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カカの天下  作者: ルシカ
411/917

カカの天下411「キリヤ君はこんな人」

「ただいまー」


 おかえり、って自分で言ってどうするんでしょうね、トメです。


 今日は珍しいお客さんを連れての帰宅となりました。


「おかえり。ってあれ、その人……東治の」


 わざわざ玄関まで出迎えてくれたカカは、見覚えのあるバイト君がこんなところにいるのに驚いたようだ。


「ああ、言ってなかったっけ。こないだ友達になったんだ。さっきまで――」


「そう! さっきまで私たちは一緒だったのですよ。何をしていたかというと」


 そのバイト君、キリヤの目がきらりと光る。


 ……なんで光るんだ?


「脂ぎった肉体を激しくぶつけ合い、飛び散る汗! というか汁! そのように荒ぶりながらも繊細な指使いと濃厚な舌使いで互いに天国を味わい、その甘美な肌の味を堪能していたのです!」 


「な、なんかよくわかんないけどトメ兄のヘンタイ!!」


 えっと。


「もしかして……さっきラーメン食べてたときのこと言ってるのか?」


「うん、そうともいいます」


 ずるっとコケるカカ。


「最初からそう言ってよ!」


「何事にもオリジナリティは必要ですよ」


 肉体はチャーシュー、汁はそのまんま汁だろうし、肌はラーメンのことか。よくもまぁそこまで曲解できるもんだ。


「うん、実にカカと似たような人種だ」


「ふむ? 何か言ったかい、トメ君」


「や、なんでも。いいからあがれよ」


 そう。今日は一緒に食事したついでに、彼を我が家へ招待したのだった。


 特に理由も目的もない。しいて言うなら男同士で語り合おうと思っただけだ。


「トメ兄……友達、できたんだね」


「なんで目をうるうるさせてんだ妹よ」


 まるで僕が友達いない寂しいやつみたいじゃん。


「カカ君……感動してるとこゴメン。私はまだこの人を友達とは思えなくて」


「思えよ!!」


 とにかくノリがよく、とてもツッコみがいのある男だった。


 居間に座らせ、適当にお茶を用意する。


 お盆を持って台所から戻ると、早速カカがキリヤにいろいろと話を聞いているところだった。


「トメ兄はどう?」


「さっきはすごかったですよ」


 再びきらりと光るキリヤアイ。


「そう、あれは姫君の歌でした。感情の希薄な、それでもはっきりと伝わってくる熱い感情の波! そしてそれに応えるトメ君の優しい囁き、そして捧げた心はきっと彼女の心の琴線に触れたのでしょう。彼の指が彼女に触れたとき、伝説が始まった……!」


「よくわかんないけどトメ兄のケダモノ!」


 えっと。


「ひょっとしてラーメンの勘定を払ったときのことか?」


「うんうん、そうともいいます」


 再びずるっとコケるカカ。


「歌はそのまんま声のことだろ。感情の波……ああ、やっぱあのおばちゃん怒ってたのか。僕が財布からお金出すのに手間取ってたから」


 で、始まったのは伝説じゃなくてお金のやり取りな。捧げた心はお金のことか。


「伝説のお勘定!」


「誰が何を伝えてんだそれは」


「んー、よくわかんないけどさ。簡単に言うとトメ兄は……そのおばちゃんの心をゲット?」 


「うんうん、そうともいいます」


「言わねぇよ!!」


「この女ったらしめ!」


「そうとしか言いません」


「他にも言えよ!」


「じゃーおばんキラー?」


「女の敵!」


「そうじゃなくてね!」


 なんつーコンビだこいつら。


「……ん? そういやカカ。ノートなんか広げて何やってたんだ?」


 テーブルの上に広げられた勉強してたっぽいアイテムを見て疑問に思う。春休みは宿題ないんじゃなかったっけ。


「や、さっき外で遊んでたらイチョウさんに会ってさ。春休みでも塾で勉強してるって言うから、私も何かしなきゃなんないかなーと」


 おお、偉い!


「でも勉強することなくてお絵かきしてたとこ」


 おお、偉くない!


「では、私が教えてさしあげましょう」


 おお、またもやキリヤがきらりと!


「え、でもまだ何を勉強するかも決まってないよ?」


「いえいえ、まずはいつ如何なるときにも通用することを勉強するのはいかがでしょうか。つまり――名前の書き方です」


「む、名前なんて普通に書けばいいんじゃないの?」


 また変なこと言うんじゃないだろうな。


「ただ名前を書くのにもオリジナリティが必要だと思います。すなわち、『疾風の変わり者、朝飯すら必ずひねる女、カカ!』とか書けばいいのではないでしょうか」


「あんた普通に失礼だな」


 さすがのカカだって怒るぞ!


「そうだよ、朝ごはん様に失礼だよ。一日の食事の王様なんだよ?」


 そっちかいっ。


「では『怒涛の変わり者、朝飯前に必ず兄をひねる女、カカ!』でどうでしょう」


「それだっ」


「それじゃねーよ!」


「じゃートメ兄はどんな名前書くの?」


「ん、『毎日ひねられる男』でいいんじゃないでしょうか」


「名前すら入ってねーよ!」


 なんか……こりゃまたエライやつを友達にしてしまったような気がする。 


 や、楽しいけどさ。


 トメとキリヤ君の初絡み(かな、一応


 彼を書くのもなかなか楽しいです笑


 しかし……またボケ役が増えた^^; 


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