カカの天下446「どっちのプレゼント?」
こんにちは、サユカです。
今日はカカすけサエすけと三人で商店街を散策しています。それというのも――来週にあるトメさんの誕生日に贈るプレゼントを選ぶためなのですっ!
まぁ、その日はわたしの誕生日でもあるわけで。二人としてはわたしにも内緒で話を進めたかったらしいんだけど……今回の企み上、そういうわけにもいかなくなったそうよっ! 何をしてくれるのかは知らないけどねっ。
そんなわけで今、わたしたちは服屋さんにいるんだけど。
「さぁサユカン」
「どんな恥ずかしい格好をして自分をプレゼントするのー?」
「またそれかいっ!?」
こいつらはこれしかないのかしらっ。
というか、わたしにそれしかないと思ってるのかしらっ!
「まーまーサユカン。クリスマスの衣装がウケたんだし、今回もその勢いで攻めたほうがきっと効果的だよ?」
「そーそー。まずは私たちのプランを聞いてみてよ」
む……そ、そうね。まぁ、聞くだけなら。
「よし! じゃあまずは私ね。トメ兄へのプレゼントが、このエプロンドレスなサユカンだった場合! メイドさんっぽくなるから――」
ぽわわわーんとメルヘンな音をたてながら、想像シーンへと移ります。
『トメさん……いえ、ご主人様っ』
『さ、サユカちゃん。その格好は……!』
『誕生日おめでとうございます、その、こんなわたしでよければ、もらってくれないでしょうかっ』
『喜んで!』
『あ、ありがとうございますっ! それで、その、ご命令がありましたらなんなりとお申し付け――』
『じゃあ、脱いで』
『えっ、でもっ』
『命令だよ。脱ぎなさい。ほら、半分でいいから』
『は、半分ってそんな、あ、ああ、旦那様――』
カカプラン終了。
「どうよ!」
「どうもこうもないわよっ! なによそれっ!? トメさんの性格変わってるじゃないのっ!!」
「ちょっと凶暴にしてみました」
「せんでいいわっ!! そんなトメさん嫌――でもないけどさっ」
「ご主人様か旦那様か、悩むとこだよね」
「よーし、次は私ねー」
うぅ、相変わらずこうなるとわたしの文句なんか聞きやしないんだからこいつらっ!
「私のオススメはこれー。トメお兄さんへのプレゼントが、このウェイトレスの制服サユカンだった場合」
……ねぇ、この店なんの店? やたらと変な服売ってない? そんな疑問は誰にも届くことなく、再びぽややーんと想像シーンへ。
『いらっしゃいませ、トメさ――お客様』
『おや、可愛らしい店員さんだね(キラーン)』
『ご注文はいかがなさいますか?』
『そうだな……君を、もらおうか(キララーン)』
『ほ、ホットとアイスがございますが、いかがなさいますか?』
『へぇ、どういう意味だい?』
『ホットがデレ、アイスがツンでございます』
『ハハ、なるほど。いま流行りのツンデレというやつだね』
『いかがなさいますか?』
『火傷するくらいの、ホットで(キラキラリーン)』
『ああ、お客、様……』
サエプラン終了。
「どーよ!」
「だからどーもこうもないわよっ! トメさんの性格違うって言ってるでしょっ!!」
「ちょっと色男にしてキラキラさせてみましたー」
「せんでいいって言ってるでしょっ!! トメさんは元から色男だしキラキラしてるしっ」
「えー、トメお兄さんって元からこんな感じなの?」
「キモーい」
「そうじゃなくてっ!!」
はぁ……はぁ……怒鳴り疲れたわっ。
「サユカン、そんなに文句言うなら他にプレゼント案を出してみてよ」
「そうだよそうだよー」
む……いいわよっ。間違いなく君ら二人のプランよりはまともになるんだからっ!
えっと、そもそもプレゼントがわたしっていうのが間違ってるのよねっ。普通、プレゼントっていうのは何かをあげるものなんだからっ!
トメさんにあげるものは何がいいか――そんなことを考えながら周りを見渡しても変な服しかなかったんだけど、なぜかさっきカカすけがオススメしたエプロンドレスが目に留まった。
エプロンドレス……メイド……これを……もし……トメさんにあげたら……
ぽやややーん。
『あ、あの……ご、ご主人様、僕、僕……』
「ぶはっ!!」
「うあぁ、どしたのサユカン!」
「鼻血出てるよー?」
し、刺激が強すぎたわっ……トメさんのメイド姿なんて……で、でも、えっと、さっきのカカすけの想像だと、この後どうなってたっけ……?
ぽやややーん。
『ぼ、僕、恥ずかしいです、ご主人様ぁ』
『ダメよっ。脱ぎなさい。ほら、半分でいいからっ!』
『あ、あーれぇー!』
「ぶはぁっ!!」
「うぉあお! ほ、本当にどしたのサユカン!?」
「鼻血がだばだば出てるよ? はい、ティッシュー」
「あ、ありがと……っ」
わ、わたしってば何考えてたのかしらっ!? トメさんにあんな格好させてあまつさえ……しかも半分ってなによ半分って! 全部じゃいけないのっ!? や、全部見たいってわけじゃないわけでもないけどっていうかああもう静まれわたしの心!
「サーユカン!」
「そんなに顔を真っ赤にして、何を想像してたのかなー?」
「私たちにもおせーてー」
「絶対、イヤッ!!」
死んでも教えるもんですかっ!! こここ、これじゃわたしへのプレゼントになっちゃうじゃないのっ! しかも致死量の!
「はいはいっ。もうおしまい! トメさんへのプレゼントはわたしが自分一人で選ぶからっ!」
「えー」
「君らの予定じゃわたしがプレゼントさえ用意してればいいんでしょっ! ならそれでいいじゃないっ」
「そうだけどさー」
「つまんなーい」
「いいから他の店いくわよっ! 見るだけ見て選んで、君らがいないときに買いにくるわっ」
「「えー」」
不満げな二人の背中を押してさっさと店を出る。
――ご主人様ぁ。
み、店を出る!
――僕、僕、恥ずかしいです。
出るったら出るんだからっ!! 何にも聞こえないんだからっ!
――何でもお申し付けください、サユカ様。
「…………!!」
次の日。
一人で商店街にきたわたしは、その服屋へ入っていった。
そして、エプロンドレスが売っていた場所へと足を運び――
久々にサユカ流妄想爆発話です。
……爆発しすぎ? いろいろとツッコミがきそうですが、まぁ、いつものことですねっ(ぇ
果たしてサユカちゃんはあのエプロンドレスを買ったのでしょうか。真相は誕生日に明らかにっ!