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カカの天下  作者: ルシカ
418/917

カカの天下418「回る回る、少女も謎も」

 こんにちはー、サエです。


「待てーっ」


「やだよーだ!」


 学校も終わり、いつもの三人で校庭の脇に咲いている桜を眺めていたのですがー……


「これは花。これは鼻」


 カカちゃんはそんな意味不明なことを言い出し、おもむろにサユカちゃんの鼻に桜の花びらを突っ込みました。するとー……


「な、なんてことすんのよーっ」


「あはは! ふごって言った! ふごっ!」


「待ちなさーい!」


「ふごっ! ふごっ!」


 こんな追いかけっこが始まってしまったわけでー。


「待ちなさいったらっ!」


「捕まえてごらんなさーい」


 おー、一つの桜の木を軸にしてぐるぐる回り始めたー。


 可愛い追いかけっこだなー。私は目を細め、ほのぼのと二人を見守っていた。


 桜も綺麗だし、私の友達は可愛いし……これでお茶とお菓子があれば最高なんだけどー……あ、サユカちゃんがカカちゃんに追いついた。


「捕まえたわっ! って――わあああ」


「おおお!?」


 ぐるぐる回ってた勢いが強すぎたのか、サユカちゃんは腕を掴んだカカちゃんと一緒に、そのまま校庭の方へと身を投げ出した。


「おっとととっ!? わああ」


「ちょ、サユカンんんん!?」


 二人は手をつないだまま、ぐるぐる回り始めた。ほら、互いに腕を引っ張って遠心力つけたらそんな感じになるでしょー?


「とーまーらーなーいーわーっ!」


「おぅおぅおぅおぅ」


 楽しい。


 可愛い。


 誰かお茶とお菓子!


 タケダ君でもいれば買いに行かせるのに……あぁ、終わっちゃった。むー、あれを見ながら食べるお菓子はおいしそうなのになぁ。大人の人がお酒のおつまみにするみたいな感覚でさー。


「はぁ……はぁ……カカすけっ! あんたねぇっ」


「楽しかったね」


「楽しかないわよっ、こんなの!」


「もう一回やらない?」


「やるわ」


 楽しいんじゃん。


 はらはらと降ってくる桜の花びらを吹き飛ばすような勢いで、再び回転し始める二人。


 あー。かわいー。見てるだけでたのしー。


 もしかして私、ちょっとおっさんくさい?


「あ、あの、サエさま」


「はいー?」


 呼ばれて振り返ると、そこにはイチョウさんがおそるおそるといった表情で立っていた。そんなに怖がらなくてもいいのにー。


「なんです?」


「申し訳ないのですが、わたくし岸村さんたちが遊んでいる場所をお掃除したいのですけど……」


 よくよく見ればイチョウさんは竹箒を持っていた。そういえば彼女はよくボランティアで校内のお掃除をしていると聞いたことがある。若いのにえらいもんだねー。


 ……やっぱり私、ちょっとおっさんくさい?


「あ、わかったよー。じゃあ私たちが遊んだ場所のお掃除はやっておくからー」


 あとでサユカちゃんが。


「あ、お願いしてよろしいですか!?」


「うんうん、イチョウさんだけにやらせるのも気が引けるしー。桜の花びらを集めればいいんだよねー」


「はい、木の根元にでも集めていただければ、後でわたくしがちりとりで回収にまいりますので! それではお願いします! わたくしは他の場所をやってまいります」


「はーい、いってらっしゃーい」


 ひらひら手を振って見送り、後ろを振り返る。


 二人はまだ回っていた。


 うーん、しょうがないなー。先に竹箒だけでも用意しとこう。


 私は校庭の用具倉庫へと向かった。


 みんなで遊んでいた場所からはそんなに離れていないので、すぐにたどり着く。


 倉庫の扉はすぐに開いた。さて、箒は――ん?


 変な感じがした。


 倉庫の奥をじーっと見つめてみる。


「……あのー?」


 声をかけると、奥の闇がびくりと動いた。


「く、クララに話しかけているですか!?」


 え、クララちゃん?


「はいー、私です、サエですー」


「あ、これはどうも!」


 知り合いとわかってホッとしたのか、倉庫の中から現れたのは紛れもなくあのクララちゃんだった。


「ふー、予想以上に真っ暗でクララびびりました! 真っ暗なクララ、略して、まっクララでした! これあんまりおもしろくないです」


 相変わらず飛ばすなーこの子。


「また変なところから出てきたねー。何してたのー?」


「さがしものです! それでは、クララは時間がないのでこれで失礼します!」


「あ――」


 前のときのように走り去ろうとするクララちゃんに、ギリギリ声をかけることができた。


「何をさがしてるのー!?」


 クララちゃんは足を止め、振り向かずに答えた。


「おかーさんです」


 そして再び走り出し、あっというまに見えなくなってしまった。




 戻った私は、まだ回っていた二人の回転をランドセルを投げつけることで止め、今あったことを話してみた。


「へー、さがしてるのってお母さんだったのねっ! でもなんで学校で」


「闇雲に探してるとか?」


「んー。でもこの間、探し物の匂いがするって言ってたしー、やっぱこの辺にいるんじゃ」


「匂いって……それが本当なら、ゴミ箱の中や倉庫の中にいたことがある人になるよ? そんなまるで学校でかくれんぼしたみたいなお母さんなんか、いるわけ――」


 カカちゃんは口にしながらハッと気づいたみたいだ。


 サユカちゃんも気づいた。そして私も。


 一人だけいる。


 お母さんと呼ばれてもおかしくない年齢で、学校中でかくれんぼをしていた女性が。


「今はどうせいないだろうし、教頭先生に聞いてみようよ!」


「そうね、でも聞くなら明日ねっ。いま教頭先生、テンカ先生にお仕置き中だから」


「……まだやってたのー?」


「ええ。噂だと、耳にマッチョが住めるか、鼻に校長が住めるかどうかを身をもって試されているようよ」


「うあ、ちょっとやりすぎたかな」


「と、ともかく聞くのは今度ねっ」


 んー、でも。


 私がクララちゃんに似ていると思ったのは、あの人じゃないんだけどなぁ。


 はい、遠い伏線きましたー笑

 しかし、本当にあの人がそうなのか? それはまだわかりません。サエちゃんの違和感を見る限りは。

 

 それにしてもカカたちがぐるぐる回っている様子を想像すると……妙にのほほんとしたキモチになるのはなぜでしょう?笑


 誰か、お茶とお菓子!!

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