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カカの天下  作者: ルシカ
395/917

カカの天下395「お楽しみ劇 開場」

 お楽しみ会、ねぇ。


 どうも、トメです。今日は待ちに待ったお楽しみ会の日。日曜日なので、僕も気兼ねなく貴桜小学校へと参上しました。


 体育館で行われるということなので、校門をくぐりそちらを目指していると……見慣れた二人が見慣れないセットでいるのを見つけた。


「ど、どうするんですかー」


「そんなこと言ったって……」


 サカイさんと、サラさん?


 なぜこんなところに。


「おーい、お二人さん」


 声をかけてみると――なぜだか二人はものすごいキラキラした目で僕を見つめてきた。


「あぁー、救世主よー!」


「お助けを!」


 体育館入り口を眺めながら立ち往生していたらしい二人は、こちらに気づくと砂煙をあげて猛ダッシュしながら僕にすがりついてきた。ちょと、うざい。 


「聞いてくださいよー」


「トメさん! トメさん!」


「はいはい聞きます聞きますから離れて――ちょっとサラさん! どさくさにまぎれてどこ触ってんの!? サカイさんもそんなとこつままない!」


「摘みどきかと思ってー」


 どういう意味だ。


「ともかく事情は?」


「えっとですねー、実は今回のお楽しみ会、わたしたちも参加したんですー」


「え、まじで!?」


「はい……その、衣装係という形で」


 な、なんだって!?


 この二人、この歳で小学生の仲間に混じってたのか。なんて身の程知らずな。


「トメさんー。なにやら年齢関係でとてもぶち殺したくなるようなこと考えてませんかー?」


「いいいいいいいいええええええええ決してそのようなことは!!」


 こんなこと考えた僕のほうは命知らずだった。


「それでですね。このお楽しみ会は参加する小学生の父兄じゃないと入れないって、そこに書いてあって」


 ああ、そういえばカカにもらったプリントにもそんなの書いてあったような。


「それで……私たちって実質、他人ですし。どうしようかと……」


 でもサカイさんって一応他人ではないような。


 視線でそう言ってみると、サカイさんは首を横に振って何かを書くジェスチャーを見せた。ああ、名簿とか書くのか。そりゃヘタしたらサエちゃんにバレるな。


「そうだ! この場で父兄になってしまえばいいんですよ!」


「その手がありましたー」


「……は?」


 二人は何を思いついたのか、揃ってぐりんと僕の瞳をロックオン!


「結婚してください!」


「再婚してください!」


 まてやアンタら。




 さて。もちろん結婚なんぞするわけもなく、しかし家族になるという案は採用した。


「この子の姉ですー! なんでやねんなんでやねーん」


「この兄の妹です! なんでやねんなんでやねん」


 おまえら……僕と特徴似せるにはそれしかないんかい。


 まぁともかく家族に成りすますという解決策が見つかってよかった。焦ってたらしい二人も、おかげで平静をとりもどしたみたいだし。


「入れてよかったですね、お姉ちゃん……ぷ」


「何か文句ありますかー、妹?」


「お母さんでよかったんじゃないですか?」


「あなたは娘って歳でもないでしょー? 頭の中身以外は」


「あなたこそお姉さんって歳でもないんじゃないですか? 見た目的に」


 なんで平静とりもどしたらケンカ始めてんだ、この二人は。


「へぇ、珍しい組み合わせだね。あたしがいない間に何があったのやら」


「うぉ、姉!」


 いつのまに隣に!? 


「あ、カツコちゃんだー。帰ってきたのー?」


「うん、ついさっきね。さすがに妹の荒れ舞台は見逃すわけにはいかないし」


「晴れ舞台だろ?」


「晴れると思う?」


「……や、荒れるな、多分」


 久々に登場したにも関わらず、しっかりと妹のことを把握しているところはさすがだ。


「ホワイトデーの準備はできたのか?」


「おぅ、それはバッチリ! 今はひとまずそれは置いといて……おーい、なにしてんのさ」


 姉の視線の先には――なんとタマちゃんとシュー君!? あの二人まで来たのか。


 でも受付で引っかかってるみたいだ。僕は姉と一緒にそちらへ向かった。


「なにしてんのさ、シュー」


「えっと、これ僕はどうすれば」


 あぁ、小学校の誰とどういう関係者か書かなきゃならないんだよな。


「そんなの簡単じゃん」


 姉は受付名簿をひったくると、先ほど僕が書いた『笠原香加』の保護者の欄にさらさらと書き加えた。


 名前『シュー』


 関係『トメの嫁』


「よし!」


「よくねえええええ!!」


「お姉さま!! これはいくらなんでも――」 


「あ、まだあった」


 名前『タマ』


 関係『トメとシューの子供』


「なんちゅう奇跡を書いてんだおまえは!!」


 『できちゃった婚。毎晩ラブラブ』


「さらに余計なこと書き込むなや!!」


「はい、これ」


「了承」


「そこな受け付けのおねーさん! それおかしいと思わへんのですか!!」


「愛は人それぞれですので」


「生暖かい目でみるなぁ!」


「……はんっ」


「冷たい目もやめてぇ!!」


 僕の叫びもむなしく、そして静々と泣くシュー君のことも誰も気にせず……


「よし、行くよ笠原家一行!」


 なんかとんでもない家族になってしまった我ら一行は、一番良い席へと向かってずんずん進んでいった。


 ま、まぁ応援する人間は多いに越したことないし……いっか。


 受付で渡されたプログラムを眺める。カカたちの劇は三番目か。


 頑張れよ、しっかり応援してやるからな!


 わりと詰め詰めで予定をいれてきて、ついに始まりましたお楽しみ会編。

 続き物連続は……と、こないだ言っておきながらまたもや長めの続き物^^;前々から準備してきたお楽しみ会なので仕方ないのですが……

 これ終わったらしばらく単発話でいきたいなーなんて思いつつ。

 

 明日から、本編開幕です。

 

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