カカの天下416「お約束! 学校のお楽しみ」
「おーし。てめぇらがやれやれってうるせぇから仕方なく、このクラス最初の席替えをすっぞ」
イェーイ!! とクラスメイトが上げる歓声に乗っかってるカカです!
このクラスになってからは出席番号順に座っていたのですが、やはり席替えしてバラバラに座ってこそ、学校の味が出てくるもんですよね。
味とか言うと小学生っぽくないって? うるさい黙れ。
「んじゃ適当にクジ作っといたから、引いてけー」
「異議あり!」
「あん?」
シュタ、と手を上げたのは他ならぬ私です。
「私とサエちゃんとサユカンは三人並んで座りたいです」
「わがまま言うな」
「私と先生の仲じゃないですか」
「……こないだの、まだ根に持ってんのか」
あたりまえだよ。本当に絶望したんだからね。
「だいたいな、席ってもんは男女交互って相場が決まってんだ。どのみち三人並んで座るのは無理な話だよ」
「そんな名前も出てない人たちのことなんか気にしないでいいですよー」
「サエ、あんま危険なこと言うんじゃねぇ」
何が危険なんだろ。ただ単にテンカ先生が名前を覚えてない人って意味だと思うけど。苦しい? 知らないよ。
「あ。じゃあサユカンは男でいいですから」
「待てやカカすけっ! わたしのどこが男だってのよっ」
「じゃーサユカちゃんの女の子らしいとこ見せてー」
「望むところよっ! え、えっと、どうすればいいのかしら……サエすけ?」
「恋する乙女とかどうかなー?」
「なるほど、それは乙女っぽいわねっ! よしっ! あぁ、トメさん! わたしはあなたのことが大好きです! もしも――」
「トメ兄が死んだとしたら?」
「この世にある『トメ』と名のつくものを全て集め、全部燃やしてわたしも燃えますっ! これぞ真の愛っ!」
「おー、関係ない留蔵さんとかもー?」
「燃やすわっ」
「おとめは?」
「全焼よっ!」
世界、滅びるね。
助かりたかったら乙女を捨てるしかない。
……どうやって捨てるんだろ?
「って、なにバカなこと言わすのよっ!!」
長いノリつっこみだった。
「ほい、次の人――」
「あ、テンカ先生! なに無視してクジなんか引かせてるんですか!」
「無視してねーよ。ちゃんと横目で見てたぞ、おもしろいから」
ふっ、まぁね。私ら三人が同じクラスになったからにはこれくらいは楽勝――ってそうじゃなくて。
「私たちの席ですよ!」
「あー、はいはい。特別に決めてやったから心配すんな。他のやつがクジ引きな」
やった!
「……先生、僕にも希望が」
「んだよニシカワ。またアヤの隣がいいのか?」
「逆です。もうアヤ坊の隣は嫌なんです」
「な、なんですってー!」
いきり立つアヤちゃん……あれ、よく見てみれば今もニシカワ君の隣だ。
「なぜか知らないですけど、小学校一年生のときから僕とアヤ坊の席が離れたことがないんです。いつも隣か斜めの位置で」
あー、いるよね。なんの偶然か知らないけどずーっと一緒のクラスや席の人って。
「呪われてんじゃねぇのか」
「はい、ですからたまには他の席がいいです」
「ニッシー! あんた失礼にもほどがあるわよ! 別に私はニッシーと一緒じゃなくてもいいけどさ、その言い方が気に食わないわ! この学校のアイドル捕まえて一緒にいたくない? しかも呪いって何よ!」
「なんだよ。そんなに僕のそばにいたいのかアヤ坊」
「キモいこと言わないで!」
「だろー。ならキモい呪いを終わらせよう。はい決まり、ばいばい」
「他にも言い方あるでしょっていうの! 大体あんたは――」
また始まった……この二人、こうなると長いんだよね。
もちろんテンカ先生もそれを知ってるため、「あー面倒くせー」と疲れた顔になった。
「なぁ、イチョウ」
「は、はい!? わたくしのことでしょうか?」
「他に誰がいんだよ」
「し、しかしわたくしの名前は……」
「カカたちがそう呼んでたからそれでいいだろが。元の名前なんて知らねぇし」
名簿見ろよアンタ。
「あの二人さ、ちょっと止めてみてくんねぇか?」
おお! 誰が横槍を入れてもじゃれあいに変えてしまうニシアヤコンビの打破をニューフェイスに頼むのか!
「え、えっと……わたくしでお役に立てるかどうかはわかりかねますが、出来る限り尽力してみたいと思います」
ごーごー。
おそるおそる二人へ歩み寄るイチョウさん。さ、話かけるんだ!
「あ、あの……お二人とも?」
「キモいって先に言ったのはアヤ坊――ん?」
「あんただって言ったでしょキモいって――なによ!?」
「そのキモいというのは、『キモチいい』という言葉の略なのでしょうか」
「「はぁ!?」」
つまりはこういうことになる。
『僕らさ、ずっと一緒だろ? それはいくらなんでもキモチいいよ』
『私だって、ずっとあんたと一緒なのはキモチいいわよ!』
『ほんとだよな。いい加減にしてくれよキモチいい』
『こっちのセリフよ! キモチいい呪いね!』
なんてラブラブな会話なんだろう。
「つまりお二人は、一緒の席になるのが何よりキモチいい、ということでよろしいですね?」
今までの口論を、私が今やったように脳内で変換しているのだろう。ニシカワ君もアヤちゃんも真っ赤になって固まっていた。
「うし、つまりは隣の席同士になっても問題ないわけだな。めでたしめでたし! さぁクジ引け」
呆然としたままクジを引く二人。
そして結果は――なぜかまた隣同士になるのでした。
そして、私の席はというと……
「先生、どういうことですか」
「てめぇら、うるせぇからな。強制隔離だ」
一番前の右端の席に私。
その列の一番後ろにサエちゃん。
そして私の対角線上にある席、つまりは左端の一番後ろの席にサユカちゃん。
私たち三人は、この教室で最大限に引き離されていた。
「どうなっても、知りませんよ?」
「ほー、どうしてくれるんだ?」
「今に見ててください」
後悔させてやるからね!
こうして私たちのクラスは新たなスタートを切るのでした。
席替え、うーん……学校生活に潤いを与えるお楽しみですよね!
カカたちの席は離れてしまいましたが、だからこそできることもあるってもんです。それが何なのかはまた今度……
ぴん、ぽん、ぱーん
お知らせです。
今回やってます『好きな話投票』なのですが、一つにはなかなか絞れないという嬉しい意見をいくつかいただきまして……
しかし私としては、そこであえて一番が聞きたいわけです笑
ですが! 簡単にまとめるくらいなら大丈夫ですよ。
たとえばサユカンの告白話に一票! とか。
カカラジに一票! とか。
カカ天クエストに一票! とか。
曖昧になるかもですが、その辺は私のフィーリングでまとめますので笑
さて、〆きりまであと十日をきりましたね。
みなさんの投票、まってまーす^^