カカの天下40「兄を起こそう」
おはようございます、カカです。
最近、めっきり寒くなってきましたね。特に朝は。
元気な子供な私にとっては別に大したことはないのですが、だらしない大人のトメ兄は今日も今日とて布団にもぐりこんで起き上がろうとしません。
もうすぐ出勤時間なのに……
というわけで、私はいつもいろいろな方法でトメ兄を起こそうと画策します。
方法その一、びっくりさせる。
「トメ兄、朝だよ」
「んー……あと五分……」
「たしかにあと五分だね」
「……うん……うん? なにが?」
「ほら、時計」
「……はちじ、にじゅう、ごふん?」
言葉を覚えたての赤ん坊のように呟く、いい大人のトメ兄。
「あと五分で仕事始まるんじゃん?」
「うおおお!? まじかぁ!!」
そのあとはすごかった。
しぶっていたのが嘘のように跳ね起きたトメ兄は、ものすごい速度で着替えて身だしなみを整えていく。
そして会社におわびの電話を入れようとしたところで、別の時計を差し出した。
「はい、これ」
「……あれ、これ、まだ八時になってない」
「うん、あの時計ずらしたの」
「てめぇ!!」
ずらしすぎてはダメ。
ありそうなリアルな時間にするのがコツ。
その二、いぶりだし。
「トメ兄、朝」
「今日は一段と冷えるなぁ……」
ふむ、ならばお望みどおりに。
「あー、寒い寒い……」
ひゅおおおお。
「寒い……さむ?」
ひゅおおおおおおおおおおお!
「さ、さささ、さささささささっさむっ」
びゅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
「さみいいいいいいい!!」
最大風速のクーラーによって冷やされまくった部屋で、トメ兄は雄叫びをあげた。
布団を跳ね上げて一刻も早くこの部屋から出ようとBダッシュ!
「お風呂わいてるよ」
「…………!!」
声にならない声を上げて私を睨みつけたあと、トメ兄は震えのせいで転びそうになりながらも風呂場へと駆け込んでいった。
今日も私の勝ちである。
そのあとみっちり怒られたけど。
その三、ご臨終。
寝てるトメの顔に、濡れたタオルを被せてみた。
なんかものすごい勢いで起きた。
大成功だーと喜んだのも束の間。
本気で死ぬっ! とものすんごく怒られたので、これはもう使わないでおこう。
その四、ぎぎぎぎぎ!
ガラス窓を尖ったものでおもいっきり引っかいてみた。
ものすんごい音に一発快眠!
でも自分にも大ダメージ。
ご近所からもクレームでダメージ。
さらにガラス窓に普通にダメージ。
もうやめよう。
次は――と、そんなことを考えてるうちに春になるんだなぁ、としみじみ思う今日この頃でした、まる。
「その頃まで生き延びられるのか、僕は……」
「普通に起きれれば問題なし」
「そらそうだ」
「じゃあやってよ」
「……がんばる」