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カカの天下  作者: ルシカ
406/917

カカの天下406「遅い白い日、早い花見」

「さて、集まったな皆の者!」


 ぐるりと一同を見渡し、声を張り上げる姉。


「今からホワイトデーのプレゼントをあげよう! さぁ喜べ!!」


 今回は高らかに宣言した通りの話みたいです。あ、僕トメね。


 ホワイトデーのためにどこかへ旅していた姉はいったいどんなモノを用意したのだろうか? すごく気になるが、それよりも真っ先に気になることがある。


 ここにはあのバレンタインでゲームに参加したメンバー(テンとサカイさん省く)が集められているのだが……


「わーい、何くれるのかな」


「ぱちぱちぱちー」


 素直に喜ぶカカとサエちゃん。この二人は疑問に思ってないようだけど……


「それはいいんだけど、なんでこんな場所でっ?」


「まだ桜も咲いてないのに……」


 僕はサユカちゃんとサラさんの意見に賛成である。


 ここ、この場所が問題なのだ。


「なぁ姉。なんでこんな公園の端っこでレジャーシート広げて花見みたいな形になってんだ? まだ花も咲いてないのに」


 先走って花見を計画したみたいで格好悪いじゃないか。通行人が変な目で見てるぞ。


「いいじゃん。あたしらの頭ん中が春で、頭の中に桜が咲いてるってことにすれば」


「そういうことにすれば頭が可哀想な集団決定だぞ」


「そうそう! 可哀想に思ったんだよこの桜の木」


 パン! と平手で姉が叩いたのは傍らに生えていたみすぼらしい木。これは……桜、なのかな? なんだか他の木よりも痩せているというか、生命力があまり感じられない。


「見てよこの木! なんか寂しそうじゃん? ここはあたしたちで盛り上げてあげようかと」


「花が咲いてからでいいんじゃないか?」


「咲くかも怪しいじゃん。こんなヘタレっぽい桜。それにどうせ咲いた花もしょぼいに決まってるし、花より団子なあたしらは元よりそんなもん見ないし」


 あんた良いこと言いたいのか悪いこと言いたいのかどっちですか。


「ともかく! 先取りで花見をしつつ、あたしのホワイトデープレゼントを受けとるがいいわ!」


「わーいわーい、さっさとよこせお姉」


「お腹減りましたー」


 ま、いいけどね。ピクニックとでも思えば。


「それでカツコさん。しばらくどこ行ってのっ? 聞くところによると、この日のためにどっか行ってたのよね」


「よくぞ聞いてくれました! やー、さすがにあたし自身もバレンタインはやりすぎたと思ってたんだよね。だからこれは、ほんっと気合入れる必要があると思ってさ!」


「気合入れて、どこに行ってたんですか?」


「各地方のパティシエに弟子入りしてお菓子作りの修行してきた」


 気合入れすぎ。バカだコイツ。


「予定じゃホワイトデーに間に合わせるつもりだったんだけどさ、とある店で結構見込まれて、気がついたら辞められなくなってたんだよね」


 姉が、お菓子作りを、見込まれた?


「お姉、自分のキャラわかってる?」


「破壊だけじゃなくて創造もできたんですねー。びっくりですー」


「わたしの予想だと、その作ったお菓子でみんなの味覚と人格と人生を破壊するんじゃないかしらっ」


「み、みんないくらなんでも言いすぎでは……」


 僕も年少トリオと同意見だけど、パティシエに見込まれたというのが本当なら期待はできる。この姉、昔から器用だし。


「見込まれて、それでどうやって辞めたんだ」


「まー他の店で修行させてもらってるときに追い出された理由と一緒なんだけどね」


 ん、そういや『各地の』ってことは一箇所に留まって修行してたわけじゃないんだよな。しかも全部一緒の理由で追い出されてんのか?


「酔って絡んできた客を殴ったらクビになった」


「それ普通、居酒屋を辞めるときの理由だろ」


「酒飲みの周りには酒飲みが集まるもんなんだよ」


「つまりはあんたのせいか」


 いるだけで酔っ払いが寄ってくるのか……そういや動物操るスキルもあったなこの姉。ますますわけわからん。


「さてさて、いよいよ本題! みんなの分のオリジナルお菓子作ってきたから、どうぞご賞味あれー」


 そう言いながらシートの端に置いていた包みを取り、バレンタインゲームで迷惑をかけたみんなに一つずつ渡していく。


「はい、サユカちゃん」


「あ、ありがとうございますっ」


「よかったね、サユカン。で、お姉。このお菓子の作品名は? 『初めての創造』とか『おまえの人生オワタ』とか『これでも食べて便秘だしてください』とか?」


 昔、カカが姉に手紙を書くときにふざけて『お便秘ですか? 私は電気です』と書いていたのを思いだした。『元気』とかけてんのな。


「さっきサユカちゃんが言っていたのを踏まえてー、『人生ブレイカー』でいいんじゃないですかー?」


「人生、ブレーカー……そうですよね、人生って欲張って色々と手を出すと……落ちちゃうんですよね、ブレーカーみたいに……はぁ」


「こらこらサラさん。うまいこと言って落ち込まないの」


 わいわいと作品名を出して盛り上がる僕ら。しかしそれらを全て一蹴して、姉はあっさりと正しい作品名を口にした。


「や、サユカちゃんにあげるこのお菓子の作品名は『ファーストキスのジレンマ』ね。解決した?」


「なんで知ってるんですかっ!?」


「はい、サラちゃん。このお菓子の作品名は『意外と口が悪い』ね。おねーさんびっくり」


「ほっといてください!」


「はい、サエちゃん。作品名は『意外と甘えん坊』ね。むふ」


「な、なんで――!!」


 や、そんな睨まれても! 僕は何も言ってませんよ!?


「はい、妹。作品名は『嫁の心を取り戻せ』ね。がんば」


「うん、がんばる。ってなんでその話を知ってるの!?」


 この姉……本当にどっか行ってたのか? 


 なんだか僕らに最近あったことをみんな知ってるみたいな……


「はい、トメ」


「は? 僕にもか」


「あたしの思いつきで迷惑かけたには違いないからね」


「そ、そっか。姉がそんなこと言うなんて珍しいな」


 さすがに懲りたか。


「はい、どうぞ。作品名は『これでチャラ』ね。だから次のゲームも死ぬ気でやれ」


「懲りてないなアンタ!!」


 姉って本当にワケわからん。


 わからないけど、とりあえずみんなでワイワイと食べたお菓子はおいしかった。


 また頑張ろうっていう元気がわいてきた。


 ……次のゲームも頑張れってことか?


 フザケンナ。


 というわけで、姉のお返しのお話でした。


 引っ張ったわりには意外と普通でしたね笑 

 まーいくら姉がバケモノでも、常に人間らしからぬこと考えてるわけじゃありませんしね。

 ……パティシエに弟子入りは普通じゃない? 姉にしちゃ普通の部類ですよ笑


 でもまーわざわざ修行してきたってことで、誠意があったということにしてあげましょう^^

 しかし姉、妙に目ざといのはなぜなんでしょうね……

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