カカの天下442「ひみつのそうだん!」
「ここの白玉パフェおいしいねー」
「でしょ。しかもそれね、白玉増やしてくれたらしいよ。知り合いサービスで」
「わー。カカちゃんさまさまさんまだねー」
「へへー、そんなに『さま』つけて褒めなくてもー……最後なんて言った?」
こんにちは、カカでっす。さんまじゃないよ。
今日はファミレス東治でサエちゃんとお茶してます。お茶なら喫茶店のほうがいい気もしますが、いま言った通り、この店だと店長やキリヤ君がサービスしてくれるのです。や、可愛い子って得だね。
「さてさて、そろそろ本題に入ろっか」
「うんうんー」
ここにはいつも一緒にいるサユカンやトメ兄がいません。
なぜなら――二人の誕生日についての会議をするからです!
「五月十七日だよね、二人とも」
「一緒っていうのがすごいよねー。まさに運命って感じでー」
「これはぜひとも、二人で恥ずかしいことしてもらわないとね」
「まったくまったくー」
うんうんと頷き合う私とサエちゃん。
でも悲しいかな、さすがにトメ兄もサユカンもずっと一緒に過ごしてきただけあって、「あっ!」と驚かせそうな妙案がなかなか浮かばない。
相談してるうちにパフェも食べ終わる。でも決まらない。
ここは――そう、第三者の意見ってやつが必要だ!
「すいませーん」
というわけで仕事中のキリヤ君を召喚。
「なんでしょうかお客様」
「アイデア一つください」
「時価ですがよろしいでしょうか」
「トメ兄にツケといて」
「かしこまりました」
「仲いいねー二人とも」
まーね。
「ところで何のアイデアでしょうか?」
「うん、えとね。もうすぐトメ兄とサユカンの誕生日なの。サユカンっていうのは――」
事情を適当に説明する。
「あぁ、この間トメ君の寝込みを襲っていたあの娘ですね」
「そうそう。でさ、せっかく二人一緒なんだし、二人に恥ずかしいことさせようかと思ってるんだけど」
「生ぬるいですね」
「へ?」
「恥ずかしいこと、なんてぬるいこと言ってないで、いっそのこと結婚でもさせちゃったらいいのではないでしょうか」
け、結婚!?
な、なんて……
なんて面白い!!
「よし! それいこう。結婚だ!」
「おめでとうございますです!」
「うあぉ!?」
真横からいきなり声が飛んできてビックリした! え、クララちゃん?
「どうしたのー。こんなところで」
サエちゃんが聞くと、クララちゃんはキリヤ君を指差しながら言った。
「この人にご飯もらってました」
「ええ、この間仲良くなりまして。たまにお腹をすかせて来るんで、店の裏で余り物をあげてるんですよ」
な、なんか犬か猫に餌やってるみたいな感じだね。まぁいちおー人じゃないけどさ。
「キリヤはおいしいものくれるです。いい人です」
「……クララちゃんって簡単に誘拐されそうだよね」
飴あげるから付いておいで、と声をかけられてホイホイ付いていく姿が目に浮かぶ。
「大丈夫だよー。いざとなったら消えればいいんだから」
「クララに消えろと言うのですか!? クララお邪魔虫ですか!? いえいえ虫は天敵ですよ木ですから。あ、お邪魔木ですか!? なんだか視界を遮るようで、とても目障りな感じの言葉になってしまいました」
「あ、や、そーじゃなくて」
「どっちにしろ邪魔ですか! クララしょっくです! それではいつか見た変な人みたいにシュバッと――」
「待ちなさいって」
んー、せっかくだから手伝ってもらおっかな。
「ねね、クララちゃん。ちょっと結婚式を手伝ってくれないかな」
「はい! お二人とも、結婚おめでとうございます」
「や、私じゃなくてさ」
「お似合いだと思います。キリヤとおねーちゃん」
「クララちゃん……」
私はがしりとクララちゃんの肩を掴み、可能な限り全力で微笑んだ。
「ひぃぅっ!? くくくクララを食べても美味しくないですよぉっ!!」
「キリヤ君の話なんかしてないの。わかった?」
「はいぃっ! わかりましたからその恐ろしい顔をやめてください!!」
失礼だなぁ。ただ微笑んだだけなのに。
「怖いです……こあいです……悪霊退散です……あ、この呪文はクララも危ないかもです……うぅうぅ」
なんで泣きそうなの。
「あっはっは。しかし『キリヤ君なんか』とはご挨拶ですね」
何がおかしいのか陽気に笑うキリヤ君ご本人。しかし。
「てめぇなんぞ『なんか』で充分だろが」
その背後からドスの効いたお声がかかった。あ、店長だ。
「てめぇ、仕事サボって何やってる」
「いえいえ仕事はしてますよ。『アイデア』というご注文をいただきましたので、応えていたところです」
「んなメニューねぇだろが」
「あるんですよ。『本日のキリヤンめにゅぅ』の中に」
「貴様、いつから勝手にメニュー作れる立場になった? 何様だ!?」
「いま貴様って言ったじゃないですか」
「……ナメてんのかコラ」
「いえいえ、冗談です。いますぐ戻ります、はい」
最後までにこやかな表情を崩さずに、キリヤ君は仕事へと戻っていった。
その際、こっそり「なるべく小声で相談したほうがいいですよ」と忠告をもらった。ハテ、なんでだろ?
「えっとー、結局どうするのー?」
「テーマは『結婚』ってことでいいんだよね」
「誰かと誰かをくっつけるですか?」
お、気を取り直したクララちゃんがようやく事情を理解してくれたみたいだ。
「だったらクララの桜を使うといいです。クララの桜の下で告白すると、異様に仲良くなりすぎてしまう! と評判なのです」
それ、なんか呪いみたいに聞こえるんだけど。
「じゃーその方向でいこー」
ま、呪われるのは私じゃないからいっか。
そんなわけで、トメ兄とサユカンの誕生日の相談は着々と進んでいくのだった。
できるだけ小声で。
しかし――このとき本当はもっと小声で話すべきだったと、私たちは後悔することになる。
トメとサユカちゃんの誕生日、公開でーす。
どんな誕生日になるのか。
今回はカカやサエちゃんのようにはいきません。なにせこの二人ですし、しっとり系が最近多かったので大いにメチャクチャにしてあげたいと思います^^
またトメサユ系かよーと思ったそこのあなた。
もちろんそれもありますけど、おそらく予想外の展開もありますのでお楽しみに笑