カカの天下427「頭が痛い」
「ただいまー」
あれ、返事がないよー? 可愛い妹が帰ってきたのに。
あ、どうも。可愛い妹です。学校も終わり、サエちゃんサユカンと遊び倒して気がついたら夕やけこやけ、夕飯を楽しみにしながら帰宅したのですが……
「おーい、ただいまだってばさー」
靴があるから帰ってるのは確実。なのに返事がないのはどゆことだろう。
私は靴を脱ぎ飛ばし、居間へ行ってみた。
いない。となると自分の部屋かな。
てってってーと移動、ノックするの面倒だったので省略してそのままドアを開けると……ビンゴ。
「トメ兄?」
「んー」
寝てる?
「おーい、ただいま」
「……ん、おか……えり……」
なんだかすんごくしんどそうだ。
「もしかして朝の、まだ続いてるの?」
「んー」
今朝のトメ兄はひどかった。顔は白いしフラフラだし歩くたびに頭痛がするのか顔しかめるし……俗に言う二日酔いだね。
「会社ちゃんと行ったの?」
「……ん……二日酔いなんて理由で……あの両親……金くれないし」
よしよし、えらいえらい。
「頭いて……助けてくれ……」
お?
「助けが必要?」
「んむ……」
「誰か呼ぶ?」
「んむ……」
「八百屋さんでいい?」
「んむ……」
よしきた。
私はトメ兄の部屋を出て電話へ直行した。
そしてピッポッパ……
「あ、もしもし。笠原ですけど」
『お? カカちゃんかい! どうしたぃ!』
「トメ兄が二日酔いなんです。助けてください」
『あん? なんでうちに言うんだ、んなこと』
「んと……トメ兄がね、辛いときはおっちゃんの顔を見たくなる、って言うから」
『あぁん!? こ、こえぇこと言うな……まぁいいか。今度一緒に飲みに行ってやるかな!』
「その前に助けてよ」
『あぁ、わかった。あとで二日酔いに効きそうな野菜もってってやるよ』
「ありがと」
カチャリと受話器を置いて、トメ兄の元へ戻る。
「助け呼んだよー」
「んむ……」
「まだ助けいる?」
「んむ……」
「果物屋さんでいい?」
「んむ……」
よしきた。
再び電話へてってけてー。
「あ、もしもし。笠原ですけど」
『あらやだカカちゃん? 珍しいじゃないのさ! どうしたの?』
「トメ兄が二日酔いなんです。助けてください」
『あらあらまぁまぁ! だっらしないわねぇ』
「トメ兄がね、辛いときはおばちゃんの顔を見たくなる、って言うから電話しました」
『あら! あら! あっら−!! いやねぇこんなおばさん捕まえて何言ってるのかしらヤーねぇ! でも、でもでも、ちょっと嬉しいから今度デートしてあげようかしら。キャー! 歳がいもなく興奮してきたわ』
「その前に助けてね」
『はいはい、あとで二日酔いに効きそうな果物もってってあげるわ』
「ありがと」
カチャリと受話器を置いて、トメ兄の元へ戻る。
「助け呼んだよー」
「んむ……」
「まだいる?」
「んむ……」
「食堂でいい?」
「んむ……」
ほいきた。
電話電話っと。
「もしもし、笠原ですけど」
『おお、カカちゃんかい。どうした』
『カカちゃんだと!? おい兄貴、俺にも代われよ』
『うるせぇな。俺への電話だぞ』
あ、向こうに弟さんもいるっぽい。
「あの、実はトメ兄が以下略」
『ほぅ、あのにーちゃんがねぇ。それで俺にどうしろと?』
「トメ兄がね、辛いときはゲンゾウさんの顔が見たくなるっていうから」
『あんだと? けっ……俺の男前ぶりも、てぇしたもんだな』
『すげぇぜ兄貴。だが羨ましくはならねぇな』
『仕方ねぇ……今度デートしてやるか』
この人もするんだ。
『そしてこう言うんだ。すまねぇ、この思い出を最後に俺のことは忘れてくれ……ってな』
しかもフッちゃうんだ。
『格好いいぞ兄貴。だが相手が男だと格好つかねぇな』
「でもその前に助けてね」
『仕方ねぇ、身体に優しい料理でも持ってってやるか」
『よし、自分の店に戻るついでに俺が持っていこう』
『てめぇ……そんなこと言って、俺に惚れた男を横取りするつもりじゃねぇだろうな』
『へ、そんときゃ俺のほうが男前だったってだけのこと――』
長くなりそう。
「とにかくよろしく」
カチャリと受話器を置いて、トメ兄の元へ。
「トメ兄、まだいる?」
「んむ……」
「酒屋さんでいい?」
「んむ……」
ほいきた。
電話電話……ぴぽぱぽ。
「もしもし、笠原ですけど。トメ兄が以下略なんで助けてください。トメ兄が、辛いときはどうしてもおばあちゃんの顔を見たい、って言うもんで」
『ほっほっほ……わかったえ。今度、一緒にホテルにいこうかの』
「ホテル?おいしいものでも食べるの?」
『ほっほっほ、食べるのぉ。わしが』
よくわかんない
『若いもんは久々じゃ……ごちそうじゃわい』
「とにかくお願いね」
カチャリと受話器を置いて、トメ兄の元へ。
「あれ、トメ兄。起きたの?」
「ああ……なんとかな。まだ頭痛いけど」
「もうすぐ助けがくるよ。二日酔いに効くものいっぱい持ってきてくれるって」
「おー……ありがとー」
「どういたしまして。あとね、多分ね、トメ兄の商店街の評判あがったよ」
「……なんで? ていうかそもそも誰に助けを」
ピンポーンと鳴るチャイム。
「来た」
「……何が?」
「じゃ、頑張ってねトメ兄」
あーいいことした。なんていい妹なんだろう私は。
満足した私はニコニコしながら自分の部屋へ戻った。
数分後、なんか玄関で大騒ぎになってた。「誰を選ぶの!?」とか「この浮気者!」とか聞こえた気がしたけどよくわかんない。
私は眠かった。だからちょっと寝る。
おやすみなさい。
トメがひたすら頭を痛くする。
今回はそんな話です笑
や、トメカカのやりとりがやっぱ基本ですねー。
でもなんでこんな話書いたかというと、ただ単に今日の私が二日酔いだったから……それだけだったり笑