カカの天下41「ハンバーガーのおいしいところ」
「ハンバーガーのさ、一番おいしいとこってどこだと思う?」
「私はですねー、やっぱりピクルスの乗ってる場所だと思いますー」
「お、気が合うじゃん! あたしさ、おいしいところを後に持ってくタイプだからさ、最初にパンをめくってピクルスの位置を確認するんだよねっ」
「私はですねー、そのおいしい部分がわからないままかじってー、食べながらピクルスを探すのが好きですねー」
「たっはー! ここは気が合わないかぁ!」
ああ……騒がしいことこの上ない。
こんにちわ、トメです。
冒頭から食い気たっぷりな会話をかましているのは、いきなり我が家に押しかけてきて無理やりお茶とお菓子を強奪してばくばく食べながら女性特有の甲高い声で喋りまくってるうちの姉とご近所さんのサカイさんです。
「で、トメは何派?」
「何派ってなにが」
「パンをめくる派かー、探索派ですー」
んなわけのわからん派閥つくんな。
「てかさ、僕の個人的な意見を言わせてもらえば」
「うんうん」
「ああいう店の主役って、フライドポテトだと思うんだよね」
『…………』
「ハンバーガーは前菜でしょ?」
「まあ、変なのは放っておこうか」
「ですねー」
……なんだよぅ、僕はポテト好きなんだよぅ。
「たでまー」
僕がいじけていると、サエちゃんの家に遊びに行っていた妹、カカが帰ってきた。
そしてコタツに入っている僕と姉とサカイさんを見て、愕然とした。
「こ、これは……両手にバカ!?」
「違う、両手に花だ!」
確かに両方バカの部類に入るが。
「それに片方は姉貴だぞ?」
「知ってるよ、そういうの。金蹴上等って言うんだよね」
なんだ、その男に最上級の恐怖を与えそうな四字熟語は。聞いてるだけで痛いぞ。
「えーっと……近親相姦か?」
「それそれ」
「ねえねえカカちゃん! ハンバーガーの話なんだけど」
おお、こっちの話をまったく気にせず別の話を持ち出してくるとはさすが我が姉。言
うまでもなく嫌味だが。
「半端ないバカがどうしたの?」
「ハンバーガー! 誰が半端ないバカさ!」
「そこの両手のバカ」
うんうん、半端なく同意。
「ま、いいや。カカちゃんは、ハンバーガーのどこがおいしいと思う?」
「早いとこと安いとこ」
……いや、それは、たしかにおいしいところ、つまりは良い所ではあるが。
「そ、そうじゃなくってさー、ほら、例えばあたしらなんかピクルスがおいしいなーって言ってたんだけど」
「食べきれば一緒じゃん」
『…………』
わお、素敵な斬り捨て御免だ。
見事に黙りこんだ二人を差し置いて、僕はとりあえず聞きたいことを聞いてみることにした。
「カカ……」
「なに?」
「ポテトって、おいしいよな?」
「うん。私、好き」
なんとなく、ちょっと救われた。