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カカの天下  作者: ルシカ
443/917

カカの天下443「秘密の相談」

「んー、おいしー」


「……はぁ」


 こんにちは、サラです。


 いきなりため息をついてすいません。実は最近悩んでいるのです。


「もぐもぐもぐ」


 その悩みについてじっくり考えようと、ファミレスなんかに一人で来てみたのですが……


「どうしたんですか。食べないんですかー?」


「いえ……私はこんなとこで何をしているんだろう、なんて思いまして」


「お料理を前にジッとしているということはー、犬が『待て』してるみたいですね」


「誰が犬ですか!」


「あははー。このメス犬」


「老犬に言われたくないです!」


 はぁ……あ、またため息ついちゃいました。まったくもー、ただでさえ悩みがあるのに!


「ほんと、なんであなたなんかとご飯を食べてるんでしょうか」


「仕方ないじゃないですかー。席が空いてなかったんですから」


 そうなんです、私がこの店に来たときは満席だったのです。それで仕方なく帰ろうとしたら、たまたま入り口近くのテーブルに座っていた天敵、サカイさんと目があって……それに目ざとく気づいた店員さんが「お知り合いの方ですか? でしたら――」と言葉たくみに相席をすすめてきて、いつのまにか一緒にご飯を食べることになっていました。


 そんなつもりはさらさらなかったのに、店員さんの話術に負けました……


「サラだけにですか? さむーい」


「人の心を読まないでください!」


 あーもう、最悪。ほんと最悪です!


 さっさと食べて帰りましょう……


 そう思ったのに。


「それで、何を悩んでるんですかー?」


「……だから心を読まないでくださいって言ってるのに」


 私がわかりやすいのでしょうか、それともこの人が妙に鋭いのでしょうか。


「まーまー話してみなさいなー」


「相談に乗ってくれるんですか?」


「ううん。笑ってあげるー」


「帰ります」


「まーまー」


 くい、と目の前に並んでいる料理を指差されて思いとどまります。うぅ、せっかくのお料理を食べずに帰るのは失礼ですよね。


「はぁ……もーいいです。どうせあなたに話しても何にもなりませんから、あえて愚痴ります。聞いてください」


「ごーごー」


「実はですね。私、今まで勢いのままトメさんのこと追いかけてたんですけど……これって本当にトメさんが好きってことなのかな、と疑問に思いまして」


 自分でも意外なほど言葉がすらすら出てきました。多分誰かに聞いてもらいたかったんでしょう。まさかこんな人に話すことになるとは思いませんでしたけど。


「――私、昔から勢いに任せて行動しちゃうんです。気になってた男の子といい雰囲気になったら勢いで告白しちゃったり」


 サカイさんは「あらあら」と口元に手を当て、にっこりと微笑みました。


「なんてバカなんでしょう」


「なんて直球なお言葉なんでしょう」


 キレそうです。


「そ、それでですね。さらに付き合った人と勢いで別れることも多いんです。彼が女の子と歩いてるのを見たら、それだけで浮気と思っちゃって……」


「なんて短気なんでしょう」


「い、いぃえぇ、こうやってあなたと話せているあたり、かなり根気強いと思いますよ私は……!」


 気にしない。気にしない。話の続き!


「トメさんの周りには女の人がいっぱいいますよね。でもなぜか浮気だー! って怒ったりする気にはなれないんです。あ、いえ、別に付き合ってるわけじゃないから当たり前かもですけど、でも前の私なら好きな人が誰かと歩いてるだけでムカムカしたり……だから、こう、トメさんのこと、本当は好きじゃないんでしょうか? なんて思ってしまって」


 先日、再び勢いに任せてトメさんに迫りました。でもいきなり結婚しましょうだなんて、いくら無鉄砲な私でも行きすぎです。だから急に恥ずかしくなって逃げ出しました。


 そして心の中に立ち止まって、いろいろ考えていたら……いつの間にかこんな疑問が生まれてしまったのです。


「いつもの恋愛と違う気がするんです。うまく説明できないですけど、何かが足りないような……何が足りないんでしょうかね」


「頭じゃないでしょうかー」


「ほんとぶっ飛ばしますよ?」


 この人は話をマジメに聞けないのでしょうか……いえ、サカイさん大人ですし。なんだかんだ言って助言の一つくらいくれますよね!


「ごちそうさまでした。ではー」


「待ちんしゃい!!」


 思わず私っぽくない言葉が出てしまいましたっ。


「ここまで聞いたんですから何かコメントするのが筋でしょう!?」


「あなたはバカですねー」


「あなたほんとムカつきますね!」


 私は怒鳴りました。


 普段の気弱な私からは考えられないほどの大声を出して。


 だってこの人。ムカつくんですもん。こんなに私がムカつく相手、初めて見ました。


 だから相談してみたのに。


「だってバカとしか言いようがないじゃないですかー」


 そう拗ねて睨みつけたのが効いたのでしょうか。


「もともとこの世に説明できる恋愛なんてないでしょー? 勢いなんてものがあるなら、余計なこと考えないでそれに任せればいいじゃないですか」 


 なんだかんだ言いながら。


 サカイさんはそんな助言を残して去っていきました。


「あ。それも、そっか」


 古今東西、恋愛小説は多々あれど。


 人の気持ちなんてものを完璧に表したものなんて、在りはしないのではないでしょうか。


 とすると、私は……自分の中にある勢いに素直になればいいだけなのかもしれません。勢いに逆らったり、無理やり立ち止まったりするのが無駄だというのなら――


 よし。


 納得できました。


 あれ。


 何か聞こえました。


 隣の隣のテーブルからです。


 なになに?


 トメさんとサユカちゃんが誕生日に結婚?


 よし。


 勢いに任せて邪魔しましょう。


 勢い任せに行動してしまっていたサラさんの心情をお届けしました。

 サユカちゃんの気持ちは落ち着きましたが、果たしてサラさんの気持ちはどんな形になるのでしょうか。


 ただ一つ、これだけは言います。

 しばらくシリアス系は、ないです!

 つまり……?笑

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