表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カカの天下  作者: ルシカ
419/917

カカの天下419「次のツッコミは君だ!」

「ツッコミをしてくれないか」


「はい?」


 はい、トメです。


 今日は日曜日。非番のキリヤと我が家でダラダラとコーヒーを飲みながらだべっていたのですが、ふと思いついたので言ってみました。


「いやな、最近思うんだよ。僕の周りにはツッコミがいないって」


「トメ君がいるじゃないか」


「だから、僕以外にだよ! 僕ばっかツッコミじゃ、いい加減疲れるんだよ。たまには僕もボケたいよ」


「そっか……トメ君もボケが始まる歳かぁ」


「そういう言い方は不愉快だからやめてくれる!?」


 あ、またツッコんじゃった。


「とにかく! 僕の周りでツッコミができそうなのって、キリヤくらいなんだよ」


「ふむ、そこまで言うならいいでしょう。私がツッコんでみます。ですからどうぞ?」


「え? どうぞってなにが」


「ボケをお願いします」


 えっと……どうしよう。いざ言われると何をどうすればいいのやら……


 そうだ、とりあえず唐突なことを言えばいいんじゃないかな。


「タイヤキ食べたくないか?」


「食べたいです」


「じゃあ行こ――ツッコめよ!!」


「え、それボケだったんですか?」


「悪かったなセンスなくて!」


 あぁ……またいつの間にか僕がツッコミに……


 肩を落とす。しかしタイヤキを食べたいと思ったのは本当なので、キリヤと僕は家を出て商店街へと買いにいくことになった。


 その道中。


「もっとツッコみがいのあるボケしてくださいよ。トメ先輩と違って私は初心者なんですから」


「プロになったつもりはないけど……でもそうだな」


 ツッコみがいのあるボケ。そうだな、自分がツッコむ側だったらどうだろう。


 うーん、何かアブナイこと言ってるやつにはツッコみやすいかな。


 よし、ボケるぞ!


 周りに何か材料は……お、小学生くらいの女の子が歩いてる。


「あの女の子、可愛いなぁ。ナンパしちゃおっかな!」


「うぁ」


「引くなよ! ツッコめよ!」


「でも先輩、ボケるにしたってもう少し考えたほうが……」


「そんな目で見るな!」


 ううう、仕方ないだろう。なんか知らないけど普段から『このロリコンが!』っていう声がどこからか聞こえてる気がするから、あえて「それ犯罪じゃん」って言われて「だよねー、ないよねー」みたいな流れがほしかったのに!


「……犯罪だ」


「ボソッと言うな!」


 ああうう、またツッコんでる……


「じゃ、じゃあほら! ちょうどいいのが来た!」


「はい? あの女性ですか」


「そうだ! あれは僕の姉でな、存在自体がツッコみどころ満載だからやりがいがあるぞ」


「なるほど、頑張ってみます」


 キリヤの意気込みを確認した僕は、都合よく向こうから歩いてくる姉に声をかけた。


「あ、弟じゃん。やっほー」


「おっす、姉」


「その子だれ?」


「僕の友達でキリヤっていうんだ。ほらキリヤ」


 いけ! ツッコめ!


「こんにちは、キリヤと申します」


「あれ、あんた東治の店員さんじゃん?」


「ご存知でしたか。あ、そういえば……お姉さまもお客さんとして見たことがあるような」


「うんうん。たまーに行くからさ。今度行ったときはサービスしてね!」


「はい、喜んで」


「じゃ、うちの弟をよろしく。じゃーまたねー」


「はい、ごきげんよう」


 にこやかに手を振って別れる二人……


 って!


「ツッコめって言ってるだろ!」


「え、今の方にツッコみ所なんてありましたか?」


「あるだろ! 姉の着ていた服は!? 持ってたものは!?」


「薄汚れた特攻服に木刀ですが。ケンカ帰りですかね」


「ツッコめよ!」


「え、別におかしくないかと」


「世間一般ではおかしいんだよ!」


「知りませんでした。さすが先輩。勉強になります」


「おまえわざとやってるだろ!」


 はぁ……僕ほんとツッコミしかしてないじゃん……


「あ!」


 向こうから歩いてくるあの人は! 今度こそ。


「よしキリヤ、あの女性だけど」


「ナンパするんですか」


「さっきの僕のセリフは忘れろ! いいか、あの人はかつて皿を売っていたサラさんという人なんだが」


「そんなわけないやん!」


「や、せっかくツッコんでくれたとこ悪いけど、本当」


 あ、ちょっとしょんぼりした。


「ま、まぁまぁ聞いてよ。でな、彼女が鍋を売ったらナベさん、お釜を売ったらオカマさんって呼んでからかってるんだよ。今からそんな風にからかうから、僕にツッコめ。いいな」


「はい、わかりました!」


 よし。


 僕は買い物帰りらしいサラさんに片手をあげて声をかけ――ようとしたら向こうが気づいてくれた。


「トメさん! 奇遇ですね」


 僕は買い物袋を見た。


 大根が飛び出していた。


「やぁ、大根足さん」


 さぁ行け。


 キリヤはサラさんの脚をまじまじ見て頷く。


「なるほど」


「納得すんなよ!!」


「え、いや、ですが見事な」


「バカ! そこは嘘でも――あ」


 とてつもなく不吉なオーラを感じて、おそるおそるサラさんの方を見る。


 なんていうか、詳しく描写したら呪われそうな顔をしていた。


「私の脚……大根、ですか?」


「い、いや! 大根みたいに太くないよ! どちらかというと人参みたいに」


「凸凹してるって、言いたいんですか……?」


 ヤバイ。


 ネガモードだ。


「男なんて……」


 瞳に涙を溜めたサラさんは、きびすを返して――


「男なんて……みんな燃えてしまええええええええ!!」


 怨嗟の声をあげながら走り去ってしまった。


 ……後が、怖い。


「どうしてくれるんだよキリヤ……」


「え、私は燃えませんよ? 萌えましたけど」


「おまえもう黙れ!!」


 はぁ……


 やっぱ僕がツッコミでいくしかないのか……


「というかトメ君」


「なんだよ」


「ボケだのツッコミだの……あなたの生活ってコントなんですか?」


「言うな!!」


 あらたなツッコミ講座ですが、トメのボケ力不足により失敗。

 ですが最後のツッコミはうまいと思います(笑)


 しかしキリヤ君……イイね!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ