カカの天下448「CM遊び」
こんにちは、カカです。
夕食も終わり、私とトメ兄は二人してぼんやりとバラエティ番組などを見ていたのですが……
「トメ兄。最近の芸人さんっておもしろい人少ないね」
「まぁ、そうかな」
「これなら私たちのほうがよっぽどおもしろいよ」
「コラコラ、向こうはプロだぞ?」
なにおう。私だって変なこと考えるプロだぞ。
例えば、そう。今CM入ったけどさ。
『っかーっ! やっぱビールはこのキレだよな! キレる生、新登場!』
これを私なりに変換してみると。
キレる生……
『オイ何見てんだよ、あぁん!? おーし! 見たからには買うんだろうな? あ、オイてめぇコラ、俺を飲まねぇのかよ!? 俺が安いからってバカにしてんだろオラァ! いいからいっぺん飲んでみろってんだ!』
「……ぷ」
「どうしたカカ」
「や、なんでもない」
缶が顔になってキレまくってる様子を想像すると、ちょっとおもしろかった。
さて、他におもしろいCMないかな。
『フルーツさわやか、ぶつぶつオレンジ!』
ぶつぶつオレンジ……
『……そりゃさ、普通のオレンジジュースのほうがおいしいのはわかるよ? でもさ、僕たちだってせっかく自販機とかで売ってるんだしさ、少しくらい流行ってくれてもいいじゃんさ。果肉たっぷりでおいしいと思うんだよ絶対。フルーツ好きなら最高なはずさ。それなのに……それなのに……ぶつぶつ』
「ぶつぶつというか愚痴愚痴オレンジ……」
「カカー? どこ見て何言ってんだー?」
「や、ちょっと考えごとしてただけ」
うーん、世の中おもしろいもんばっかりだ。
他には?
『世にもすばらしい便座カバー、あなたのお尻を守ります』
べんざカバー……
『ヘイ! わたくしベンといいマース。あなたのおケツ守りマース!』
ベン The カバー!
「ぶっ!」
「ど、どうしたカカ? 何か笑うとこあったか?」
「い、いや……」
なぜか筋肉マッスルお兄さんがいろんな人のお尻をガードしてる映像が流れてしまった。
次は何だろ。えっと、本屋さんのCMかな?
『ブックス矢田』
ぶっくすやだ……
ぶっ、くす、やだ……?
『ブッ(おならの音)クスクス、やだー(蔑みの声)』
「強引だよ!」
言いながらも笑い転げてしまう私。
「なぁカカ。教えてくれ。どこをどうしたらそんなにCMを楽しめるんだ?」
「く……くくく……え、えっとね」
ぜーはーと荒い呼吸を整えて、もう一度テレビに視線を向ける。
『黒いお菓子の専門屋、ブラックブランドが新たなクッキーをお届け! 名づけてブラブラクッキー!』
ブラブラ……クッキーが……
『こらクッキー! あんたいつまでもブラブラしてないで働きなさい!』
『うるせーなー、仕方ねーだろ。面接行くといっつも当たって砕けちまうんだからよ! クッキーなめんなよ。飴なめろ』
「もっとがんばれよ!」
言いながら爆笑。
「なぁ! 何がそんなにおもしろいんだよ!!」
はー、はー……あー苦しい。どうしよう、これからあのクッキーを店頭で見るたびに頭の中で就職しないダメ息子と苦労人のお母さんが浮かびそうだ。
「なぁったらなぁー」
あーもう。トメ兄うるさいな。
「ちょっとCMを自分なりにアレンジしてただけだよ」
「はぁ、アレンジねぇ。今までのCMはおまえの中で一体どうなったんだ?」
「えっとね」
どうなるかな。えーっと、えーっと。まとめると。
「ぶちキレる生ビールと愚痴るオレンジ」
「は?」
「そしてお尻を守るベンが登場! でもおならブーしてクスクス笑われて」
「はぁ?」
「そんなみんなが就職のために頑張るCM」
「はあぁ?」
む、せっかく説明してあげたのに変な顔するなぁトメ兄。
「就職……できるかなぁ」
「わからん。何がわからないってカカの頭ん中がわからん」
がんばれ、生オレンジベンクッキー。
あれ、繋げたら何かにありそうな名前に。
「ねーねートメ兄。生オレンジベンクッキーって作れる?」
「そんなわけわからんもん作れません」
「えー、なんとなくそんな感じのものでいいんだよ」
「あーもー、長年一緒に住んでてどうしてそんなもん欲しがるに至ったかわからないのが妙に悔しい……で、なんだって? 生のオレンジ使ったクッキー用意すればいいのか」
「ベンを忘れちゃだめだよ」
「ベンってなにさ」
「お尻の――」
「便?」
「そうそう」
「クッキーにするの?」
「そうそう」
「誰が食べるの」
「就職できない皆さん」
「おまえ鬼だろ」
「それ食べて頑張ってもらうんだー」
というか、食べたくなかったら働くのだ!
――なんて、今日も今日とて思いつきに任せて遊ぶのでした。
なんでもないときのカカの思考を追ってみました。
あんな遊び、結構できるものありそうですよね、切れてるチーズの様子を思い浮かべたりとか笑