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カカの天下  作者: ルシカ
420/917

カカの天下420「たまにはトメVS姉娘」

 どうも、いきなりですが呆れているトメです。


 何に呆れているかというと……


「シューの家がまた誰もいなくなるんだよ。てわけでコレお願いね!」


 そんな軽い感じでタマちゃんを預けていった姉にです。


 まったく、預かるのはいいんだけどさ、いっつも急なんだよ。だいたいさ、なんでシュー君ちの事情なのに姉がくるんだよ。たまにはシュー君に喋らせてやれよ。なんだか知らないけど放っておいたら存在が消えてしまいそうな気がするじゃないか。なんとなくだけど。


 ……ともかく。カカはまだ帰ってきてないから、僕がタマちゃんの相手をしなければ。


 ソファーにちょこんと座って僕をじっと見ているお子様に、なるべく優しく微笑みかけてみる。


「タマちゃん、何したい?」 


「げき!!」


 劇?


 あ。そういえば姉が言ってたな、最近のタマちゃんのお気に入りの遊び。なんでもこの前のお楽しみ会でカカたちの劇を見てから、何かとそのマネをしたがるんだとか。


「んー、劇ごっこすればいいのか?」


「しょう!」


 舌ったらずな声で頷くタマちゃん。うーん、そこまで詳しくは覚えてないんだけどなぁ。タマちゃんに適当に合わせてればいっか。


「よし、じゃあ付き合うよ」


「やたー!」


 ソファーから立ち上がったタマちゃんは、僕をびしっと指差して口を開いた。


「おらおらー! しょ、しょ、ショ……」


 えっと……ああ、もしかして「ショバ代よこせ!」とか言ってたシーンかな。


 結構覚えてるもんだな僕も。


「しょんなとこ、よこせ」 


「どんなとこですか!?」


 タマちゃんのほうはあんまり覚えていないらしい。


「うわー!」


 おや、今の僕のツッコミを攻撃と取ったらしい。タマちゃんは劇中のカカのように格好よく吹っ飛ぼうと、ソファーによじよじ登ってから床へとダイビングした!


 もちろん幼いタマちゃんに空中回転などできるはずもなく。


 飛んだ姿勢のまま、腹から床に落ちた。


「ぐほぁ!?」


 およそ子供に似つかわしくない声を発したタマちゃんは、そのまま停止した。


 チーン。


「――って、何を呑気に見てるんだ僕は!?」


 急いでタマちゃんに駆け寄る! まずいまずい、いつも僕の身近でこういうバカをやる我が家の姉妹はやたら頑丈だから「危ないからやめなさい」って止める習慣がなかったんだ!


「大丈夫か!?」


「いたかった」


 ……や、この子も頑丈だわ。セリフのわりにはケロッとしてるし。


「うまくとべない! ちゃんととぶ!」


「危ないからやめなさい!」


 よし、今度はちゃんと言えた。


「うわー」


 再び空を舞うタマちゃん。って、言えた意味ないし!! また腹から着地だし!


「……ぅ……ぁ!」


 打ち所が悪かったらしい。少々ゾンビっぽいうめき声はとことん子供のものとは思えない。


 しばらく倒れたままでピクピクしていたタマちゃんは、やがて再び起き上がるのだった。


「いたくなくなってきた」 


 それヤバイんじゃないか!?


「もういっちょー!」


「ま、待て待て! 簡単な飛び方を教えてあげるから!」


 羽交い絞めにしながらなんとか説得した僕は、タマちゃんに一番簡単な体操を教えてあげた。


 その名も、でんぐり返り。


「うわー!」


 ごろん、と転がったタマちゃんはキャッキャッとはしゃいでいる。よかった、これなら安全だし、カカのマネっぽいし。


「うわー!」


 ごろんごろん。


 よっぽど気に入ったらしいな、でんぐり返り。眩しい笑顔で何度も転がるタマちゃん……うーん、なごむ。


「うわああああ」


 ごろんごろんごろん。


 お、ちょっとやりすぎー、壁にぶつかるぞ! あ、進路を曲げた。うまいうまい。


「うわああああああ」


 ごろんごろんごろんごろん。


 よし、しばらくこうして部屋で遊ばせておけば……あれ?


「うわあああああああぁぁぁぁぁぁ」


 ごろごろごろごろごろごろごろごろごろ……


「どこへ行く!?」


 部屋から転がり出したタマちゃんを追いかける!


 同じように部屋を飛び出て廊下に出た。どこまで行った!? 壁にぶつかる前に保護せねば――僕は慌てて駆け出した。 


 そして何かにつまづいた。


 身体が浮いた。空中で僕の足元を見る。そこには丸まったタマちゃんが。


 ああ……意外と近くで止まったのね、アハハハ。


 まったく、いつもいつも予想外な行動ばかりしてくれる。


 なんて昔のカカにそっくりなんだろう……思い出しちゃうなぁ、物心つく前のちっさいカカ。幼稚園いくようになったらおとなしくなって僕に甘えるようになったけど、その前はそりゃもーやんちゃでやんちゃで―――


 そんな風に昔の思い出に浸っていて……ふともう一つ思い出す。


 そういえば、ここどこだっけ?


 空中? そっか、僕、タマちゃんにつまづいて浮いてたんだっけ。冗談抜きで吹っ飛び中だ。


 なのに、なんでこんなこと考えてたんだろう?


 あ、これが走馬灯か。なるほど、アハハハー。


 僕は笑顔で。


 顔から床へと突っ込んだ。


 声も出なかった。




「ただいまー。ってトメ兄。なんでそんなところで寝てるの」


「カカ……」


「なぜ遠い目で私を見る」


「や……よくここまで育ってくれたもんだ」


「は?」


 あの後もイロイロあって……再度、僕は廊下にくたばっていた。


 タマちゃんの世話をするたびにカカが何か悟ったような顔になる気持ちがよくわかった。や、今日みたいな苦労をかつてカカ相手に何度もしてさ、もう慣れた気になってたんだけど……これ、慣れないわ。


 育児って、大変ね。


 世の中のお父さんお母さん、ほんっとお疲れさまです。


 結構いい感じにタマちゃんをあしらっているかと思われたトメですが……あえなく撃沈です。

 こんなタマちゃんの世話してるんだからシュー君って結構えらい気がしてきました笑


 さて……そろそろ好きな話投票の〆きりですが。

 カカラジ手前にちょっとしたお話をいれる、かも? 


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