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カカの天下  作者: ルシカ
413/917

カカの天下413「運命の別れ道」

 ……おはようございます、カカです。


 私は今とても緊張しています。なぜなら! 今日はクラス替えの日だからです!


 え? 始業式? 五年生? 門出を祝うかのように桜が綺麗に咲いている?


 そんなこと、どうでもいいんです。 


 私にとって重要なのはクラス! ただそれだけ!!


 玄関前に張り出された紙――新しいクラス表の前にできている人だかりへ、いざ突っ込む!


「またニッシーと一緒のクラスかー」


「同じクラス記録更新だな。幼稚園の頃からよく続くもんだよな、アヤ坊」


 人波揺られながら、新クラスに一喜一憂する声を聞き流しながらも進む進む。


「……あっ、同じクラスよサエすけっ!」


「ほんとだー。イチョウさんも一緒だねー」


 ようやく辿り着く。そこには先に人ごみを抜けたらしいサエちゃんとサユカンの姿が。


「あ、カカすけっ」


「カカちゃんー」


「さぁ、判定は!!」


 意気込みながら、くわっと目を開き、五年生のクラス表を見る!


 一組……サエちゃんの名前発見! ということはサユカンのも……あった!


 じゃあここに私の名前があるわけだね!


 えっと、笠原……


 笠原香加は……


 あれ。 


 あれれ?


 な……い……?


 サエちゃんもサユカンも、ニシカワ君やアヤちゃんもいてイチョウさんもいて、担任もテンカ先生のクラスに……私だけ、いない?


 おそるおそる、他のクラス表を見る。


 すると、すぐに見つかった。


 『二組』の場所に、『笠原香加』と。


 膝の力が抜けた。崩れ落ちる。


「そん……な」


 絶望した。


 私は五年生と六年生を……

 

 サエちゃんと一緒に過ごせないのだ……


「か、カカすけ……っ」


「カカ、ちゃん……」


 先に見ていた二人は知っていたのだろう。なんとも言えない表情で、私に話しかけるのをためらっている。


 そんな顔、させちゃいけない。


 元気を出さないと。


「あ、あはは! ごめんね、もう大丈夫!」


 勢いよく立ち上がり、サエちゃんを見つめる。


「サエちゃん……今年からは一緒のクラスじゃないみたいだけど、変わらずに仲良くしてくれる?」


「う、うん。もちろんだよー」


「また一緒に給食、食べようね!」


「うん!」


「クラブも一緒で!」


「うん……」


「帰るときは……一緒で……」


「うん……!」


「手をつないでさ……」


「う、うんー」


「また……一緒に笑って……一緒に、泣いて……うくっ……一緒に……いようね……うっ、ひくっ……ううう」


「……なんか、まるで私が死んじゃうみたいだねー」


「は、話だけ聞いてると、そう聞こえるわねっ」


 ううう、ダメだぁ。涙がどばどば出てくるよう。


「死んだも同然なのはこっちだよぅ……」


「ま、まぁまぁっ。一緒にいられなくなるって言っても授業中だけじゃないのっ!」


「……サユカン。もしも授業の間、空気がなかったらどうなる?」


「死ぬわね」


「ほらね!!」


「いや、ほらねって言われてもっ!」


 私にとっては、それくらい大事ってことだよ!


「ぐずっ……サエちゃん……! 裏から手を回してクラス変えたりできないの!?」


「えっとー……カカちゃんの中では私どれだけ黒い人になってるのかなー。私をなんだと思ってるの?」


「悪の帝王でしょ!」


「まだそこまでいってないよー!」


「い、いつかは、いくのね……っ」


 冷や汗をかいてるサユカンは放っておくとして、他に私たちに何ができる?


 ……何も、できない。


 だってこれは、先生が決めたことなんだから。


「――いやー、なんつーか予想以上のリアクションだな」


 聞きなれた声、後ろを振り向く。


「テンカ先生……」


「おうカカ。おはよ」


 テンカ先生の授業とも、お別れなんだ……!


「せんせー……お、お世話になりました……ぐずっ」


「お、おう?」


「先生がいなくなっても頑張りますから……先生の教えを守って生きていきますから……先生のこと、忘れませんから……!」


「オレが死ぬみたいな言い方やめろ!」


「だって……だって……せんせーも別クラスだし……みんな、みんな、別クラスだし……」


「ん、ああ。あれ冗談だぞ」


「……は?」


 エ?


 ハイ?


 ナンダッテ?


「気づかなかったか? 二組の人数が一人多くて、一組の人数が一人少なかったの」


「……つまり?」


「カカがどういう反応するかなー、と思って書き換えた。ホントはおまえ一組だぞ」


「……なぜ」


「オレとおまえの仲じゃねぇか。だからこれくらい許されるかなーと」


 は。


 ははは。


「泣くまで殴っていいですか?」


「あー、えっと、スイマセンやりすぎました」


「やりすぎなくらい殴ってもいいですか?」


「マジすまん!!」


 ほんとだよ……


 ほんとだよ!!


 ……ぐすん。


「ほんと悪かったって! ほら、せっかくみんな仲良くなって、良い感じで成長してるのによ、わざわざ別のクラスにするわけねーだろ!? みんな一緒だ! 仲良くやってこーぜ!」


「……うん……ぐすっ」


「わ、悪かった! あとでケーキでも奢るから元気だせよ!」


 ならよし!


 よかった……


 ほんとによかったよぉぉぉぉ!!




「みんな一緒だ!」


 そんな声を耳にしながら、クラス表を見上げる男子が一人。


「え、じゃあ俺だけ……二組?」  


 がんばれタケダ。 


 というわけで!

 めでたくみんな一緒になりましたとさ!

 色々考えたのですが、やはりこれが一番かと^^


 みんな一緒!


 ……タケダ以外(笑)

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