることだ」


 う、もっともなことを。


「そしておまえはメイド姿が似合う」


 そしてもっともじゃないことを即座に言いやがって。


「軍手も似合うが」


 こだわるね。


「賭けてもいい。なにせ台所の将軍だ、ピッタリじゃないか」


「……気色悪いこと言うなよな」


「ほほう。じゃあサユカがメイド服をくれたら破り捨てると? 誠意はどこいきやがった」


 あー、面倒くさいなもう。どうせくれるわけないし、適当な返事でいいや。


「はいはい、もしサユカちゃんがそんなのくれたら着てあげますよ」


「おぉ? 本気か」


「おーおー完璧に着こなしてやりますよ。ご主人様、なんなりとお申し付けをーって感じで言いなりになってやりますよ」


「ネコ耳と尻尾もつけていいか?」


「どうぞ?」


「語尾は『にゃん』でもオッケーか!?」


「好きにしろよ。『にゃん』でも『ぴょん』でも『でちゅ』でも『ばぶぅ』でも『ちゃーん』でも『ごっつぁんです』でも、なんでも持ってこいってんだ」


「男に二言はないな?」


「ないよ」


「二言があったら女だぞ。オカマ言葉でやらせるぞ。『いやーん、うっふーん』とか言わせるぞ」


 結局恥ずかしい言葉使いになるわけね。でもまーいいだろう。どうせナイだろうし。


「あぁ、好きにしろ」


「そうかそうか。ところでな」


「んだよテン。改まって」


「昨日、カカたちの作戦会議をちらっと盗み聞きしたんだよ。おまえらの誕生日のやつな」


「……それで?」


「それだけ」


 二人とも黙ってジョッキを傾ける。


 つまみを口に入れる。


 もっかいジョッキを傾ける。


 ぷはぁ。


 …………んっと。


「まさか、ないよな?」


 テンはニヤニヤするだけで、答えてくれなかった。


 まさか、ねぇ?


 …………ねぇ。


「なぁ、まさか」


「とりあえずここの勘定はもってやるよ。これがオレの誕生日プレゼントな」


「あの、できれば『僕の質問の答え』っていうプレゼントをもらうわけにはいきませんか? ねぇ、なぁっ! 答えろよオイ!!」


「けけけ」


 テンは笑うばっかりで答えてくれなかった。


 僕の明日はどっちだ!?


 言っちゃいましたねぇ。

 いろいろとねぇ。

 将軍様。

 言ったからには責任はとってもらいますからね?

 

 ……や、あくまでサユカちゃんからのプレゼントがアレだった場合の話ですけどね^^


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