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カカの天下  作者: ルシカ
426/917

カカの天下426「最近の流行と酔った勢い」

「――で、校長とカカたちと何してたって?」


「や、僕もよくわかんないんだけどさ」


 んぐんぐ……うまうま。あ、よう。テンカだ。


 この前オレの知らないところで勝手に花見をしていたという話を聞きつけ、「ふざけんじゃねぇ誘えよバカ罰としておごれ!」とトメを脅し、いま病院で飲んでるとこだ。


「たぶん、オホホおばさんが大切にしてる桜があって、もう花が咲かないかもしれないから最後にお花見を、ってことだと思うんだけど……」


「けど?」


「途中からクララちゃんが出てきて……桜のせいで妖怪が復活したとかなんとか」


「なんのこっちゃ」


「や、だからよくわかんないんだって。カカたちが集まって話してたの聞いただけだし」


 よくわかんねー話されてもなー。オレはもっとわからんぞ。


「妖怪……姐さんのことか?」


「たぶんな。他に思い浮かばないし」


「復活ってなんだ。秘められた力が解放されて変身でもすんのか?」


「あれ以上バケモノになられても困るぞ」


「でも似合うよな、多分。羽とか角とか牙とか」


「巨大化とか」


「似合いすぎだな」


 姐さんの変身や合体を肴にしながらしばし飲み……やがてトメが話題を変えてきた。


「わけわかんないって言えばさ、知ってるか? 最近流行ってるっていうKYシステム」


「ああ、聞いたことはある。占いとかゲームで使われてんだろ」


「そうそう。僕もカカに占い教えてもらってさ、結構おもしろいんだよ……人のを見る分には」


「後半聞こえなかったが、なんて言った?」


「や、なんでもないなんでもない。とにかくやってみな、これなんだけど」


「どれどれ?」


 トメの携帯を受け取り、画面を見てみる。ふむ、ただの占い入力画面にしか見えないが。


「ふーん、まぁ話のタネにやってみるかな」


 名前を入れて、っと。次は血液型か。A型っと。


 あん? 急に画面変わったぞ。


『ホントかよ』


「……あん?」


 自分の目つきが悪くなってるのがわかる。


「て、テン?」


 ギロリ、とトメを睨みつける。


「ホントだよ、ホントにA型なんだよ」


「ど、どうしたんだよ」


「あぁどうせオレは大雑把さ! オレと知り合ったヤツは全員『君、絶対O型でしょ』って言うけどよ、悪いかA型で! こういうA型もいるんだよ!」


「ううううあああああわかったわかったでも僕が言ったわけじゃないんで首根っこ掴んでガクガク揺らすのやめてもらえますかああああ!?」 


「ま、O型なら仕方ないよねー。ハッ! なんて鼻で笑われるA型の気持ちがわかるかぁぁぁ!?」


「わかりませんわかりませんけどごめんなさぁぁぁぁい!!」


 ふう!


 ある程度スッキリしたところでトメを離してやる。


「ったく、なんなんだコイツは」


「げほっ、げほっ……あ、あぁ、なんか空気を読んで遊んでくるんだよ」


「どんな占いだよ……あーっと、続きは?」


 星座か。


 乙女座っと。


『乙女ならオレとか言うなよ』


「なんで知ってんだてめぇ!?」


「なんで僕を締め上げるんスか!?」


 手近だったからだよ! 


「どっかで見てんじゃねぇのか、これ書いてるやつ……っと、もう終わりか」


 占い結果はどうなんだ? なんだか怖ぇけど。


「どれ」


 トメと一緒に画面を覗き込む。


『運気が0です』


「だからオレはA型だっての!!」


「ぐほぁ!?」


「何度言わせるんだ! こう見えて落ちてるゴミとか空き缶とかお年寄りとか拾うんだぞ!」


「ち、違う違うそれ数字の0だから! Oじゃないから!」 


 む、そうか。早とちりしてトメにボディーブローしちまったじゃねぇか。


『運気を上昇させるにはラッキーアクションを起こす必要があります』


 あん? 言うとおりの動作しろってことか。


『まず、仲のいい男友達と腕を組みます』


 ふむ。ほい。


「うぇあ!? な、なんだよテン……!」


 今日はちょうどカウンターで隣に座ってるからな。トメの腕に自分のを絡めてみたんだが……トメの反応がなかなか面白い。


『次は耳に息をふきかけてみましょう』


「ふーっ」


「ひゃぅあ!?」


 うはは、おもしれーおもしれー。次は何すんだ?


『最後に、周りをよーく見渡してみましょう』


 周り? ここは居酒屋だぞ。客と店員しかいねー……


「にやにや」


 ん?


「ニヤニヤ」


 あん?


「「にやにやニヤニヤ」」


 見てる。


 みんな、すんごい見てる。


 何を?


 オレがトメと腕組んで、耳に息吹きかけてたのを?


「――!」


 酔いが一気に醒めた。


「ち、違うぞ! 今のは違う!」


「いやー。なんだかここ熱いですね店員さん」


「そうですねお客さん、もう夏がきちゃったんですかねぇ」


「いや。ある意味、春ですよ」


「なるほど、たしかに! ついに春が来たんですねぇテンちゃん」


「皆さんご一緒に。さん、はいっ!」


『おめでとう!!』


「ちっがぁう!! 今のは酔った勢いというか、占いが――」


「よ、兄ちゃん! 今日は酔った勢いでナニされるかわかんねーぞ! よかったな!」


「よくねーよ!! おらトメ、てめーも何か言え!!」


「さ、さっきのシェイクのせいか……今になって酔いがまわって……なにが、なんだか……」


「おぉ! 潰れるぞ!」


「落とすなら今だな」


「いけ、テンちゃん!」


「だから違うと言っておろうがああああ!!」


 叫んでから元凶である携帯を睨みつけた。


 画面には一言だけ。


『ニヤニヤ』


 折ってやった。


 このシステム、敵だ!!


 どうやってるのかは知らんが、とにかく敵だ!!



 ……あ、折った携帯ってトメのだった。


 占いといっても反応は人それぞれなはず。というわけでKY占いしつつ、久々にテントメ飲み会です。


 大人サイドにはクララちゃんの正体は伝わってません。やはり妖精とか可愛らしいファンタジーは子供だけが見えるもんですよねー。

 

 あと、いつも強気なテンちゃんも酔うと弱いとこが見え隠れ……

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