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カカの天下  作者: ルシカ
430/917

カカの天下430「テンカ先生の戦い、第二ラウンド」

「くすっ」「ふふふ」


 ……よう、テンカだ。


「ぶっ!」「これは……」「へぇ、アハハ」


 今日も今日とて授業中、のはずなんだがな……黒板に文字を書きながらため息をつく。


「あっはっは――」


 笑い声が聞こえたところで、前触れも見せずに生徒たちの方へ振り返る。


 するとそこには、大口をあけて笑いながら隣にノートの切れ端を渡そうとしているニシカワが。


「……はぁ」


 オレはため息を混じりに、固まってるニシカワの手からそれを奪う。


 ノートにはこう書かれていた。


『教頭先生の顔には何が住んでるでしょうか!?』


 この問題の答えが下に箇条書きされている。


 えー、なになに?


『いつものマッチョ』


 いつのだよ。


 ああ、こないだの教頭の顔の落書きのときの耳に住んでたマッチョか。


 思い出すぜ、そのあとオレは教頭に、どこからともなく取り出したマッチョ人形で……く、思い出すべきじゃねぇなこりゃ。忘れよう。


『シゲル』


 誰だよ。


『大統領』


 すげぇとこにあるんだな大統領邸。日本のトップは教頭の中で休むのか。


『イージス鑑』


 住んでてたまるか。


『教頭』


 教頭の中には小さい教頭が、その中にはまた教頭ってか? 昔そんな箱あったな。


『探検家マイケル31歳、B型、趣味はおはじき』


 設定こまけーよ、つかどこ探検してんだよ。


『……教頭の顔はワンダーランド?』


 ああ、たしかにこりゃワンダーランドだよ。きっと入場料もとれるだろうさハッハッハ。


「てめぇら、いいかげんにしろよ?」


 ギロリと問題児三人を睨みつける。


 カカはそ知らぬ顔、サエはいつもどおりニコニコ、サユカはおどおどしてる、か。


 先日の席替え以降、この三人はちょこちょこ授業を妨害してきた。まぁガキの遊びの範囲だし? オレ自身がそういう悪ふざけに甘いから(おもしれぇから)適当に注意して流してきたんだが……


 そろそろ、怒るべきだな。


 あと二回だな。


 あと二回は見逃そう。それを過ぎたら怒ろう。うん。


 そう決心しつつ黒板に書き書きしていると……


「うあ」「うあ」「うあん」


 もうきたか、一回目。背後から聞こえてくるざわめきを聞いて呆れ果てる。


「……うあ」「ぅぁ」「うーあー!」


 なんか今回は変にうあうあしてるな。よし、振り向く!


 またニシカワが紙を持って――って、なんで問題児トライアングル(カカサエサユカを結ぶ三角形のこと)の生徒がみんな赤面してんだ。


 一体なにが書いてある? 奪った紙に視線を落とす。


『サエちゃん、サユカン。好きだよ』


『私も二人が大好きだよー』


『わたしはそれほどでもないけど、す、好きといえなくも……ないわっ』


 ……恥ず。


 そらこんなん読めば赤くもなるわ。


「てめぇら、なんかアブねぇぞ」


 さすがに言わずにはいられなかった。


 すると筆頭問題児カカは立ち上がった!


「や、これが普通だよ! 運命に引き裂かれた大切な友達を想ってるんだよ……例えるなら私は彦星! サエちゃんは織姫! その間には天の川があるんだよ!」


「カカすけ。わたしはっ?」


「サユカン……んー……隕石?」


「なぜわたしがソレになりそうだったと知ってるのっ!?」


 ナニモンだよおまえは。


 しかしカカにとっちゃ他のクラスメイトは星屑かぁ。こいつら本当に仲がいいんだな……


「か、カカちゃん」


「俺ら、さんざん笑っておいてなんなんだけどさ」


「先生も困ってるしさ、そろそろ」 


 お、その星屑がオレに味方し始めた。


「黙れクズども!!」


 ……『星』が抜けると、ひでぇな。


「おいカカ。ろくに名前のないやつらだからってクズはひどいぞ」


「あ、あの……」「名前はあるけど」「先生が覚えてないだけで――」


「黙れクズども!!」


 あ、やべ。


「先生だって言ってるじゃないですか!」


「オレは先生だからいいんだよ!」


 そゆことにしとこ。


「とにかく! なぁカカ、もういい加減やめねぇか? 同じクラスなんだからよ、別に席が近くなくたっていいだろ?」


「ヤです! 私は戦い続けます!」


 ……ムカ。


「先生こそ、いい加減に観念したらどうなんですか! 授業が進まないのも先生が意地悪するからですよ!」 


 ……ムカムカ。


 なんでここまで言われにゃならんのだ?


 そもそも誰のおかげでてめぇらが一緒のクラスになれたと思ってんだ? あぁん?


「か、カカちゃん」


「カカすけ、そろそろ――」


「二人は黙ってて! 私はいま全ての元凶と戦ってるんだから!」


 プチ。


 あー……もういいや。


 キレよ。


「うぁう!?」


 むんず、と右手でカカの頭をわしづかみする。


 そして顔を近づけ、にこやかーに微笑みかけた。


「カカ……試してみるか?」


「な、なにをですか……ぁぁぁぁぁ痛い痛い痛い頭が雑巾のようにしぼられてるみたたたた痛痛たたっ!!」


 右手にイイ感じの力を込めながら。


「人の顔に、マッチョやシゲルや教頭が入るかどうか」


「…………!」


 声無き声をあげるカカの頭を掴んで引きずりながら。


「まずは鼻の穴からいってみようかぁ? 次は耳な。最後は口な。目は勘弁してやるよ……あ、てめぇらは自習な!」


 そう言い捨てて教室を出る。


 さぁお仕置き部屋へ直行だ。


 こないだ教頭にされた折檻、こいつにやってやるぜ!!




 数分後。


 イロイロねじ込まれたカカは素直になっていた。


 教頭、あんたやっぱすげぇよ。


 というかマッチョ人形の恐怖がすげぇよ。


 ……どこで売ってんだ、こんなもん。

 勝者、テンカ先生!

 マッチョをねじこまれたカカ、完敗です!!


 ……想像したくないですねぇ。

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