カカの天下4「冗談? それとも」
「もしモグラになったとしたら何する?」
トメです。夕飯も終えてゴロゴロしてるところにカカがきて、妙なことをぼやきました。
この妹はたまに、このような無意味なことを言うためだけに僕の部屋へわざわざ来るのです。多分暇なんでしょう。
「モグラねえ……とりあえずミミズでも食べるんじゃないか?」
まだ二十一時だけど眠ってしまいそうな勢いでゴロゴロしまくってる僕は投げやりに答えた。カカはふむ、などと芝居がかった仕草で顎に手をやり、
「ミミズ……おいしいと思う?」
「さぁ。食べたことないからわかんないなぁ」
「さっきの夕飯、おいしかった?」
「いや、正直いまいち」
「じゃあそれが答えだよ」
「入れたんかい!!!」
カカは珍しくにこーっと笑ってこちらを見ている。ちくしょー、たまに笑うと可愛いくせに、なんでこういう可愛くないことした後にばっかり笑うんだ……
「ところでさ」
「……今度はなんだよ」
先ほどの夕飯にそれっぽいものが無かったかを必死に思い出しながらも、カカの相手はしっかりとする。たまにこの妹は会話を録音しているので、変な答え方をするといろんな場所にその音声を広めようとするから侮れないのだ。
前のときなんかもう、もう……! ねっ!? 思い出したくない!
「もし蛇になったとしたら、なにする」
「えーっと、とりあえずカエルを食べ……て……」
「カエルっておいしいと思う?」
同じ展開じゃないか。
「や、絶対まずいだろ、あんなの」
味だけじゃなくて色んな意味で。
「さっき食べたから揚――」
「から揚げか! あのから揚げなのか!!」
「おいしかった?」
「すごい微妙な味がしたぞ!」
「じゃあ、それが答えだよ」
うああああ! マジか? マジなのか? そんな意味不明なものを僕は食べてしまったのか……ん?
「ちょっと待て。夕飯作ったの僕じゃん?」
「そだよ」
何を今更、というふうに笑うカカ。なんだ……やっぱただの冗談じゃないか。
「だからこっそり入れといたの」
「入れたんかい!!」
「食べたのトメ兄だけだけど」
「しかも鬼かおまえは」
「いや、妹」
「じゃ妹鬼か」
「なにその新種の鬼ごっこ」
力なくうなだれる僕に、我が妹は優しい言葉をかけてくれた。
「ま、食べちゃったんだし仕方ないよ。別に死ぬわけじゃないみたいだし」
「えーと……やっぱり冗談なんだよね?」
「や、今回はマヂ」
「マヂ?」
ああ、なんかそう言われてみればお腹のあたりがギュルギュルと――
その直後、僕は倒れて病院へ運ばれた。
医者の一言。
「ストレスですね」
病院を出た後のカカの一言。
「冗談だったのに」
やっぱりかよ言うの遅いわ!!