カカの天下413「運命の別れ道」
……おはようございます、カカです。
私は今とても緊張しています。なぜなら! 今日はクラス替えの日だからです!
え? 始業式? 五年生? 門出を祝うかのように桜が綺麗に咲いている?
そんなこと、どうでもいいんです。
私にとって重要なのはクラス! ただそれだけ!!
玄関前に張り出された紙――新しいクラス表の前にできている人だかりへ、いざ突っ込む!
「またニッシーと一緒のクラスかー」
「同じクラス記録更新だな。幼稚園の頃からよく続くもんだよな、アヤ坊」
人波揺られながら、新クラスに一喜一憂する声を聞き流しながらも進む進む。
「……あっ、同じクラスよサエすけっ!」
「ほんとだー。イチョウさんも一緒だねー」
ようやく辿り着く。そこには先に人ごみを抜けたらしいサエちゃんとサユカンの姿が。
「あ、カカすけっ」
「カカちゃんー」
「さぁ、判定は!!」
意気込みながら、くわっと目を開き、五年生のクラス表を見る!
一組……サエちゃんの名前発見! ということはサユカンのも……あった!
じゃあここに私の名前があるわけだね!
えっと、笠原……
笠原香加は……
あれ。
あれれ?
な……い……?
サエちゃんもサユカンも、ニシカワ君やアヤちゃんもいてイチョウさんもいて、担任もテンカ先生のクラスに……私だけ、いない?
おそるおそる、他のクラス表を見る。
すると、すぐに見つかった。
『二組』の場所に、『笠原香加』と。
膝の力が抜けた。崩れ落ちる。
「そん……な」
絶望した。
私は五年生と六年生を……
サエちゃんと一緒に過ごせないのだ……
「か、カカすけ……っ」
「カカ、ちゃん……」
先に見ていた二人は知っていたのだろう。なんとも言えない表情で、私に話しかけるのをためらっている。
そんな顔、させちゃいけない。
元気を出さないと。
「あ、あはは! ごめんね、もう大丈夫!」
勢いよく立ち上がり、サエちゃんを見つめる。
「サエちゃん……今年からは一緒のクラスじゃないみたいだけど、変わらずに仲良くしてくれる?」
「う、うん。もちろんだよー」
「また一緒に給食、食べようね!」
「うん!」
「クラブも一緒で!」
「うん……」
「帰るときは……一緒で……」
「うん……!」
「手をつないでさ……」
「う、うんー」
「また……一緒に笑って……一緒に、泣いて……うくっ……一緒に……いようね……うっ、ひくっ……ううう」
「……なんか、まるで私が死んじゃうみたいだねー」
「は、話だけ聞いてると、そう聞こえるわねっ」
ううう、ダメだぁ。涙がどばどば出てくるよう。
「死んだも同然なのはこっちだよぅ……」
「ま、まぁまぁっ。一緒にいられなくなるって言っても授業中だけじゃないのっ!」
「……サユカン。もしも授業の間、空気がなかったらどうなる?」
「死ぬわね」
「ほらね!!」
「いや、ほらねって言われてもっ!」
私にとっては、それくらい大事ってことだよ!
「ぐずっ……サエちゃん……! 裏から手を回してクラス変えたりできないの!?」
「えっとー……カカちゃんの中では私どれだけ黒い人になってるのかなー。私をなんだと思ってるの?」
「悪の帝王でしょ!」
「まだそこまでいってないよー!」
「い、いつかは、いくのね……っ」
冷や汗をかいてるサユカンは放っておくとして、他に私たちに何ができる?
……何も、できない。
だってこれは、先生が決めたことなんだから。
「――いやー、なんつーか予想以上のリアクションだな」
聞きなれた声、後ろを振り向く。
「テンカ先生……」
「おうカカ。おはよ」
テンカ先生の授業とも、お別れなんだ……!
「せんせー……お、お世話になりました……ぐずっ」
「お、おう?」
「先生がいなくなっても頑張りますから……先生の教えを守って生きていきますから……先生のこと、忘れませんから……!」
「オレが死ぬみたいな言い方やめろ!」
「だって……だって……せんせーも別クラスだし……みんな、みんな、別クラスだし……」
「ん、ああ。あれ冗談だぞ」
「……は?」
エ?
ハイ?
ナンダッテ?
「気づかなかったか? 二組の人数が一人多くて、一組の人数が一人少なかったの」
「……つまり?」
「カカがどういう反応するかなー、と思って書き換えた。ホントはおまえ一組だぞ」
「……なぜ」
「オレとおまえの仲じゃねぇか。だからこれくらい許されるかなーと」
は。
ははは。
「泣くまで殴っていいですか?」
「あー、えっと、スイマセンやりすぎました」
「やりすぎなくらい殴ってもいいですか?」
「マジすまん!!」
ほんとだよ……
ほんとだよ!!
……ぐすん。
「ほんと悪かったって! ほら、せっかくみんな仲良くなって、良い感じで成長してるのによ、わざわざ別のクラスにするわけねーだろ!? みんな一緒だ! 仲良くやってこーぜ!」
「……うん……ぐすっ」
「わ、悪かった! あとでケーキでも奢るから元気だせよ!」
ならよし!
よかった……
ほんとによかったよぉぉぉぉ!!
「みんな一緒だ!」
そんな声を耳にしながら、クラス表を見上げる男子が一人。
「え、じゃあ俺だけ……二組?」
がんばれタケダ。
というわけで!
めでたくみんな一緒になりましたとさ!
色々考えたのですが、やはりこれが一番かと^^
みんな一緒!
……タケダ以外(笑)